第651話 天童 進 喰らうッッ!!
~ガラドミア~
オレは帰ってきた。
「みんな―――」
「ただいま。」
オレは帰ってきた。
オレは帰って来たんだ!!
この世界に。
確かに闘いばかりかもしれない・・・けど、そこに守りたいものがある。
だから、もう一度立ち上がる。
進のことを仲間は迎え、受け入れる。
未央達は数時間前にガラドミア遠征組に合流した。
「徳川―――」
「進に食事の用意をしてやれ。」
真は徳川に命じた。
進はこの数ヶ月、まともな食事を取っていない。
進と言えどもその肉体は限界まで衰弱していた。
「ハッ、そう云うと思いまして、食事の用意はこちらにしております。」
徳川の後ろのテーブルにいっぱいの豪華な食事が並べられている。
進はテーブルに着き、まずはゆっくりとスープに手を付ける。
ズズっ―――!
「美味ッ―――!!」
スープを皮切りに次々に料理へ手を付ける。
進の空腹が限界と云うのもあるが、料理はどれも絶品だ。
パン、米、肉、魚、野菜―――
和、洋、中華が並ぶ。
「フフ・・・そうでしょう。」
「私、特製の料理ですから。」
徳川が得意げに話す。
徳川は基本、どんなことでも出来る万能な男。
料理もお手の物である。
そんな料理を食べている中、異変は起こる。
ゴゴゴゴゴゴゴっ―――!!
グラグラと宮廷内が揺れる。
「な、なんだ!?」
新が驚いた表情で辺りを見渡す。
突然、大きな地震が発生したようだ。
そして、セルフィが険しい顔で口を開く。
「緊急事態じゃ―――」
「何者かがこのガラドミアの結界を破って来おった。」
「我の結界を破る等、とてつもない怪物じゃ―――」
「やはり、来たか―――」
真はそう云うと、童子切を握り、外へ出ようとする。
「一体、何が来たっていうの!?」
キルが真に聞いた。
「シンの手の者に決まっている。」
「ヤツは私と進が手を組むことを一番に警戒している。」
「その前に厄介な私を消すつもりなのだろう。」
「では、私もご一緒いたします。」
徳川が真に付いていこうとするが、真は首を横に振る。
「徳川―――」
「貴様には進を任せる。」
「ハッ・・・!!」
徳川は一礼をする。
しかし、この時妙な胸騒ぎを覚える。
「社長、どうかご無事で。」
こんなこと、本来言う相手を間違っている。
天童 真は無敵で絶対。
そのことを誰よりも一番信じている徳川。
それなのにそんな言葉が出てしまったことに驚く。
「・・・・・もし、私の身に万が一があった場合、息子を頼む。」
真も徳川が感じているその嫌な胸騒ぎは感じていた。
今、ここに自分を消しに来た刺客は恐らく、かなりの強敵。
そうでなければ、シンは敵陣の本陣であるここに送り込んでこない。
それなりの勝算があるから仕掛けてきた。
「待てよ・・・俺達も行くぜ!!」
新やキル、リオン達も真に付いていこうとする。
このガラドミアを攻め込んでいるということはまたエルフ達が犠牲になるかもしれない。
民の避難も考えたら人手が足りないからだ。
「・・・・勝手にするがいい。」
真は堂々と、ガラドミアに攻め込んできた敵に向かう。
「私は進ちゃんといるね。」
未央は別だった。
どうも進のことが心配だったようで、新達とは一緒に行かない。
「未央はここで天童を見てて。」
花は未央の肩を叩き、真剣な眼で見ていた。
「うんっ!!」
部屋に残ったのは進と未央、そして徳川の3人。
進はひたすら料理を口に入れる。
まるで本能に従うように―――
己の肉体をここまで衰弱させたものを排除するように。
◆ガラドミア上空◆
「貴様が私を殺しに来た刺客か―――」
「おまえはおれと遊んでくれるか?」
三つ目の鬼『ナブラ』―――
鬼神 ナブラ。
あの赤目を簡単に虐殺した災厄の鬼。
それが今度は真の命を刈り取る刺客として前に立つ。
「遊ぶだと・・・?」
「いいだろう、この天童 真と遊びたいなら掛かって来いッ!!」
「相手になってやろう―――」
◆◆◆
「はぁ―――、全て平らげた。」
身体が悦んでいるのが分かる。
進は手の平を握ったり、開いたりして調子を確認する。
「もう、平らげましたか―――」
「徳川・・・。」
「それではデザートです。」
そう云うと徳川はバケツ一杯に入った水を出す。
「これは?」
「ただの水です。」
「??」
進と未央は徳川が何をしたいのか分からなかった。
「そして、これに加えます。」
徳川は謎の壺を取り出し、その中に入っていた物をバケツに入れる。
サァ――!!
さらさらの粉は水に溶けていく。
「これは・・・?」
「果糖です。」
「砂糖水ということか。」
この砂糖水でエネルギー補給をしろということらしい。
「昔、漫画で衰弱しきった者が大量の砂糖水で復活するというものを見ましてね。」
「それを参考にしてみました。」
そう云いながら、徳川は素手でバケツをかき混ぜる。
これを飲めってことか・・・。
ゴクリ・・・!!
進は眼の前に差し出されたバケツに手を付ける。
そして、勢いよくゴクゴクと飲み続ける。
身体が自然と水分と糖分を求める。
吸い込まれるように身体が吸収する。
不思議な気分だ―――
オレの身体は回復に向かっている。
そう思いながら、進はバケツ一杯の砂糖水を飲み続けた。




