第707話 【第六ゲート】不正天使 朝霧 鏡花 VS 無限零神 アレフ・ノート④
~異次元空間エンドレス~
無限の弾丸の嵐―――
鏡花はそれを銀魔法の盾で凌ぐ―――
「裏魔法:コネクトチャンネル!!」
コピー空間を移動し、アレフ・ノートと距離を縮める。
無限の力は強大だが、弱点が無いわけではない。
弱点の一つはその技の発動した後、別の技をすぐさま使うことが出来ないことだ。
一旦、発動中の技を解除しないと次の技を使用できない。
同時にいくつも並行で発動できないのかもしれない。
鏡花はそんな解析を行いながら、アレフ・ノートの背後へと移動した。
「ッ―――!?」
アレフ・ノートは鏡花の気配が消えたことに気付き、辺りを警戒していた。
そして、現れた鏡花の方を見て、反応する。
そのせいで一瞬、反応が遅れた―――
「これで終わりにしましょう―――」
「猟獄打ち!!」
容赦のない鞭打ちが炸裂する。
手の動きが見えない。
絶え間の無い鞭打ちがアレフ・ノートに襲い掛かる。
言うことの聞かない地獄のケロべロスにコレをよく使っていた―――
愚者の鞭は肉体へのダメージはない。
しかし、一発相手に当てるごとに暫く一定量の記憶を忘れさせる。
ヤツは記憶を失うことを恐れている。
これでアレフ・ノートの心を折る。
「フフン♪」
「記憶を取り戻そうって男が記憶が失う気分どうかしら?」
ニヤリと微笑を浮かべ、アレフ・ノートを見下す。
俺は何故・・・ここにいる?
俺は一体、何者なんだ・・・?
無限の力をその身に宿し、アレフ・ノートはその場に倒れた。
闘いの最中、取り戻しつつあった自分の正体。
それが再びリセットされる。
「さて、どうやってとどめを刺そうかしら?」
倒れたアレフ・ノートに対して追撃を試みようとする鏡花。
弱っている相手に追撃を仕掛けるのは当たり前の話だ。
相手は無限の力を有した危険の相手というのもあるが―――
わざわざ立ち上がるのを待ったりしない―――
「そうだ、これを使ってみましょう―――」
そういって、鏡花は手の開く。
右手に魔力を集中させる。
光の玉が浮き上がる。
「たしか・・・こうだったかしら?」
鏡花は呪文を詠唱する。
白魔法の光―――
向こうが無限の力ならこちらも無限の力を使って、ヤツを潰す。
「極大白魔法:無限光子撃!!」
この魔法はかつて、進が編み出したオリジナル魔法―――
彼の天才的な魔力制御とアイディアが可能にした無限のエネルギーを持つ光球。
その魔法を鏡花は見よう見まねで再現してみせた。
「天童君にも見せてあげたかったわ―――」
「彼、どんな顔するかしら?」
「驚く?それとも悔しがる・・・?」
アレフ・ノートは無防備の状態。
光がアレフ・ノートを包み込む。
「・・・・・。」
鏡花はその様子を眺める。
その様子にどこかあっけなさを感じていたからだ。
このまま終わり?
初めに感じた脅威は警戒しすぎていた?
いや、まだ何かある―――
鏡花はそんな確信を抱き始めていた。
無限の光が流れてくる。
俺はここで消えるのか?
プラスの無限とマイナスの無限が合わさり、常に0に収束していた。
それにさらにプラスの無限が加わったことでプラス方向へ傾いている。
記憶が無くなるということは信念が無くなるということ―――
俺は一体、何を目指して進めばいいんだ?
そんな希望を失ったアレフ・ノートの頭にまた聞き覚えのあるあの声が聞こえてきた。
"ボクは今まで絶望してきた―――"
"途方もないマイナスをこの身に受けてきた。"
"君が無限のプラスを得たというが、本当にそれでボクのマイナスを受け切れるかい?"
なんと不気味な悍ましい声だろうか―――
俺はあの声の主に心底恐れを抱いていた。
そうだ―――
俺はあの時、ヤツのマイナスを受けたんだ。
その身に受けたことで今のこの身体になったんだ―――
プラスとマイナス、拮抗しているかに思われたが、マイナスの力の方が大きかった。
飲み込むんだ!!
あの女が放ったプラスの無限を―――
ヒュー――!!!
アレフ・ノートを中心として渦が出来上がり、無限の力を持つ無限光子撃が吸い込まれていく。
エネルギーが吸い込まれる?
未央ちゃんの黒穴と同じような原理かしら?
アレフ・ノートの身体を巡るマイナスの力が大きくなっていることを感じる。
「寧ろ、私の力を吸い込んで大きくなったと云った所ね―――」
無限のエネルギーを飲み込み体躯が数倍以上に大きくなったアレフ・ノートが鏡花の前に立ちはだかる。
「女神の眷属である天使よ―――」
「お前のお陰で俺はあの男を思い出せたッ!!」
「あの男の"恐怖"を思い出すことが出来たアァーーーっ!!」
「へぇ、それは良かったじゃない?」
「じゃあ、その思い出を抱いて逝きなさいッ!!」




