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第723話 【デルタ∴コサイン】適応能力

 

~アダムス 失楽園~

 

 突如、現れる二人の別のシーオス―――

 

 それぞれが別の武器を所持している。

 

 一人は斧、もう一人は刀。

 

 それぞれが不思議な力を感じる、特殊な武器なのだろう。

 

 キルは目の前のシーオスの首を狙うことを止めた。

 

 後方二人の攻撃が自分に当たる方が速いと見抜いたからだ。

 

 即座の切り替え―――

 

 判断が遅い者は殺られる、ただそれだけのこと。

 

 キルは地面を強く蹴り上げ、その小柄の身体を浮かせた。

 

 そして、二人のシーオスの背後に着地する。

 

 キルに躱されたことを悟った二人のシーオスはそれぞれ振り返る。

 

 「影魔法:大影喰らいシャドーグール!!」

 

 シーオス達の眼の前に巨大な影が口を開く。

 

 自分達を飲み込もうとしている―――

 

 「白魔法:ライフバリア!!」

 

 斧を持ったシーオスが自分達を囲むようなバリアを展開して、凌ぐ。

 

 影が晴れ、大影喰らいシャドーグールが消えようとした瞬間、既にキルが剣を構え、差し迫っていた。

 

 「ッ―――!?」

 

 スンッ―――!!!

 

 神聖剣を思いっきり振り下ろす。

 

 その行動の速さにシーオスは対応できない。

 

 シーオスがライフバリアを弱めると信じたキルがそれごと斬り裂いた。

 

 「ぐわああぁぁーーー!!!」

 

 また一人、シーオスを殺った。

 

 これで二人目だ。

 

 

  "キルさん・・・"

 

 アルマも心の中で、シーオスの無惨な死に顔を見ていた。

 

 かつて自分の本当の親のような存在だった。

 

 そんな人とこんな殺し合いをしなければいけないことに心を痛める。

 

 

 一方のシーオスはキルの予想以上の戦闘力に驚愕していた。

 

 

 ただの小娘だと思っていたのに―――

 

 何ですか、この戦闘力は・・・?

 

 レベルも圧倒的にこちらが上、力やスピード、技だって負けていない。

 

 数だって、こちらはほぼ無限に呼び寄せることが出来る。

 

 それなのに何故、私が追い詰められる?

 

 これではまるで、あの男と一緒ではないか!?

 

 かつて、一度会ったことのあるあの男『天童 真』と―――

 

 一度目が合っただけで、植え付けられた敗北のイメージ。

 

 それを今、この娘から同じく感じている。

 

 

 「もっと数を出したらどうなの?」

 「二、三人じゃ私には釣り合わないの―――」

 

 シーオスが二人、三人では相手にならないと発言するキル。

 

 何故、ここまで大きな口が聞けるのか。

 

 「いいでしょう―――」

 「貴方に見せて上げますよ。」

 「ユニークスキル:並行天国パラレルヘブン!!」

 

 何もない空間に意識を持ったシーオスが数百人、キルを取り囲むように出現する。

 

  "こんなに多く、シーオス司祭が・・・!?"

 

 アルマも恐ろしくなる。

 

 自分が何と戦っているのか、分からなくなる。

 

 まさに異質―――

 

 これだけのシーオスが一斉にキルに襲い掛かったら、どうなってしまうのか。

 

 不安で仕方ない。

 

 しかし、そんなアルマの不安を拭うかのようにキルは対照的だった。

 

 自然と笑みが零れ、愉しそうだった。

 

  ゾクっ―――

 

 そんなキルに対して思わず、アルマの方が恐くなった。

 

 シーオス司祭にも恐怖したが、キルも相当恐ろしい。

 

 「アルマ・・・安心するの。」

 「貴方にはこの"天才" スターリン-キルが付いているの。」

 

 

 

 「この戦力差でまだ勝てると思っているのですか?」

 「降参するなら今の内ですよ。」

 「まぁ、降参した所で生かしてはおきませんがね―――」

 

 

 余裕のある笑いと共にそう云い放つシーオス。

 

 まるで自分の勝利を確信したかの言いぶりだ。

 

 まぁ、これだけの自分を別次元から無条件で出現させることが出来るなら余裕なのも頷ける。

 

 人は誰だって、考えたことがあるだろう―――

 

 『もう一人、自分がいたら良かったのに』と・・・。

 

 辛いことや嫌なことをもう一人の自分に押しつけられたらどれだけ良かったかと。

 

 シーオスの能力はまさにそんな願望を叶えたかのような能力。

 

 もう一人なんてケチ臭いことは言わない。

 

 同じ空間に無制限に自分を存在させることが出来る。

 

 

 「これだけの能力、何か弱点はあるはずなの―――」

 

 キルは冷静にそう口にする。

 

 「弱点などありませんッ!!!」

 「私の並行天国パラレルヘブンは無敵ですッ!!」

 

 

 「白緑魔法:不変の大地ノーチェンジテラ!!」

 

 一人のシーオスが詠唱した。

 

 「ッ―――!?」

 

 キルは場の違和感を感じ取る。

 

 「影魔法:影の潜水シャドーダイブ!!」

 

 キルは陰に隠れようとした影魔法が発動しない。

 

 コレはシーオスの使用した魔法の影響?

 

 「フフ・・・不変の大地ノーチェンジテラの効果で貴方の魔法は発動できません。」

 

 

 厄介なことしてくるの―――

 

 魔法無しで数百人のシーオス相手をしなくちゃなの。

 

 そんな言葉とは裏腹にキルはワクワクする。

 

 これだけの人数を殺せたらどれだけ愉しいだろうかと思っていた。

 

  "アルマ・・・私はアイツに対して容赦しないの"

  "貴方もそれでいい?"

 

 念のため、確認するキル。

 

 こんな展開になるとはアルマも思ってなかっただろうから。

 

  "私は大丈夫です。"

  "貴方を・・・キルさんを信じてますから!!"

 

 いい子ね―――

 

 貴方のその期待に私は応えるの!!

 

 数百人のシーオスが一斉にキルに襲い掛かってきた。

 

 その物量は圧倒的、その武力は圧倒的―――

 

 しかし、一斉に臨むとは言っても一度で掛かれる人数は限られる。

 

 お互いの攻撃がぶつからない為だ。

 

 一度に攻撃できる人数はせいぜい4~5人がいい所。

 

 それはキルも把握している。

 

 だからこそ、限界を見極める。

 

 自分が攻撃を受けることの出来る限界を―――

 

 

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