表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
635/779

第635話 【待機&防衛組】工作を交錯させて


~王都 教会本部~

 

 未央が四元から戻って来るより前―――

 

 「何っ!?」

 「シーオス司祭殿がお戻りになられただとッ!?」

 「しかも手負いの状態とは真か?」

 

 日が昇ってそれほど経過していない今。

 

 突然、シーオスだけが公国から帰還したとの知らせが教会内に広まる。

 

 しかも腹部を斬られており、重症とのことらしい。

 

 急ぎ、救護班が駆り出され、シーオスの治療が始まった。

 

 報せは王宮にもすぐに広まり、シーオス達の身を案じたウィルが教会を訪れていた。

 

 「未央さんは!?」

 「未央さんはいられないのか!?」

 

 ウィルは大きな声で未央の名を発していたが未央の姿を見た者は誰一人いない。

 

 「どうしたというのか?」

 「まさか公国で何かあったのか?」

 

 「それが分かりません・・・。」

 

 従者は答える―――

 

 ウィルはそれで納得しない。

 

 すぐにシーオスがいる部屋へ強引に押し入る。

 

 「シーオス司祭!!」

 「一体何があったのですか!?」

 

 「ウィリアム様―――」

 「これはお見苦しいところをお見せしてしまいました。」

 

 腹部にはグルグルに巻かれた包帯―――真っ白な包帯に真っ赤な血が浮き出ている。

 

 そのことからかなりの深手を受けているようだ。

 

 「一体、何が有ったのです?」

 「未央さんは一体どこに?」

 

 「実はですね・・・」

 

 シーオスの口から語られることをウィルはにわかに信じられないでいた。

 

 その内容は未央が反旗を翻し、いきなりシーオスを襲ったのだという。

 

 そして、自分は傷を負い、命からがらここまで逃げてきたのだと。

 

 「そんなことが・・・。」

 

 ウィルも未央のことを知っているが故にそれが真実だと思わなかったが、それでも司祭がそんなことを言うだろうか。

 

 疑心暗鬼になる。

 

 「それが真実かどうか―――」

 「やはり、当の未央さんから聞いてみないと―――」

 

 使いを出して、未央の捜索に当たらせようとした。

 

 「ぎゃあああーーー!!!」

 

 しかし、その時、館内に悲鳴が聞こえた―――

 

 「た、大変です!!」

 「魔族が複数人、ここに襲撃してきました!!」

 

 「何だとッ―――!!」

 

 伝令役の者がそう云った時、シーオスの口角が上がった。

 

 しかし、そのことに誰も気づかない。

 

~ランジネット公国 アーバインの屋敷~

 

 ウィルとシーオスが話している時を同じくして。

 

 ランジネット公国 アーバインの屋敷。

 

 「アーバイン様!!」

 「昨日訪れた聖王国からの使者の方がお会いしたと申しております!!」

 

 「通してやれ。」

 

 アーバインは何事かと眉を潜める。

 

 そこに現れたのはシーオス司祭。

 

 大怪我をしているようだ。

 

 「アーバイン様―――」

 「大変でございます。」

 

 「どうしたのだ。」

 「シーオス司祭殿。」

 

 「あの未央という少女―――」

 「やはり、魔族の男と内通しておりました。」

 

 

 「何だとっ!?」

 「それは真か!!」

 

 

 「私がそのことに気付くと、襲ってきたのです。」

 「その際、崖から落ちてこの様でございます。」

 

 「それは大事であったな―――」

 

 「一刻も早くアーバイン様にこのことをお伝えしなければと思い、ここへ馳せ参じました。」

 

 「聖王国をお助け下さい。」

 「魔族は既に聖王国を手中へ収めつつあります!!」

 

 シーオスは泣いて懇願した。

 

 アーバインはその涙を見て、覚悟を決める。

 

 一国が邪悪な魔族に支配されかかっている。

 

 それを救うという大義名分はこちらにある。

 

 すぐに周辺国へ援軍を求めるように使いを出す。

 

 「安心しなされ―――」

 「正義は我々にあります。」

 

 アーバインは泣き崩れるシーオスの肩を優しく掴む。

 

 シーオスは俯き、小さく頷いた。

 

 しかし、その時、シーオスは笑みを浮かべていた。

 

 その表情は誰にも見えない。

 

 誰も気づいてはいない。

 

 シーオスだけは感じていた―――

 

  全ては自分の思い通りだと。

 

 

~王都 聖ミラルド~

 

 「そろそろボクの出番だね―――」

 

 グレガーは嫌な気配に気づき、動き出す。

 

 今こそ、自分が動くときであると直感した。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ