第652話 天童 進 超回復ッッ!!
~ガラドミア 上空~
ナブラと対峙する天童 真。
鬼人族―――、いやこの風貌。
聞いたことがある。
『デルタ・カラミティ』の伝説に登場する鬼神ナブラ。
三つ目の鬼で、その三つ目が逆三角形になっていたと聞く。
ガラドミアの結界を簡単に打ち破る怪腕―――
コイツがそのナブラと見て間違いない。
「おまえが壊れないおもちゃかみてやる!!」
ナブラの巨腕が真に迫る。
真は童子切を抜いたッ―――!!
「天童流剣術:半月!!」
ナブラの胴体を横に一閃。
通常の人間ならここで絶命する。
しかし、ナブラの外皮は恐ろしく硬い。
血は吹き出すが、生命を脅かすほどではない。
「またその剣技かァ!!」
天童流剣術を知っている?シンの技を見たのか。
「こいつは少しは楽しめそうだァ!!」
ニタリと笑みを浮かべるナブラ。
「貴方がナブラね!!」
真の後ろからベロニカ達も追いついた。
クロは元の巨大な竜の姿に戻っている。
「ベロニカの姉ちゃん!」
「アイツのこと知ってんのか!?」
新がベロニカに尋ねる。
「アイツが赤目を殺した。」
「赤目?」
赤目は静寂の暗殺者 終焉の舞によって、これまで自分がいたという記憶、存在を消した。
しかし、記憶が消えなかった例外もある。
それが魔導大全と融合したベロニカ、そして赤目と男女の契りを交わした百鬼。
そして、この天童 真もその一人である。
ベロニカの言葉は真の耳にも入る。
赤目を殺した張本人がここにいる。
言葉にはしないが、その内面は静かな怒りを宿す。
「貴様が赤目を殺した?」
「赤目?誰のことだァ!?」
「おれはいちいち壊したおもちゃのことは覚えてねェーンだ!!」
「そうか―――」
「安心した、貴様を殺すのに何も躊躇する必要がなさそうだ。」
「そんなことを出来る人間がいるなら連れて来いよォ!!」
ナブラは振り返り、真に殴り掛かろうとする。
「ッーーー!?」
そんなナブラにカウンターの切り返しを行う。
「天童流剣術:雨月!!」
刺突による連撃。ナブラの眼球を狙う。
「ぐおおおぉぉぉーーー!!」
生物である以上、ナブラにとっても眼球は急所である。
しかし、このナブラの回復力は異常。
大抵の傷は瞬く間に自動で治癒してしまう。
そんなナブラに容赦のない追撃を行う。
「天童流剣術:朧月!!」
身体を縦にまっすぐとナブラを斬りつける。
「まだ浅いか―――」
斬ってはいるが、やはりこのナブラ外皮が恐ろしく硬い。
それに異常な速度の自動治癒。
既に潰した眼球は元に戻りかけている。
深手を負わすに至らない。
ここからナブラの反撃が始まる。
急加速してきた。
左腕から繰り出すパンチが大気を震わす。
真は刀身で受け止めるが、大幅に後退させられた。
スゥ―――!!
真の口からタラリと血が流れる。
完璧な受け方をしてもこのダメージ。
あの速度と力、私を遥かに超えている。
これは確かに厄介な相手だな―――
◆◆◆
「進様、調子はどうですか?」
徳川が椅子に座っている進に話し掛ける。
「進ちゃんは大丈夫なの?」
「未央、徳川―――」
「オレは問題ない。」
「寧ろ、これまでにないってくらい調子がいい。」
身体から湯気が噴き出している。
基礎代謝がとてつもなく活発化しているのだろう。
ここに来て、衰弱しきっていた身体が膨大なエネルギーを得たことで超回復を果たしていた。
「素晴らしいです―――」
「復活ですッッ!!!」
「天童 進様 復活ッ―――!!」
「天童 進様 復活ッ―――!!」
「天童 進様 復活ッ―――!!」
徳川が嬉しそうにそう云った。
「徳川、ありがとう。」
進は徳川に笑みを向けた。
「もう大丈夫なの?」
未央が進に尋ねる。
「あぁ―――」
「父さんたちの元へ急ごう。」
「ここに攻めてきたという刺客が気になる。」