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【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
最終章 エレベーターに乗って異世界に来たオレ達は現実世界に帰る

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第702話 【第五ゲート】完璧 メルクロフ VS 貫全 ヴィシニス⑤


 中国の故事成語に『矛盾』という言葉がある。

 

 たしか、中国の戦国時代に書かれた『韓非子』が元になった話だったか―――

 

 どんな堅固な盾も貫く矛とどんな鋭利な刃も貫くことの出来ない盾を売り物として謳う商人がいた。

 

 客人がその矛で盾を貫いたらどうなるのかと問い商人は返す言葉が無かったらしい。

 

 そう云ったものごとのつじつまが合わないことを『矛盾』という。

 

 それが現代でも使われるようになった。

 

 

~コロシアム~

 

 「どんな物も貫くことを許さない盾とどんな物も貫く矛―――」

 「それが相対した時、どうなるのか―――?」

 

 メルクロフがそう口にする。

 

 「・・・・?」

 

 ヴィシニスは無言のままだ。

 

 「昔、アラタ―――、という人間に教わった。」

 「そう云った言葉があるんだと。」

 「私達に似ていると思わないか?」

 「最強の盾と最強の矛・・・。」

 

 メルクロフが言葉を続ける―――

 

 戦闘とは対話だ。

 

 当時はアラタの言葉を下らないと聞き流していたが、まさか再び同じような状況になるとは思いもしなかった。

 

 だから、ついこんなことを口走ってしまったのだろう。

 

 ここから二人の決着が始まる。

 

 それより前に口にしたかった。

 

 もう、これから始まるから―――

 

 言葉の交わすことのない対話が―――

 

 ヴィシニスが動いた。

 

 「《竜の血脈》!!」

 「紅蓮の炎よ―――、私に力を貸せッ!!」

 

 ゴオオォーーと業炎がヴィシニスの周りを取り囲み、彼に力を与える。

 

 来るッッ―――!!

 

 メルクロフは盾を構え、攻撃に備える。

 

 大地を一蹴りで、一気に間合いを詰めた。

 

 ヴィシニスが槍を勢いよく突き刺し、メルクロフの盾を貫こうとする。

 

 「《極・剛槍術》!!」

 「十連星槍突きッ!!!」

 

 

 「無欠の要塞フローレスフォートレス!!」

 

 まるで要塞―――

 

 ヴィシニスの豪速の十連突き。

 

 それを迎え撃つには十分すぎる堅牢さ。

 

 先の貫全突破以外にはまだ破られていないメルクロフの盾術。

 

 しかし、再び貫全突破が発動したら・・・。

 

 メルクロフの懸念はまさにそれだった。

 

 しかし、ヴィシニスは貫全突破を撃って来ない。

 

 発動に何か条件でもあるのか?

 

 「何故、私が先ほどの技を使わないのか―――」

 「疑問に思っているようだな―――」

 

 闘いの最中、ヴィシニスが口を開いた。

 

 「・・・っ!?」

 

 その間、激しく槍で行われる、突き、払い、振り下ろすという行為。

 

 ヴィシニスの猛攻をメルクロフが耐えきっている。

 

 こうしている間にもダメージが蓄積し、上限無しの反撃アンリミットカウンターのカウンターがより大きくなるだけ。

 

 「完全突破は私自身の全てを乗せて放つ奥義―――」

 「私自身に掛かる負荷もかなり大きい。」

 「そうそう連発はできない。」

 

 「何故、それをわざわざ敵である私に教える?」

 「黙っていればいいものを―――」

 

 ヴィシニスはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 「貴様とより純度の高い真剣勝負がしてみたくなった。」

 「不意打ちの類でも勝っても嬉しくないからだ。」

 

 ヴィシニスはそう返す。

 

 彼はこの闘いを楽しんでいるということなのか。

 

 ならば私もそれに応えよう―――

 

 「暗黒武技:嵐帝盾葬らんていじゅんそう!!」

 激しい竜巻と雷撃がメルクロフの持つ盾の中心から放たれた。

 

 メルクロフは護るだけではない。

 

 盾を使った能動的な攻撃手段も持ち合わせている。

 

 「―――っ!?」

 

 突然の攻撃に少し驚いた表情を見せるヴィシニス。

 

 しかし、すぐに笑みへと変わる。

 

 「暗黒武技:独蛇王の盾!!」

 

 メルクロフの持つ盾から無数の毒蛇が出現する。

 

 ヴィシニスの両腕にそれらの毒蛇が噛み付く。

 

 「強力な毒か・・・。」

 「だが、残念だ―――」

 「私は毒に対する耐性を持つ。」

 

 「アトミック・ブレス!!」

 

 ヴィシニスは大きく息を吸い込み、超高熱の息を吐き出した。

 

 蛇達は瞬く間に焼き焦げ、朽ちていく。

 

 メルクロフは熱波を盾でガードする。

 

 一進一退の攻防が繰り広げられる。

 

 互いの死力を尽くした激闘。

 

 そんな緊張感のある闘いももうすぐ終わりを告げようとしていた。

 

 「どんなモノも護る盾―――」

 「本当にそんな物があるというのなら証明してみろッ!!」

 「この私の技を正面から受けることでなッッ!!!」

 

 「ユニークスキル:貫・全・突・破!!」

 

 ビリビリビリ・・・!!!

 

 メルクロフだけでないヴィシニスにも全身に衝撃が走る。

 

 それだけこの一撃に想いを乗せているということだ。

 

 ここだ!!

 

 ここさえ防ぐことが出来れば―――

 

 護りたい・・・。

 

 あの日、私が家族を護ると誓ったあの日から―――

 

 もうあんな無力感を味わいたくなどないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヌルが、昔言っていた―――

 

 

 自分達は勝つことでしか、存在証明できない。

 

 決して満たされない。

 

 満たされること等あり得ないと・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヌル、お前の言ってることは正しかったよ―――

 

 勝利をこれほど熱望することが私の生涯にあるとは思わなかった。

 

 ヴィシニスは真っ向から貫いて来る。

 

 だったら私も真正面から受け止めるッ!!

 

 これが最後の攻防だ。

 

 これ以上はあり得ないッ!!

 

 

 みんな・・・姉さん、アラタ・・・。

 

 

 私に力を・・・護る為の力を貸してくれッ!!

 

 「無欠の要塞フローレスフォートレスウウゥゥゥーーーーッッ!!」

 

 メルクロフの前に頑強で堅牢な要塞が出来上がる。

 

 何物も貫けない。

 

 しかし、それを強引に貫こうとする力がある。

 

 ヴィシニスだ!!

 

 「オオオォォォーーーーーっ!!!!」

 

 私にだって負けられない理由がある。

 

 

 私は貴様が羨ましい―――

 

 

 

 

 

 何故なら、私が護りたかったモノはもうこの世に存在しないのだから・・・。

 

 

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