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第669話 サミット③


~聖王国~

 

 アーサー王が到着した後、呼ばれるようにランジネット公国、オリエンシャルペイの両国の代表者もやってきた。

 

 ランジネット公国の頭首、アーバインが重たい顔で聖王国の門を通る。

 

 「先日は撤退を余儀なくされたが、私はまだあの時のことを・・・。」

 

 「もう止めましょうよ―――」

 「今は争っている時ではありませんよ。」

 

 御付きの侍女がアーバインを制止する。

 

 アーバインはまだ聖王国との一件のことを根に持っているようだ。

 

 聖王国に攻撃を仕掛けようとしたところ、円能寺や十二天使達に阻止された。

 

 詳細は一部の者しか知らされていないが、かなり手酷くやられてしまったと言った所だ。

 

 しかし、世界中の要人達が集まっているということは下手なことはできない。

 

 今回は大人しくしていようと決めた。

 

 それにシンの脅威に関しては、公国としても対処しなければならない。

 

 何せ世界の命運が掛かっている事態だ。

 

 だから、仕方なく聖王国の一件は飲み込むことにはしていたが、それでも顔や言動には多少出てしまう。

 

 「グググ・・・!!」

 

 「全く困ったお人だ―――」

 

 アーバインの侍女は軽いため息を吐く。

 

 そんな一方で、オリエンシャルペイの代表者も聖王国へ足を踏み入れていた。

 

 礼装という名の着物に身を包む戦闘集団『サムライ』。

 

 刀を扱う戦闘のプロ。

 

 そんな男共を後ろに綺麗に着飾った乙女が真ん中を歩く。

 

 「姫様、そんなに前に出られては危険です。」

 

 老中『紫藤 晴久』が慌てて駆け出す。

 

 オリエンシャルペイの代表者は齢16歳の少女―――

 

 名前を『小春 胡蝶』。

 

 小春姫と呼ばれることが多い。

 

 「じい!我が国の代表者は誰ですか!?」

 

 「それは・・・姫様です。」

 

 「であれば、率先して前に進むのは私になります。」

 「危険と臆して前に進まない指導者に誰も付いてきません。」

 

 小春姫は16歳にしてしっかりとした意思を持った女の子。

 

 そんな彼女とすれ違う()武士―――

 

 「ッ―――!?」

 

 青白い肌に和服、懐には2本の刀を携えている。

 

 ジャハンナムの一人ベリヤ=ラブレン。

 

 すれ違いざま、彼は眼を丸くして言葉を失う。

 

 「そ・・・んな―――」

 「あるはずがない・・・・!?」

 

 老中『紫藤 晴久』も彼とすれ違った際にあること疑問を抱いた。

 

 何故、この聖王国に侍がいるのかと―――

 

 しかも、あの肌色、気配からして魔族。

 

 そんな気付きもあったが、今大切なのはサミットの参加。

 

 そちらの対応を優先する為、そのまま素通りした。

 

 するつもりだった―――

 

 ベリヤがそれを許容するならば―――

 

 

 

 「もう一度貴方にお会いできるなんて思いもよらなかったでござるッタ!!!」

 

 

 ベリヤが小春姫の前で跪き、目を輝かせていた。

 

 「ど、どなたですか―――っ!?」

 

 小春姫は驚き、困惑の表情を浮かべる。

 

 周りの侍達も懐の刀剣に手を掛ける。

 

 不審者の接近に危険を感じて。

 

 「拙者名前をベリヤ=ラブレンと申します。」

 「元オリエンシャルペイの侍でござる!!」

 

 丁寧な自己紹介。

 

 真剣な眼差し。

 

 ベリヤは当時助けられなかった姫を思い起こし、言葉を口に出す。

 

 王家の血が途絶えたと思っていたのに―――

 

 間違いなく、この眼の前の小春姫は当時の王家の血を引いている。

 

 「曲者ッ!!」

 

 周りの侍がベリヤに斬り掛かろうとしたところ、小春姫が止める制止する。

 

 「貴方が何者か私には分かりかねますが―――」

 「私達は今、急いでいます。」

 「そこをどいてはくれませんか?」

 

 凛とした声でベリヤにそう云った。

 

 急いでいるのは事実。

 

 今、ベリヤと語り合っている時間はない。

 

 「し、承知いたしました・・・でござる。」

 

 震える声でベリヤは立ち上がり、ゆっくりと横にどいた。

 

 「ありがとうございます。」

 小春姫は一礼し、再び歩き出した。

 

 冷たい言葉を掛けられたがベリヤの気持ちは幸せでいっぱいだった。

 

 まさか途絶えたと思った王家の血が未だ脈々と生き続けていたのだから。

 

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