第686話 【第二ゲート】召喚士 鈴谷 花 VS ダークヒーロー モブ山モブ太郎④
~アカデミー~
クロは驚いた表情を浮かべる。
自分の放つ《竜王鳴動》がモブ山に効いていなかったからだ。
コレがヤツのユニークスキルの影響?
そうとしか考えられない。
クロはさらに警戒心を強める。
「異次元の竜王―――」
「アンタは一体、どれだけの時を生きてきた?」
「きっと、悠久の時を何もせずダラダラと過ごしてきたんだろう―――」
モブ山の言う通り、クロは何万年という時間を圧倒的強者として君臨してきた。
それは退屈な日々―――
どんな外敵も自分の前で屈し、打ち砕いてきた。
だけど、それほど虚しいこともない。
頂点に立つこと等、何も楽しいことはない。
モブ山はそんなクロの心情を見透かしたようだった。
「・・・・・・・。」
クロは無言になる。
「僕は変わることを恐れない―――」
「変わるってのは成長するってことだ!!」
「僕はこの闘いでアンタを超えて、さらに成長する!!」
モブ山はクロに反撃を行う。
「D-ブレイクッ!!」
闘気を込めた拳をクロに当てる。
D-ブレイクは拳に込めた魔力の量で威力が変わる技。
さっきはダメージがなかった。
しかし、今度は違う。
「ッ―――!?」
攻撃痕がクロの衣服に残る。
さっきよりも攻撃の威力が上がった。
それも格段にだ。
しかし、それは1が10になったような感覚。
もし、クロが100だとしたら、まだまだモブ山の攻撃はクロの脅威にはなり得ない。
クロが目を疑ったのはその成長速度。
いきなり10倍近い、戦闘力を上げたことに驚いた。
さっきは手を抜いていた?
いや、それはない。
ということは、この火力は先ほどのユニークスキルの影響。
「驚いたみたいだね―――」
モブ山がそう云った。
「王道天界は簡単に言えば、主人公補正を得ることが出来るスキル。」
「まぁ、アンタに主人公補正といって通じるのかってのはあるけど。」
「自分が主人公であるからこそ、自分は何物にも負けない。」
「それが主人公補正だ―――」
「僕のユニークスキルはその主人公補正を付けてくれる。」
「もう誰にもモブキャラなんて言わせない。」
モブ山が自らの能力を説明する。
わざわざそんなことする必要はないのに、丁寧に教える。
それは主人公だからかもしれない。
そうやって心の余裕を見せつけることで相手から精神的アドバンテージを取りたいのだ。
だが、クロも百戦錬磨の竜王。
そんな小細工は意味を為さない。
「ねぇ、クロ?大丈夫?」
花は声を掛ける。
「・・・・・・・。」
しかし、耳に入っていないのか無言である。
「ねぇ!クロってば!!」
「花、もし我がやられてしまったら、その時は迷わず逃げてくれ。」
「クロ・・・!?」
まさかあれほど強いクロが敗けた時のことを話すなんて―――
花は驚いた。
同時にあのモブ山がそれだけ危険な相手だということだと悟った。
「ありがとう―――」
「異次元の竜王。」
「僕のことをそれだけの脅威として認めてくれたってことだね!!」
挑戦するということは素晴らしい。
生きる希望を与えてくれる。
異次元の竜王―――
アンタはその感動をいつから味わっていない?
いつまで死んだ状態になっていた?
そんなヤツにこの僕が負ける訳がないッ!!
「DD-ブレイクッ!!」
モブ山の打拳がクロを捉える。
ただ真っ直ぐ―――
武芸などクロもモブ山も知らない。
ただ自らの力を乗せた攻撃に過ぎない。
しかし、そんな危険な攻撃をただ喰らうはずが無い。
「覇王竜招来っ!!」
クロが天を指差す。
空から物凄い雷撃が落ちる。
モブ山の頭上にそれがブチ当たる。
「おぉぉぉおおぉぉーーーー!!!」
強烈な雷撃はどんな生物も殺し得る。
「お前を強敵と判断したからこそ、反撃を試みた。」
「この竜王に反撃をさせたのだ―――」
「誇っていいぞ!!」
「まだまだァァーーーー!!!」
雷撃を受けたはずのモブ山がそのままクロに攻撃を継続する。
「DD-ブレイク!!」
「何っ―――!?」
完全に意表を突いた一撃がクロを捉える。
D-ブレイクよりさらに強力なDD-ブレイク。
六魔将クラスの必殺技に匹敵するだろう。
さすがのクロも不意打ちによって吹き飛ぶ。
「どうだ!見たか!!」
「コレがボクの力だ!!」
「クロ・・・!!」