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第735話 【デルタ∴カラミティ】オリエンシャルペイでは①


~極東の島国 オリエンシャルペイ~

 

 世界各地が戦場となる今、王権があるこのオリエンシャルペイも例外ではなかった。

 

 ここに派遣された戦士は二人、ベリヤとヴィクトル。

 

 オリエンシャルペイはベリヤにとって、かつての故郷。

 

 必ず、守りたいという思いの元、参上した。

 

 「ねぇ、ベリヤン―――」

 

 「なんでござるか?ヴィクトル殿。」

 

 「ここってベリヤンの故郷なんだよね―――」

 「故郷ってどんな感じなの?」

 「ボク、故郷って知らなくてさ。」

 

 「そうでござるな~~、何となく懐かしいってカンジでござるかな。」

 「もうあの時代の者達は誰もいないけど、帰ってきたという実感はあるでござる。」

 

 「へぇ~~、そうなんだ―――」

 「それってなんだか羨ましいね。」

 

 「ヴィクトル殿だって、帰る場所あるじゃないでござるか―――」

 

 「フフ・・・そうだね♪」

 

 

 オリエンシャルペイに着いた二人はそんな会話をしていた。

 

 ここはサムライの国らしい。

 

 ほとんど魔法に頼ることなく、戦うサムライという人種。

 

 「ベリヤンと同じような恰好した人達だね―――」

 

 ヴィクトルは街を行き交う人達の着物や袴姿を見て、そう云った。

 

 「聖王国から派遣された戦士とは其方たちのことか?」

 

 顎髭を蓄えた短髪の武士風の男が声を掛けてきた。

 

 「そうだけど―――」

 「貴方は?」

 

 ヴィクトルがそう答える。

 

 「おっと、これは失礼した―――」

 「名乗り申し遅れた。」

 「拙者、小春姫にお仕えする縁 城五郎と申す。」

 

 「ベリヤン・・・この人けっこうやりそうだね。」

 

 ヴィクトルはベリヤに耳打ちをする。

 

 サムライとして長年鍛えてきたことが伺える体躯。

 

 その手は岩のようなタコいくつも浮かんでいる。

 

 長年、剣を振り続けてきた証拠だ。

 

 それに身体の方は鍛え抜かれており、鋼のように硬そうだ。

 

 「そうでござるな―――」

 「頼もしいでござる。」

 

 ベリヤも耳打ちで返す。

 

 「本来ならば、我々の街をゆっくり案内したいところでござるが―――」

 「状況が状況なので・・・。」

 

 そうだ、今は世界が滅亡するかもしれない瀬戸際。

 

 この国にも魔物が迫っている。

 

 ドンドンと海の方から強い魔力を感じる。

 

 「あと数刻ってところでござるね。」

 

 ベリヤはそう呟く。

 

 「貴方もこの魔力を感じているのですね―――」

 

 城五郎の後ろから何十人も武士を従え、一人の少女がやって来る。

 

 先ほどまで街を歩いていた者達も気付いたら、頭を垂らしている。

 

 「この人は・・・!?」

 

 ヴィクトルは驚いた。

 

 あまりにも自分の顔にそっくりだと。

 

 「姫様・・・・!?」

 

 ベリヤは今にも泣きそうな顔を浮かべる。

 

 「貴方は聖王国で一度お会いしましたね―――」

 

 ベリヤと小春姫は一度聖王国で対面している。

 

 しかし、その時は時間がないからと取り合ってもらえなかった。

 

 だからこそ、ベリヤはこの国の防衛を自ら志願した。

 

 かつて自分が護り切れなかった主人を今度は護る為に。

 

 「よくぞご無事で・・・!!」

 

 この言葉は小春に向けたものではない。

 

 その先祖―――、遠い過去の人物に向けての言葉だ。

 

 「聖王国では時間が無かったとはいえ、失礼なことをしてしまいました。」


 「いや、拙者こそ、突然あのような・・・。」

 「申し訳ないことをしてしまったと反省しているでござる。」


 二人の雰囲気はそんなに悪くない。


 「不思議です―――」

 「貴方のことを何故か昔から知っているような気がします。」

 

 

 「そう云って頂けるだけでこんなに嬉しいことは無いでござる。」

 

 「良かったね、ベリヤン♪」

 

 泣きじゃくるベリヤの肩をポンと叩くヴィクトル。

 

 しかし、その顔はどことなく寂しそうだ。

 

 ヴィクトルもまた複雑な気持ちだったからだ。

 

 もう長い事、ベリヤと行動を共にした。

 

 嬉しい時も辛い時も共に過ごした。

 

 もしかしたらこの闘いを無事に乗り切ったら、そんな彼は自分の元を去ってしまうのではないだろうかと不安になったのだ。

 

 元々、自分の容姿がこの姫様に似ているからベリヤは自分のことを好きでいてくれただけだから。

 

 でも、それをベリヤが心から望むなら優しく見送ってあげようと思った。

 

 それがヴィクトルの"優しさ"だからだ。

 

 「あまり時間がありません。」

 「あなた方にも此度の作戦を説明したいので、こちらに来ていただけるでしょうか。」

 

 小春姫はそう云って、ベリヤ達を城へと招いた。

 

 

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