第678話 【第一ゲート】仕事の仕事人 六谷 五人 VS 詐取 祝呪②
~古びた教会~
人は何故労働をするのだろうか?
お金の為?
誰かに認められたいから?
自分を成長させる為?
社会貢献?
やりがい?
俺のこの質問に対する答えはどれでもないだ。
俺は労働することで"死に場所"を求めている。
人生というラットレースを抜け出す為の死に場所を求めているんだ。
いつかどこかで華々しく散ることを望んでいる。
でも、それは―――
今日ここでじゃないッ!!
俺はこの勝負に絶対勝つ!!
ここから生きて戻るッ!!
「魔導術式―――七の型!!」
「《ホーミングレーザー》!!」
六谷は大量の魔導式を展開する。
高速詠唱からの一斉射撃。
呪いのせいで弱体化しているとは言え、魔法に頼らざるを得ない。
一旦距離を取り、祝呪を攻撃する。
鋭く細いレーザー光線が四方八方より祝呪の身体を貫く。
「おぉっーーー!?」
そんな声を上げる祝呪。
完全に対応しきれていない。
「そのままハチの巣になれッ!!」
身体にいくつもの風穴を開けてもさっきと同じでヤツの生命力は低下を見せていない。
やはり、まずはヤツの不死身の謎を解かなければ勝利は無いか―――
六谷はそう思った。
不死身の者との戦闘も社の特殊プログラムで実習済みだ。
無条件で不死身を体現している者もいる―――
しかし、何かしらルールや条件があることで不死身を体現する者もいる。
祝呪は後者の方だと睨んでいる。
さっさとその条件を見極めないと。
六谷は6-シックス・ツールをさらに形態変化させる。
その形をトンファーに変える。
6-シックス・ツールは打撃、切断、刺突、魔法、射撃、変化の6つの特徴を持つ武器に変形できる。
トンファーは打に当たる武器だ。
グルングルン―――
六谷は慣れた手つきでトンファーを回転させる。
それを持って祝呪に殴り掛かる。
接近戦は危険だが、謎を探るにはコレがちょうどいい。
リスクを恐れていては先には進めない。
それを六谷はよく理解している。
「ぐふぅ!ぐふぅー!!」
まず六谷は祝呪の頬をトンファーで二回思いっきりぶん殴る。
祝呪は全く抵抗してこない。
その調子で何回もトンファーによる攻撃を続ける。
しかし、祝呪もやられっぱなしではない。
杖を構えて、詠唱に入る。
「祝いたまえ、呪いたまえ、壊したまえ、不幸えたまえ―――」
「呪いの領域」
呪いの波紋が広がる。
どうする?このまま一旦退くか?
六谷の脳裏にその選択肢は出てきた。
いや、それではさっきと何も変わらない。
眼の前の道を切り開くには勇気が必要。
このまま特攻を続ける。
この男―――、呪いの領域を展開したのに引かない?
祝呪は異常な六谷の行動に少し動揺する。
「おっと―――」
「今少し心が揺れたみたいっすね―――」
六谷が不敵な笑みを祝呪に向けた。
まるで心が読まれたようだ。
「うおおぉぉぉーー!!」
六谷のトンファーが祝呪の顔面を捉える。
「ッ―――!?」
痛いッ!!
祝呪はこの闘いで初めて痛みを感じた。
祝呪はそのまま大きく吹き飛ばされ、壁に衝突する。
このオイラが気圧された?
そんなバカな―――
「さぁ、さっさと立ち上がれよ―――」
「闘争をやろうぜ!!」
六谷が挑発している。
最後の一撃―――
間違いなく、祝呪に聞いていた。
ヤツの不死身の理由はそこに解くカギがありそうっすね。
恐らく、心に関する能力?
六谷が優勢に見える。
しかし、それは少し異なる。
六谷の身体は着実に呪いを受けている。
明らかにさっきより身体が重い。
正直、立っているのもやっとな状態だった。
しかし、闘うのは止めない。
なぜなら生きて帰るとみんなで誓いを立てたから。