第663話 世界各地③
~クロヴィス~
シンの発動した混沌世界は世界をゆっくりと飲み込む。
次元と次元の境界を融かしていく。
クロヴィスでも獣人たちが不安の顔を浮かべていた。
しかし、彼らにはどうすることもできない。
天から太陽が視えなくなり、薄暗くなったとしても彼らはもはや祈ることしか出来ない。
その不安を拭うかのように自然と彼らの両手は合わせて、天に祈りを捧げていた。
「リオンは無事なのだろうか―――」
王様は娘であるリオンのことを心配していた。
「私達の娘ですよ―――」
「無事なハズです。」
「信じて帰りを待ちましょう。」
妃が王様にそう云った。
皆が一様に空を眺めて、世界の行く末を見守る。
~聖王国~
聖王国もクロヴィスとほとんど同じような状態だった。
相手は世界を変えてしまう程の相手。
まさにそれは神の所業。
自分達が叶うはずがない。
宗教色の強いこの国は幼い頃からそう教え込まれてきた。
だからほとんどの者は騒ぐことはしなかった。
しかし、国王であるウィルだけは違った。
どんな時も希望を捨てなかった。
彼は真っ暗な穴底にいても小さな希望の光があると信じているからだ。
自分があのボトムズから帰還した時のように。
信じて行動すればきっと道は切り拓けると。
指をくわえてただ待っているだけなんてしたくなかった。
最後の最後まで足掻いて、喰らいつきたかった。
「ウィリアム王!!」
「外は危険です!!」
「魔王軍の奴等、この世界を滅ぼす気です!!」
心配したアルマンがウィルに声を掛けた。
「アルマン―――」
「僕は最後の最後まで決して諦めない!!」
「もし、世界中の誰もが諦めたとしても僕だけは抗ってみせる!!」
「だから、お前にも力を貸してほしい。」
「ウィリアム王・・・・!?」
ウィルの真っ直ぐすぎる瞳がアルマンを見つめる。
どうにも熱くなる。
この人を見ていると―――
アルマンはそう思った。
「自分も相当、頑固で真っ直ぐに生きてきたつもりでしたが、貴方も相当な御方だ。」
アルマンは頭をボリボリと掻いた。
自分はもしかしたらその言葉を待っていたのかもしれない。
アルマンは背中からブルっとした。
気付いたら全身に鳥肌が立つ。
武者震いというヤツだ。
「分かりました。」
「このアルマン―――」
「最後まで貴方に仕えましょうッ!!」
アルマンは笑顔で答えた。