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第703話 【第五ゲート】完璧 メルクロフ VS 貫全 ヴィシニス⑥


~コロシアム~

 

 メルクロフ VS ヴィシニス 最終章。

 

 如何に頑強な砦であろうと独りで制圧できる自信はある―――

 

 かつて勇者と共に魔王を討伐した時も私は誰よりも前で戦った。

 

 その刃は勇者の為にと―――、振り掛かる火の粉はこの槍で振り払った。

 

 あらゆる全てモノを貫く槍であると『貫全』と呼ばれるまでに至った。

 

 そんな私の前に立ち塞がる『完璧な盾』―――

 

 メルクロフッ!!

 

 私は貴様という障壁を超えて、あの男を殺すッ―――!!

 

 ギイイィィィィーーー!!!

 

 まるで城門が開かれるような音が聴こえた気がした。

 

 「ヴィシニスウゥゥーーー!!!」

 

 一人の戦士として、メルクロフもここは引く訳にはいかない。

 

 あとは意地と意地のぶつかり合いだ―――

 

  『パパ、がんばってーー!!』

  

  『アナタ・・・。』

 

 ヴィシニスも全身全霊の力をその槍に込める中、確かに聞こえた気がした。

 

 亡き妻と娘の声が―――

 

 引けないのはこちらも同じ事―――ッ!!

 

 両者、五分と五分。

 

 メルクロフは死闘の中、新とのやり取りを思い出す。

 

  "なぁ、聞かせてくれ―――"

  "あの『矛盾』という話の続きを―――"

 

  "ア"ァ"―――!?俺もしらねぇーよ!"

 

  "なんだ、それ?"

  "気になってしまうだろ。"

  

  "まぁ、気持ちも分からなくもねぇーが―――"

  "でもさ、歴史ってのは自分達で作ってくもんだろ―――"

  "道は自分で作った方がおもしれーよ!!"

 

 

 アイツは笑顔で答えていたな・・・。

 

 

 ギチギチギチギチギチギチギチギチ・・・。

 

 私の盾が悲鳴を上げている。

 

 貫かれるのか?

 

 いや、負けんっ!!

 

 己を信じろッ!!

 

 勝つのは私だッ!!

 

 「ウオオォォォォーーーー!!!!」

 

 メルクロフは叫ぶ。

 

 

 クッ・・・、腕が・・・!!

 

 拮抗してから1分程度が経った頃か―――

 

 ヴィシニスの腕が悲鳴を上げる。

 

 ここまで長い時間拮抗したことが過去例を見ない。

 

 

 いや、腕だけではなかった―――

 

 

 私の愛槍の方が持たない?

 

 「クっ・・・!?」

 「こ、こんなことが・・・!?」

 

 シーオスという憎き仇を討つ前にここで朽ち果てるのか?

 

 そんなこと・・・

 

 そんなことあってはならんッッ!!

 

 「グゥゥ~~~!!!」

 

 戦士として誇りと勝ちへの執念が葛藤する。

 

 それは苦渋の決断―――

 

 その結果―――

 

 ヴィシニスは槍を一度引いた!!

 

 「ッ―――!!?」

 

 メルクロフは目を大きく見開き、内心驚く。

 

 そして、再び力を込めるヴィシニス。

 

 「ユニークスキル:貫・全・突・破!!」

 

 

 連発は出来ないハズ!!?

 

 それなのに・・・!!

 

 ヴィシニスの全身は既に限界―――

 

 連発をするのはいかにヴィシニスと言えども身体へ相当な負担が掛かる。

 

 でも、勝ちたかった―――

 

 勝ちを選んでこその人生!!

 

 「これしきの試練を超えられんようではシーオスには届かない!!!」

 「乗り越えてみせるぞオォォーーー!!!」

 「メルクロフーーーっ!!!」

 

 メルクロフはただ構えるだけ―――

 

 そこから引かない。

 

 カッッッッーーーー!!!

 

 ヴィシニスが貫いた瞬間、辺り一面に光が広がる。

 

 

 決着の刻―――

 

 

 「ヴィシニス・・・。」

 「いい戦いだった―――」

 「貴様と戦えたことを光栄に思うよっ!!」

 

 「ッ―――!?」

 

 「上限無しの反撃アンリミットカウンターアアァァーーーっ!!!」

 

 

 ブシューーー!!!

 

 ヴィシニスの全身がひび割れる。

 

 そしてその亀裂から鮮血が飛び散る。

 

 赤い血だ―――

 

 それも真紅の。

 

 「グフっ・・・・!!!」

 

 バタンっっーーーー!!!!

 

 その巨躯が地に落ちる。

 

 カランっ・・・。

 

 手に持っていた槍と共に―――

 

 

 メルクロフ VS ヴィシニス、メルクロフの勝利で幕を下ろした。

 

 

 フゥーーー、何とか勝てた・・・。

 

 メルクロフは深呼吸をする。

 

 正直、紙一重だった。

 

 最後にヴィシニスが折れてくれた。

 

 一度、引いたことで信念が揺らいでくれた。

 

 あそこがまさに分岐点―――

 

 ヤツがあそこで引かなければどっちが勝てたか分からなかった。

 

 「ぐぬぬ・・・この私が負けるなど・・・!!」

 

 もはや動けない。

 

 そんなヴィシニスの前でメルクロフは立つ。

 

 「殺せっ―――」

 

 ヴィシニスはそう云った。

 

 既に敗北を受け入れていた。

 

 最後に立っていた者が勝者だ。

 

 この状況、メルクロフが勝者で間違いない。

 

 「何で?」

 

 メルクロフは聞き返す。

 

 「敗者は消えるのみ―――」

 「貴様にはその資格がある。」

 

 「断るっ!!」

 

 「私に生き恥を晒せと?」

 

 「勝者が敗者をどうこうできるというなら貴様が私に命令するのはおかしいだろ―――」

 「だから断るッ!!」

 

 メルクロフは強い意志でそう云った。

 

 戦士として認めたからこそ、ヴィシニスをここで手に掛けたくはないと思った。

 

 「ならばこの私にどうしろと?」

 

 「しがみつけ・・・」

 「そして見届けろッ!!」

 「己の復讐を果たしたいのなら自分の手で掴み取れッ!!」

 

 メルクロフはその場にしゃがみ、ヴィシニスに肩を向ける。

 

 この肩に掴まれというように―――

 

 「情けを掛けるつもりか!?」

 

 「情け?」

 「それは少し違うな―――」

 「戦力は多いに越したことは無い。」

 「だからコレは貸しにするんだ―――」

 「この貸しは大きいぞ。」

 「絶対に返せ―――」

 

 

 「だから、生きろッ―――!!」

 「泥水を啜ってでもッ!!」

 

 

 

 

 「メルクロフ・・・・!?」

 「・・・・・・すまない。」

 「恩に着る・・・・。」

 

 

 

 ヴィシニスはその瞳から大粒の涙を流し、メルクロフの肩を掴む。

 

 

 

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