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第713話 【デルタ∴タンジェント】傾向と対策


~アダムス 立体武器庫~

 

 俺じゃ、コイツには勝てないのか?

 

 新は倒れて身体をそのままに思いを強くする。

 

 タイアンは自身の身体を改造している。

 

 脳内に埋め込んだチップもその一つ。

 

 

 「必要なのは傾向と対策―――」

 「どんな強者でも癖や弱点は存在する。」

 「まさか機械の思考に人間が勝てるとでも?」

 

 「・・・・・・っ!?」

 

 新は立ちあがり、腕を上げる。

 

 まだ闘える―――

 

 

 へぇ、まだ(やれ)るんですね。

 

 安心しました―――

 

 こんな所で終わってはガッカリですもの。

 

 

 タイアンはゆっくりと新の方へと歩を進める。

 

 こんなにも余裕があるのは、どんなに新が鋭い一撃を放とうとも流すことが出来ると確信していたからだ。

 

 既に脳に埋め込まれたチップが新の動きを学習し、それに対する対策をアウトプットしていた。

 

 「さぁ、どうしたんですか?」

 「殴って来ないのですか?」

 「手を伸ばせば当たりますよ―――」

 

 タイアンが煽る―――、新の拳が当たる距離まで近づき。

 

 「舐めんなっ!!クソがアァーー!!」

 

 新はその挑発を受け、タイアンへ殴り掛かる。

 

 全く、学習しない人だ―――

 

 タイアンは淀みのないフットワークで新の拳をスルっと避ける。

 

 そして、そのまま新の顎へとカウンターをお見舞いする。

 

 ゴンっ!!

 

 脳を揺らす一撃―――

 

 新は意識を失い、そのまま地面へ倒れる。

 

 ブラックアウトした。

 

 「脆いですねェーー!!」

 「こんなものですか!?最強の生物というのは!!」

 

 タイアンが歓喜する。

 

 相手を蹂躙した時、それまでの緊張感は至福へと変わる。

 

 数秒が・・・永遠にも感じる。

 

 アァ、私は幸福だ!!

 

 ゆっくりと深呼吸を数回する。

 

 そして、壁に立てかけてあった鉄球に手を当てる。

 

 「これは少し持ちにくいですね。」

 「持ちやすいようにしましょう。」

 

 一発拳を当てる。

 

 メリメリと硬い鉄球は音を立てて、亀裂が走る。

 

 タイアンが殴って溝が出来たことで掴みやすくなった。

 

 タイアンはそれを片手で軽々と持ち上げてみせる。

 

 「これでアラタに止めを刺しましょう。」

 

 恐らく数百キログラムは下らない鉄球を持ち上げ、倒れている新の方へ近づく。

 

 

 「アラタ、これでお別れです!!」

 

 

 ドオォォォーーン!!!

 

 タイアンは思いっきりその鉄球を倒れている新へ投げつけた。

 

 終わりましたね―――、案外呆気ない。

 

 終わったと思ったタイアン。

 

 「ん?」

 

 しかし、まだ終わりではなかった―――

 

 叩きつけた鉄球に更なる亀裂が走る。

 

 ビリビリビリ・・・!!

 

 激しい亀裂が入ったと思ったらガラガラと崩れる鉄球。

 

 激しい砂煙の中、出てきたのは頭から流血している新だった。

 

 「オメェのお陰で目が覚めたぜ―――」

 

 「これは驚いた、まだそんな力が残っていたんですね。」

 

 タイアンは完璧主義だ。

 

 倒れた敵が立ち上がるなら何度だって、叩き伏せる。

 

 徹底的にだ!

 

 「アラタ、もっと私を楽しませてくれよ!!」

 

 そう云ったタイアンの前に新が繰り出した。

 

 疾いっ!?

 

 タイアンの予想を超える新のスピード。

 

 だが既に脳チップのAIは新の動きを学習している。

 

 すぐさま、軌道修正の為の電気信号をタイアンの身体に送り込む。

 

 その命令に忠実に従っていれば、タイアンが新に後れを取ることはない。

 

 「ッッッ!!!!」

 

 ビリビリビリ・・・・!!

 

 タイアンに電流が走ったような衝撃が伝わる。

 

 全身に鳥肌が立つ。

 

 新の気迫にたじろいでしまう。

 

 私が動くよりも速い!!

 

 これでは躱すことが出来ない!?

 

 「オオオオォォォ!!」

 

 ボオォンン!!

 

 新の拳がタイアンの顔面を捉える。

 

 「くっ・・・!!!」

 

 

 タイアンは遥か後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

 「なんて力だ・・・!?」

 「アレは本当に同じ"兵器"?」

 

 タイアンは立ち上がる。

 

 しかし、その瞬間、足に力が入らなくなる。

 

 カクっと上体が下がってしまう。

 

 足に力が入らない?

 

 まさかこの私がこれほどのダメージを・・・?

 

 

 傾向と対策のさらにその先を新は超えてしまった。

 

 

 「手ごたえはあったみてェーだな。」

 

 頭はガンガンに痛い。

 

 だが、不思議と気分は悪くない。

 

 スッキリした感覚。

 

 肩の力が抜けたみたいな―――

 

 こっから反撃って訳だ。

 

 

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