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第72話 クロヴィス城の秘密の抜け道【未央side】

 ~獣人の国 クロヴィス城 城内~

 

 未央がクロヴィスの国王レオを倒し、王権を入手した。その一部始終を部屋の外から覗いている者がいた、それはこの国の姫リオンであった。

 

 「ま、まさかあの誰よりも強い、父上が負けるなんて―――」

 

 この国最強の存在であるレオが負けたことに動揺をしていたリオン。

 

 予めレオが言っていたこの城の秘密の抜け道のことを思い出した。

 

 「父上がもし自分に有事のことがあった際はそこから逃げろとおっしゃっていたっけ。」

 

 もしこのまま、玉座の間にいるあの魔族たちに勝負を挑んだとしても恐らく勝てないだろう。

 

 それに私が逃げることが父上の意思であるなら私はそれに従うべきこと。

 

 そう考え、リオンは、自室に戻り、最低限の武器と道具だけを手にし、秘密の抜け道がある父上の自室に向かった。

 

 幸いなことにまだ、悪魔たちはここまで攻め込んでいないようで、父上の自室までは誰にも会うことなく、たどり着く。

 

 玉座の間での一部始終を見ていたリオンは、父がまだ死んでいないことも確認する。

 

 それにあの未央様と呼ばれていた人は父上を倒したけどその後、父のことを治療しようとしていた。

 

 ―――ということはまだしばらくは父上は生かしておくハズ。

 

 だったら、他の国に協力を求めて、父上の救出を行うことだって可能。

 

 そんな可能性を考え、リオンは逃げることを決意した。

 

 「待っていてください父上―――」

 「必ず助けに戻ってきます!!」

 

 レオの自室の暖炉の裏にボタンがあった。

 

 そのボタンを押した瞬間暖炉がズズズと後ろに移動し、暖炉の下が地下室になっていた。

 

 父によると、ここから、この国の外の近辺の森の中にある井戸に繋がっており、そこから脱出できるらしい。

 

 地下室の中は狭く、何十年も使われていないのだろう、埃が周囲に舞っていた。

 

 リオンは暫く歩くと、だんだん水が足元にしみてきた。

 

 そして、光の差し込む箇所が本当にあった。

 

 「本当に井戸に繋がっていたんだ。」

 「よし、ここから脱出できるはず―――」

 

 そう期待を胸にリオンは井戸の入り口にたどり着く様にロープを引っ掛け、そのロープを伝ってよじ登る。

 

 井戸から抜けると、そこには新鮮な外の空気が広がっていた。

 

 「よし、これから他の国に協力を要請して、父上の救出に向かおう!」

 

 協力を要請することで他の国の貸しを作ることになるが、父のレオの強さは全世界に轟いている。

 

 そのレオの後ろ盾が手に入るかもしれないということなら、喜んで協力してくれる国だってあっても全く可笑しな話ではない。

 

 それに今この世界では、南の大国ブロワ王国とそしてその隣のランジネット公国が王位の継承権で争っていた。

 

 それも百年近く続き、『百年戦争』と呼ばれている。

 

 その戦火は他の国にも回り、度々私のクロヴィス王国にもその火の粉は降り注いでいた。

 

 ただクロヴィスは他の国よりも強かったため、ほとんど被害と言う被害はなかったが、他の弱小国はそうもいっていない。

 

 酷い所は、村や町で食糧難や疫病が流行ったりもしていた。

 

 だから、東の聖王国を目指そう。

 

 あそこなら、聖女もいるし、魔王が復活したことで新たな勇者の召喚も始まっているハズ。

 

 そうなれば父上の救出にも前向きに検討してくれるだろう。

 

 そう決意を固めていたリオンであった。

 

 その時、リオンの近くから複数の人の気配がした。

 

 そして、リオンの目の前に騎士風の男が現れた。

 

 その傍らには複数の男たちもいた。

 

 「ふふふ、あの妖術師の言っていたことも全くの見当違いではなかったようだな。」

 

 その騎士風の男は訳の分からないことを言っている。

 

 しかし、リオンはその騎士風の男の鎧に刻まれている紋章をよく見てみるとそれは神殿騎士団の紋章であった。

 

 リオンは喜んだ。

 

 なぜなら神殿騎士団といったら、教会に所属している騎士団であり、聖王国お抱えの超実力派の騎士団であったからだ。

 

 もしかしたら、父上の救出は思った以上に早く進むんじゃないかと期待していた。

 

 「もしかして、貴公は神殿騎士団の者か?私はクロヴィス王国の姫フィラー=アレクサンドル・リオン!」

 

 「実は我が国が魔王軍によって、侵略されてしまった。」

 「それで国王であるレオの救出を貴公たちに要請したい。」

 「もちろん成功したら望む報酬は出す」

 

 「どうだろうか?」

 

 リオンはその騎士風の男に頼んでみた。

 

 すると、その男はニヤニヤした表情をしていた。

 

 リオンは何かおかしいと直感的に悟った。

 

 「おめでたいお姫様だぜ!」

 「なぜ、俺たち神殿騎士団が貴公らを助けなければいけないんだ!」

 

 「ではなぜ、私の前に現れた?」

 

 「何故って?それはここに来るお姫様を奴隷にするためさ!」

 

 「ど、奴隷だと!?ふざけるな!」

 

 「クロヴィス王国の姫様と言えば容姿端麗で性格もいいって評判だぜ!」

 「いくら金を積んでも欲しい男はこの世界に五万といる。」

 「だけど、姫様は武芸にも精通しているらしいから、抵抗されるのを見越して、神殿騎士であるこの俺が出張ったってわけさ。」

 

 「クッ、この外道共が!恥を知れ!」

 

 リオンは怒りから剣を抜き、神殿騎士の男を斬りつけようとした。

 

 「まぁ貴公がどう泣こうが叫ぼうが結果は変わらないだけどな!」

 「白魔法:ライトバインド!」

 

 男の白魔法により、リオンの体の回りに光の輪が現れ、リオンを縛り付けた。

 

 必死に抵抗したが、リオンにその拘束を解く術はなかった。

 

 「あ~抵抗しても無駄無駄、五月蠅いから少し眠ってもらうね。」

 

 「地獄に落ちろ!この外道が!」

 

 それはリオンが眠らされる前に叫んだ言葉だった。

 

 

 

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