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第687話 【第二ゲート】召喚士 鈴谷 花 VS ダークヒーロー モブ山モブ太郎⑤


~アカデミー~

 

 兎にも角にも直撃を与えた―――

 

 いかに異次元の覇者だと云ってもノーガードでDD-ブレイクを受けて無事ではない。

 

 「とどめを・・・」

 「とどめを刺さなきゃ―――」

 

 モブ山がゆっくりとクロの方へ歩き出す。

 

 愚かな竜王よ・・・今楽にしてやる。

 

 バッ―――!!

 

 

 そんなモブ山の進行方向に両手を広げ、花が立ち塞がる。

 

 まるでこの先には行かせないと言わんばかりの顔で。

 

 「どいて―――」

 

 ただ冷たくモブ山は言い放つ。

 

 「どかないッ!!」

 

 花はそう返す。

 

 とても強い眼差しをしている。

 

 こんな女の子を殺すのはあまり気乗りしないんだが―――

 

 モブ山は頭をポリポリと掻き、殺意の籠った瞳を花に向ける。

 

 そして、魔力の籠った拳を花に向ける。

 

 昔から魔法が全く使えなかった。

 

 この世界ではどれだけ魔法が使えるかどうかが人間の価値を決める。

 

 魔力を身体に有しているのに何故かみんなのような魔法が使えない。

 

 火を起こしたり、雷撃を飛ばしたり、風を操ったり・・・

 

 そんな元素魔法が全く使えなく、落ちこぼれ扱い。

 

 だけど、シン様と出会い自分のこの『D魔法』の存在に気付いた。

 

 僕だけの魔法だ。

 

 拳に闇の魔力を乗せることで高火力の一撃を与えることが出来る。

 

 杖なんて無くったって使うことが出来る。

 

 

 そんな魔法を僕はこの女の子に使う。

 

 「そこをどかないなら仕方ない―――」

 「僕は女の子でも容赦はしないッ!!」

 

 拳に魔力を込める。

 

 「D-ブレイクッ―――!!」

 

 逃げないッ!!

 

 花は心にそう決めていた。

 

 守られてばかりなんてイヤだから―――

 

 クロはいつも私の代わりに闘ってくれている。

 

 クロが傷ついて倒れているなら少しでもクロの役に立ちたい。

 

 私が少しの時間稼ぎでもすることがクロの為になるならやるよ!!

 

 竜王を倒すほどのD-ブレイク―――

 

 村人程度の耐久力しかない花からしたら触れただけで致命傷となる。

 

 それなのに一切臆することなく、立ち向かっていた。

 

 「ッッッーーー!!」

 

 花は目を強く瞑り、心を無にしようとする。

 

 そんな絶体絶命の彼女の脳裏に浮かんだのは叔父の鍜治原だった。

 

 それは幼い頃の花の記憶。

 

 「花ァ~~~いいモノを見せてやる―――」

 

 「何~~~?」

 

 幼い花にそう云い、彼は自宅のバルコニーに花を呼び寄せる。

 

 鍜治原は天に手を掲げ、呪文を唱える。

 

 手の甲が光り、辺りを照らした。

 

 「わああぁーー!!」

 

 花は声を上げ、眩しさの中、咄嗟に目を閉じる。

 

 そして、次の瞬間、目を開くと、そこには満天の星空が広がる。

 

 「おじさん!!すごい!!」

 「どうやったの―――!?」

 

 花はテンションが上がり、鍜治原に尋ねる。

 

 「お前もいつかこれくらい出来るようになるさ―――」

 「なんてったって、俺達は・・・」

 

 そこから何て言ったのかあまり覚えていない。

 

 でも今なら分かる―――

 

 アレは召喚術。

 

 望おじちゃんにもできたなら、私だって出来る。

 

 花の手が光る。

 

 クロを呼んだ時と同じような感覚だ。

 

 どうか、この状況を変えてくれるような召喚獣来てッ!!

 

 「超召喚術スーパーサモンッ!!」

 

 

 花の周りに魔法陣が展開される。

 

 

 逆巻く炎を巻き上げ、生命の息吹を呼び覚ませッ!!

 

 

 「なっ―――!?」

 

 モブ山は思わず、攻撃を中断し後ろへ引いた。

 

 室内の温度が急激に上がり、窓ガラスが勢いよく割れる。

 

 

 「コレはまさか・・・」

 「不死鳥(フェニックス)!?」

 

 そう―――

 

 花が土壇場で呼び出したのは不死鳥(フェニックス)

 

 周囲を優しい炎で包み、モブ山を威圧する。

 

 「うぅ・・・僕が怖気づくとでも―――?」

 

 モブ山は足を強く踏み、不死鳥へと攻撃を仕掛ける。

 

 「キュエエエエーーーーっ!!」

 

 けたたましい咆哮と共に炎を巻き上げ、モブ山を攻撃する。

 

 「クッ・・・・!!」

 

 両手で防御し、後ろへ跳ねた。

 

 しかし、その反撃と共に不死鳥は魔法陣へと帰っていった。

 

 「えっ・・・!?」

 「これで終わり?」

 

 花は両目をパチパチと瞬きし、周囲を見渡す。

 

 クロを召喚した時と違い、すぐに召喚獣が戻ってしまった。

 

 どうしよう―――

 

 これじゃあ、あの人を止められない・・・・。

 

 また召喚獣を呼ぶ?

 

 いや、もう呼べそうにない。

 

 自分のことは何となく分かる。

 

 もうしばらく召喚獣を呼ぶ力は残っていない。

 

 「どうやらもう終わりみたいだね―――」

 

 モブ山は不敵な笑みを浮かべ、花に迫る。

 

 そんなモブ山が止まるくらいの威圧がその後方から出ていた。

 

 「驚いた―――」

 「もう立ち上がってきたのかい?」

 

 「しばらく寝ていたが、優しい炎のお陰で目が覚めたようだ。」

 

 クロが立ち上がってきた。

 

 モブ山は生唾を飲む。

 

 先ほどまでの感じから一変して、彼から殺意が迸っている。

 

 

 どうやら僕は起こらせてはいけない怪物を怒らせてしまったみたいだ。

 

 

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