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第650話 天童 進 復活ッッ!!



 そこはずっと静かな空間。

 

 誰一人いない、空白の空間―――

 

 そこにポツンと置かれた椅子に座る天童 進。

 

 ここは進の意識の中。

 

 既に肉体とは完全に分離した意識。

 

 オレはやっと闘いから解放されて楽になった。

 

 ここでオレはオレの肉体が消滅するまで、存在し続けるのかもしれない。

 

 まぁ、それも悪くないかなんて思っていたりする。

 

 みんな元気かな―――?

 

 って、そんなこと考えるくらいにはまだ未練はあるみたいだ。

 

 もう終わりだって、決めたはずなのに・・・。

 

 ははは・・・おかしな話だぜ。

 

 進は虚ろな眼でぼんやりと前を見ていた。

 

 そんな進の前に一人の男が出現する。

 

 こんな所に誰かが来るなんてあり得ないのに。

 

 「ここにいたのか―――?」

 

 「・・・父・・・さんっ!?」

 「な・・・何で、ここにっ!?」

 

 進は驚いた表情を見せる。

 

 既に自分は闘争というものから切り離されたと思っていたからだ。

 

 「息子よ―――」

 「シンを滅ぼす―――!!」

 「その為に力を貸せッ!!」

 

 父さんはいつも上から目線で物を言う。

 

 まるで自分が絶対に正しいと心の底から信じているように。

 

 でも、それが父さんなんだ。

 

 「父さん・・・オレはもう闘えない。」

 「闘いたくても闘えないんだ。」

 「見てみなよ―――」

 「ここには何もない。」

 「"空っぽ"なんだ。」

 

 進の意識の中は既に何もない。

 

 自分のこれまでの人生の記憶がない。

 

 「フッ・・・それは貴様の思い込みだ。」

 「ならば何故、この私が貴様の父親だと分かった。」

 

 「それは・・・確かになんでだろう。」

 

 「さっき、もう闘えないと云ったな―――」

 「しかし、本当にそれでいいのか?」

 「何かを守りないのなら闘って勝つ以外にそれらを守る術は存在しない。」

 「闘争から逃げるような軟弱な育て方をした覚えはないぞ。」

 

 真が手を差し出す。

 

 あぁ―――

 

 何だろう―――

 

 とても懐かしいよ。

 

 昔、よく父さんと手合わせをした時にオレが倒れたらいつもその手を差し出してくれていた。

 

 その不敵な表情で。

 

 当時のオレはそれがたまらなく恐かったんだ。

 

 何でこの人はこうも圧倒的なんだって―――

 

 でも今はそれが誇らしい。

 

 「父さん―――、なんだか不思議な感じだ。」

 「オレ―――、思い出してきてる。」

 「子どもの時のこと、母さんのこと、父さんのこと、未央のこと、みんなこと!」

 

 「あぁ、今―――」

 「私のダウンロード&インストールでこの世界に刻み込まれた貴様の記憶を流し込んでいる。」

 「直に元に戻るだろう。」

 

 「父さん・・・!!」

 

 進は自然と真の手を握っていた。

 

 その手は何だか温かいと感じてしまった。

 

 昔はあんなにも冷たかったのに。不思議な気分だ。

 

 「父さん―――」

 「父さんはアレから変わったの?」

 

 進はあの聖王国での一件で真に勝ったことを話す。

 

 天童 真に勝利した。

 

 父さんの絶対の自信は自分が絶対に負けたことが無いことから来るものだ。

 

 だから敗北したという事実が父さんを変えた?

 

 いや、父親が変わるとしたら、そこしかない。

 

 「・・・そうかもしれんな。」

 「世の中は結果が全て―――」

 「そう云い続けてきたのは他でもない私自身。」

 「人生で初めて敗者になって気付いたこともある。」

 「その負けた相手が外ならぬ自分の息子だと云うのもあるのかもしれない。」

 

 「やっぱりそうなんだね―――」

 

 「フン、下らないことを言ってしまったな。」

 「話を戻そう―――」

 「状況は思った以上に深刻だ。」

 「シンの元に二つの凶星が揃ってしまい、さらにナブラという鬼神が蘇ったようだ。」

 「ヤツ等本格的に全時空の融合を始めようとしている。」

 

 「それがシンの目的?」

 

 「そうだ―――」

 「全時空を融合して、全てを不幸にする。」

 「それがヤツの目的。」

 

 「何でそんなことを―――」

 「それに協力しているヤツだっているんでしょ?」

 「父さんだって、元々は協力してたんだろ?」

 

 「確かに私はかつて、ヤツの力を借りた。」

 「力を得る為に契約した―――」

 「語るだけの理想に意味などないからな―――」

 「しかし、その契約も果たした。」

 「それにヤツは一つだけ約束を違えようとしている。」

 「私達が暮らしていた現実世界―――」

 「そこすら融合させようとしていることに気付いたのだ。」

 「だから、私はヤツを滅ぼすことに決めた。」

 

 父さんとここで話して大体の事情は分かった。

 

 もしかしたらお互い回り道をしていたのかもしれない。

 

 親子共々、自分の理想を現実にする為、まっすぐ進んできたつもりなのに、どこかで歯車が狂ってしまった。

 

 そんな気がするんだ―――

 

 スゥゥ―――!!

 

 進の身体が光に包まれる。

 

 こうしている間にもオレは記憶を取り戻していた。

 

 あぁ、全部思い出したよ。

 

 もう闘うことなんてないと思ってたのに、オレはもう少し闘う必要があるみたいだ。

 

 こうして、進の精神は意識の世界から己の肉体に戻った。

 

 パチリと進の眼が見開いた。

 

 「天童ォーーー!!」

 

 新が泣きながら抱き着いた。力が少し強い。

 

 「やっと、戻ったようだな―――」

 少し、汗を掻いた父さんがいる。

 

 いや、父さんだけじゃない。

 

 気づいたら目の前にみんながいた。

 

 「進っ!!」

 リオンがほっぺを赤くして泣いてる。

 

 「フンっ!帰って来るのが遅いの!!」

 キルが腕組みをしてそっぽを向きながらそう云った。少し照れているのだろう。

 

 「ススム君―――」

 「本当に良かった!!」

 フラムさん、あぁいい顔している。

 

 そうか、仲間の仇を取ったんだ。

 

 「天童!!天童!!」

 花も泣きながら名前を呼んでいる。

 

 あれ?

 

 なんでこの世界に花がいるんだ―――?

 

 進は疑問に思ったが、オレ達と同じだろうと察する。

 

 そして、その隣に鏡花。

 

 結局、オカ研のみんなが揃ったってことか―――

 

 知らない顔もちらほらいるが―――

 

 

 

 やっぱり、君に一番に会いたかった。

 

 進は座っていた車椅子から立ち上がり、歩き出す。

 

 

 

 

 「進ちゃん―――」

 「おかえりっ!!」

 

 

 「未央、ただいま!」

 

 

 未央が笑顔で進を迎えてくれた。

 

 

 彼女はきっとオレが戻って来ることを信じていたんだろう。

 

 そういう人なんだ。

 

 そんな未央に出会えたことがオレは一番の幸せだ。


 こうして、天童 進は完全に復活を遂げる。

 

 

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