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第734話 【デルタ∴カラミティ】ランジネット公国では②


~ランジネット公国 アーバインの屋敷~

 

 人生において、思い出したくないことの一つや二つはあるってものじゃん?

 

 俺にとって、円能寺の死(これ)がそれなわけ。

 

 「遊戯領域ゲームテリトリー!!」

 

 円能寺は自身のユニークスキルを発動させる。

 

 「ア"ァ"!?」

 

 荒木が顔をしかめる。

 

 「この空間は俺が支配した―――」

 

 先手必勝。

 

 先に領域を支配できたのは大きい。

 

 恐らく、まともに闘ったら俺が荒木に勝てる可能性は低い。

 

 だが、遊戯領域ゲームテリトリーの中ならその限りではない。

 

 この空間は暴力が禁止となる。

 

 ゲームによる勝者のみが正義。

 

 「荒木、俺とゲームをしろ!!」

 

 「ゲームだァ!?」

 

 コイツ・・・円能寺みたいなマネをしてやがる・・・。

 

 風の噂でノーワンが、徳川さん率いる第一事業本部に入り、課長というポジションに付いたと聞いた時は我が子のように嬉しかったんだぜ。

 

 それが、実は円能寺と名乗り、俺の前に立ちはだかるとは―――

 

 正直、夢であってほしいとは思う。

 

 俺ァ・・・よォ・・・お前とは()り合いたかねェーンだよ。

 

 だが、俺も仕事人(プロ)だ―――

 

 お前だって分かってンだろ?

 

 上からの命令は絶対だってな―――

 

 俺も心を鬼にしなきゃいけねェ。

 

 「断るッ!!」

 「お前と遊んでる暇はねェ!!」

 

 その瞬間、遊戯領域ゲームテリトリーが崩壊した。

 

 「えっ!?」

 

 円能寺は目を見開く。

 

 あり得ないと驚愕する。

 

 「ユニークスキル:真実の樹(トゥルー・ツリー)!!」

 「俺の前で偽物は許さない。」

 

 「遊戯領域ゲームテリトリーが偽物だと!?」

 

 「あぁ、それはお前の能力じゃない―――」

 「借り物の力だ!!」

 

 「ッ―――!?」

 

 「そして、コレが本当の"暴"だ!!」

 

 荒木は円能寺の頭を掴み、地面へ力強く叩きつけた。

 

 ッ―――!!!

 

 なんて、パワーだ・・・!?

 

 一瞬で、意識が飛びそうになる円能寺。

 

 こんなことならもっと真面目に鍛えておくんだった。

 

 そんな後悔を想いながらも、それはいますることではないと思い直す。

 

 今できる全力を持って困難に立ち向かう。

 

 それこそが仕事人(プロ)

 

 仕事人(プロ)は目的を果たしてこそ。

 

 「そうだ―――」

 「それでこそ仕事人(プロ)だ。」

 

 荒木は立ち上がる円能寺を見て、そう云った。

 

 「だがなぁ、俺も仕事人(プロ)だ。」

 「仕事人(プロ)同士の戦闘―――」

 「より、純度の高い方が勝つ。」

 「分かりやすくていいだろ?」

 

 

 「ハァ、ハァ・・・。」

 

 既に息が絶えそうな円能寺―――

 

 

 結果は火を見るより明らかだった。

 

 多分、あの不意打ちが無くても勝てなかっただろう。

 

 遊戯領域ゲームテリトリーが通用しない時点で円能寺に勝ち目はなかった。

 

 そこから先は一方的な蹂躙。

 

 荒木の拳がひたすらに円能寺の頬を殴り続ける。

 

 意識が飛びそうになる。

 

 いや、既に飛んでいたと思う。

 

 「フンっ!!」

 

 荒木の拳が円能寺の顎を突きあげる。

 

 「カッ・・・!?」

 

 鮮血が飛び散り、円能寺の身体が宙を舞う。

 

 やがて、地に落ち、その体は倒れる。

 

 「ふぅ~~、まぁ、こんなところか―――」

 

 僅かだが、呼吸の音は聞こえる。

 

 「同じ会社のよしみだ―――」

 「命までは取らないでおいてやる。」

 

 荒木は脱ぎ捨てたジャケットを羽織る。

 

 「おい、王権を寄こせよ―――」

 「そうすりゃ、命までは取らねェーよ。」

 

 荒木は腰を抜かしてその場から動けないでいたアーバインに向けてそう云った。

 

 「ヒィーー!!」

 

 恐れおののき、震えるアーバイン。

 

 「さっさと出しなっ!!!」

 

 声を荒げる荒木につい身体が反応する。

 

 王権を出してしまった。

 

 「それでいいんだよ―――」

 

 

 荒木は王権を手に取り、その場から去ろうとする。

 

 「ま、てよ・・・」

 

 ヒューとか細い呼吸音が聴こえる。

 

 やっとのことで立っている円能寺がいた。

 

 状況はすぐに把握できた。

 

 あれだけボコボコにされて、まだ立ち上がる。

 

 円能寺だって仕事人プロだ。

 

 このまま行かせては結果が残せない。

 

 荒木の眼の色が変わった。

 

 殺さないようにと考えていた俺が甘かった―――

 

 「へへっ・・・。」

 

 荒木―――、今回は俺の負けってことにしてやる。

 

 だが、見てろ、この借りはいつか必ず返すからな。

 

 

 

 荒木の渾身の右ストレートが円能寺の顔面に撃ち放たれる。

 

 その威力たるや分厚い石造りの壁を何枚もぶち抜いたとさ。

 

 

 ズルルルっ―――

 

 

 完全に意識を失った円能寺の身体は壁を力無く滑って最後には地に伏した。

 

 「全く、国光さんも嫌な仕事を押し付けてくれるぜ。」

 

 また地面に落ちたジャケットをその手に取り、彼はその場を後にした。

 

 

 

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