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【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
最終章 エレベーターに乗って異世界に来たオレ達は現実世界に帰る

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第728話 【デルタ∴コサイン】親愛なる善殺者


~アダムス 失楽園~

 

 まさか、あの状況から復活を果たすとは。

 

 往生際の悪い子だ―――

 

 しかし、同じ事。

 

 立ち上がるなら、もう一度捻じ伏せればいい。

 

 「もう、さっきまでの私とは思わない方がいいの。」

 

 キルマはそう言葉にする。

 

 「この期に及んで虚勢ですか―――」

 

 キルマが立ち上がろうが、状況は何一つ改善していない。

 

 シーオスには何百、何千と戦力がいて、先ほどの回避不能の攻撃もある。

 

 「虚勢かどうか、やってみれば分かるの。」

 

 相変わらず、この小娘は減らず口を―――

 

 「いいでしょう―――」

 「また叩き伏せて上げましょう!!」

 

 自分勝手な天国(セルフ・エデン)はまだ有効。

 

 自分勝手な天国(セルフ・エデン)は自分の都合の良い事実に書き換える。

 

 先ほどの攻撃回避もなかったことに書き換えた。

 

 キルの希望も絶望に書き換えた。

 

 だから、もう一度同じことをすればいい。

 

 シーオス達がキルマに向かって攻撃を繰り出す。

 

 斬撃、刺突、打撃、射撃、魔法―――

 

 あらゆる種類、四方八方からキルマを殺す為。

 

 「影なる者、全てを刈り取れ!!」

 「極大白影魔法:影喰いの聖鎌シャドウ・リーヴァー!!」

 

 「何っ!?」

 

 キルの周りに魔力が集まり、それが巨大な白銀の鎌を創る。

 

 その時、シーオス達は大きな死神を見たという。

 

 一振りでキルマに襲い掛かるシーオス達の影が全て刈り取られた。

 

 死神が刈り取るそれは魂―――

 

 影が刈り取られたシーオスは生気を失い、そのまま絶命した。

 

 「あぁ、うあっ・・・・!!」

 

 流石のシーオスもこれには動揺を隠せない。

 

 こんなハズは・・・!!

 

 いや、まだだ―――

 

 

 こんな時こそ、自分勝手な天国(セルフ・エデン)で書き換えを行えばいい。

 

 シーオスはそう思い、書き換えを行おうとした。

 

 しかし、それをキルは読んでいた。

 

 「貴方は私のことを舐め過ぎたの―――」

 「この"天聖"のことをッ!!」

 

 「何っ!?」

 「書き換えが行えないだと・・・!?」

 

 「さっきの攻撃が避けたハズの攻撃が当たった事象―――」

 「考えたらすぐに分かったの。」

 「貴方の魔法で自分の都合の良いように書き換えていたの。」

 

 いや、こんなに早く気付けるものなのか!?

 

 まだ数回しか見せていないのに―――

 

 それを可能にするのはキルの圧倒的な戦闘経験。

 

 これまで理不尽な敵と戦い続けたキルだからこその発想。

 

 「だが、魔法の効果が分かった所で、それを封じる手段はないハズ!!」

 「貴様、何をしたッ!!」

 

 

 激高するシーオス―――

 

 

 「情けない男―――」

 「貴方さっき自分で言ったじゃない。」

 「敵が簡単に自分から情報を教える訳ないって。」

 

 

 キルマは神聖剣を振るい、そのシーオスを殺した。

 

 今日だけでいっぱい人を殺した。

 

 どれだけ血を流しただろうか。

 

 昔はこんな感情になることはなかったのに―――

 

 今は胸が痛いの。

 

 この闘いが終わったら、もう人を殺すのは止める。

 

 だけど、今日だけは殺らせてもらうの。

 

 

 闘いはクライマックス―――

 

 「だが、私にはこの私達がいる!!」

 「無限の世界に広がるシーオスがいるのですッ!!」

 「貴方はたった一人ッ!!!」

 「たった一人の人間に何ができるというのですかっ!!」

 

 

 「一人じゃないの―――」

 「私にはアルマが・・・仲間達がいるのッ!!」

 「だから、今日、この時、貴方を殺す(・・)!!!」

 「それが貴方を救うことに繋がるから。」

 

 

 「私を救うゥ!?」

 「なぁにをほざいているのですかッッ!!」

 「貴方にとって私は敵ィ!!」

 「それ以外の何者でもないハズですっ!!」

 

 

 「敵だろうと何だろうと、私は貴方に育ててもらいました。」

 「その事実は変わりません。」

 「だからこそ、今の貴方を見るのは辛いです。」

 

 キルマの口からアルマの言葉が出る。

 

 

  "アルマ・・・これでおしまいにするの。"

 

  "はい・・・お願いします。"

 

 キルとアルマ、二人の意識は溶け合い、混ざり合う。

 

 そして、シーオスに向けて手を翳す。

 

 かつて、進と真、二人の闘いの最後―――

 

 キルは確かに見た。

 

 進が真のスキルを全て消す様を―――

 

 進は己の記憶と人格を引き換えに真のスキルを全て消した。

 

 そこまでのことが再現できるとは思っていない。

 

 対象者の全てのスキルを消すには至らないだろう。

 

 でも多少のスキルなら今の自分であれば消せる。

 

 

 

 「異能殺し(スキル・キル)!!」

 

 

 

 キルの放った意識が一人のシーオスを貫く。

 

 

 全てのシーオスがスキルを共有しているなら逆もまた然り。

 

 一人のシーオスのスキルを消せば、他のシーオスのスキルも消える。

 

 

 意識や経験を共有することが必ずしも正義というわけではない。

 

 

 辛い事、痛い事、嫌な事・・・それら全ても共有するということだ。

 

 

 キルが闘ってからずっと違和感を感じていた。

 

 

 このシーオスは経験を共有するという割には誰も痛みを共有していなかった。

 

 死の恐怖を共有していなかった―――

 

 

 発生した事実を共有していたのにそれでは違和感があり過ぎる。

 

 

 だから、ある仮説を立てた。

 

 

 シーオスは痛みや恐怖を完全に無効化するスキルを持っているのではと・・・

 

 だからこそ、今そのスキルを(キル)した。

 

 

 「なっ・・・何をしたあああぁぁーーーー!!!!」

 

 

 キルに《苦痛完全耐性》のスキルを殺されて、これまでの恐怖や痛みが蘇った。

 

 全員が全員それらを共有する。

 

 まさに地獄だ。阿鼻叫喚だ。

 

 経験を共有するというのは本来そういうこと。

 

 

 無限の苦痛をシーオスという人間一人が耐えられる訳がない。

 

 バタバタとシーオスは倒れていった。

 

 

 「終わりなの・・・・。」

 

 こうして、数分もしない間にシーオスはついに独りになった。

 

 

 そんなシーオスにただ向かい合うのはある一人の善殺者だったという。

 

 

 

 

 

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