第738話 【デルタ∴カラミティ】オリエンシャルペイでは④
~極東の島国 オリエンシャルペイ~
何時ぶりか?
私がこの形態になるのは―――
バティンの姿形が人型から変わる。
さっきまでサラサラだった肌は、蛇の鱗がビッシリ浮かび上がる。
下半身が蛇の尾のように変態する。
上半身は着ていた洋服がビリビリに破け、その肌を露にする。
とても筋肉質な人肌に様々な文様が浮かんでいる。
その文様には呪術的な意味でもあるのだろうか?
一見して禍々しさを放つ。
「ベリヤ―――」
「簡単に死んでくれるなよ―――」
「私を楽しませる為、足掻いて見せろ!!」
あんな姿のバティン殿を見たのは初めてでござる。
拙者の知らない力を持っていたということでござるか!?
ベリヤは斬り合いへ持っていく為、ワープで近づく。
バティンは軽く手を突き出し、握り潰す。
「空魔法:空間凝縮!!」
ベリヤの右腕がパンパンに膨れ上がる。
まるで誰かに右腕を強く握り締められているようだ。
「ッ―――!?」
ブシュ―とベリヤの右腕の血管が破裂する。
表皮は剥がれ、風船のように破裂した。
「まだまだ行くぞ―――」
バティンは同じように両手で握り締めるようなジェスチャーをする。
今度は左脇腹、左足が―――
同じように破裂する。
コレは危険だと、ベリヤは後ろへ後退し始める。
「逃げるなよ―――」
今度は首だ―――
冷たい手みたいなものが自分の首に纏わりついているのを感じる。
首が同じように破裂したら、流石にマズイ!!
「く、苦しいでござる・・・!?」
僅かな空気を何とかひり出すように声が漏れる。
「空魔法:空間転移!!」
ベリヤは何とか、ショートワープで逃げる。
「はぁ、はぁ・・・!!」
息も絶え絶え、危機一髪。
あのままだったら、首をへし折られていた。
どうやら、あの状態のバティンは自分の周囲数十メートルを自由自在に掴めるみたいだ。
さっきまでとその精度が段違いだ。
本当に掴まれたような状態になる。
「ベリヤ!貴様が出てこないというならこちらにも考えがあるぞ!!」
バティンは声を上げて、姿の見えないベリヤを誘き出そうとする。
「考え・・・!?」
ベリヤはバティンの様子を伺う。
一向に姿を見せないベリヤに痺れを切らす。
「フフ・・・お前が姿を現せるようにしよう。」
そう云うとバティンは天守閣の方へと身体を向ける。
「マズいでござる!!」
奴らの目的は王権。
それを持つ小春姫は天守閣の一番上の階。
そこへ向かう気だとベリヤは察する。
「そうはさせないでござる!!」
「フフ・・・やはり出てきたな!!」
「そう来ると思ったぞ!!」
二人の闘いは続く―――
しかし、ベリヤは気付いていない。
自分とバティンが徐々に天守閣の最上階。
小春姫の元へと進んでいることに。
一方、ヴィクトルはというと。
城五郎と共にアガレスを攻略しようとしていた。
「アイツってどんなヤツなのさ。」
暫く戦っていた城五郎から話を聞こうとする。
アガレスの能力をヴィクトルは知らない。
先に闘っていた城五郎が何か知っているハズと思った。
「ヤツの周りを廻っている人魂・・・。」
「あれを使役してくる。」
「人魂・・・!?」
確かにアガレスの周りには、いくつかの火の球がフワフワと浮いている。
人の魂を使役する?
ネクロマンサーのようなものか?
とヴィクトルは考える。
「ちょっと戦ってみないと分からないね―――」
ヴィクトルが仕掛ける。
ヴィクトルは自分の身体を液体に出来る。
その液体を相手の背後に忍ばせることだって出来る。
「入り込め!!」
狙うはヤツの口。
呼吸が出来なければ生物は活動できない。
呼吸器官を塞いで、窒息死を狙う。
ヴィクトルの常套手段。
しかし、それも簡単に見破られる。
ヤツの人魂がヴィクトルの液体を弾いた。
「なっ!?」
「その程度の小細工無駄だぞ。」
「へぇ、面白いじゃん♪」
完全に死角からの行動だったのに見破られた。
やはり、城五郎の話の通り、あの人魂はそれぞれが意思を持っているようだ。