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第628話 【待機&防衛組】並行世界①


~国境付近の村 ライム~

 

 「結局、一人で勝ってしまったという訳か―――」

 

 アンジェは改めて未央の力に驚愕する。

 

 もし自分が未央と闘っても傷つけることは出来ないだろう。

 

 それほどまでに圧倒的な戦闘力の差。

 

 それをこんな少女が有しているという事実。

 

 「これが貴方の正しさなの?」

 

 未央はアルにそう問い掛ける。

 

 力が強き者が弱き者から全てを奪う―――

 

 それが正しい訳がない。

 

 もしそう云うのならそれは更なる力を持つ者が同じことをしても文句を言えない。

 

 だから未央はアルを圧倒した。

 

 完膚なきまでに―――

 

 既にアルの生殺与奪は握っているのは未央。

 

 「グゥ・・・!?」

 アルはこれでもかと悔しそうな表情を浮かべる。

 

 多少の抵抗も試みるが、全て未央によってリジェクトされる。

 

 半端な攻撃は未央に通用しない。

 

 「貴方を侯爵様の所に連れて行って罪を償ってもらう―――」

 

 ここで俺は終わる?

 

 「そんなこと・・・」

 「そんなことを俺は認めんぞォォォーーー!!」

 

 手に作り出した全身全霊の炎を未央へ向けて放った。

 

 しかし、それも無駄―――

 

 「残念だけど、貴方の攻撃じゃ私は倒せないよ―――」

 「少し貴方には大人しくしてもらうしかないね。」

 「黒魔法:黒の吸収(ブラックアブソーブ)!!」

 

 未央はアルから体力と魔力を吸収する。

 

 「グオオオォォーーー!!」

 

 これ以上立ち向かうことが出来ないくらいまでに消耗させた。

 

 ぐったりとするアル。

 

 もはや抵抗する力は残っていない。

 

 そんなアルに未央は語り掛けた。

 

 「さて―――」

 「聞かせてもらうよ―――」

 「なんで貴方はこの辺りの村を襲ったの?」

 

 初めに聞いた時は弱者だからと云っていたが、そんなのは本当の理由じゃない。

 

 ここまでやったんだ―――

 

 それなりの理由があるはず。

 

 「・・・・・・ある男にそうしろと命令された。」

 

 「ある男?」

 

 アルは村を襲った理由を話し始める。

 

 「元々、俺はこことは違う別の世界―――」

 「並行世界からやってきた。」

 

 並行世界?

 

 それじゃあ、この人は私と同じ・・・異世界人ってこと?

 

 未央は彼が魔族でありながら、魔王のことを知らなかった理由を悟る。

 

 「並行世界ってどんなところなの?」

 

 「地獄さ―――」

 

 「えっ・・・?」

 

 「正確には緑豊かな大地、賑わう町々、多種多様な種族が共存する世界だった。」

 「だが、それが一変―――」

 「ある男の手によって地獄に変わった―――」

 

 「ある男?」

 

 「そうだ―――」

 「ヤツは俺の世界を壊し、生き残った俺達に命じた―――」

 「『生き残りたければ自分の指示に従え』と―――」

 

 「ヒドイ・・・!」

 

 「ヤツの命令でこの世界に来た俺達(・・)はここの辺りの村々を襲った―――」

 

 「ちょっと待って―――」

 「俺達ってことは他にもいるってこと?」

 

 「・・・・・そうだ。」

 「四元の戦士は俺を含めて4人―――」

 「向こうの世界の精鋭だ。」

 

 「だが、俺でこの様だ―――」

 「誰もアンタには勝てないだろう。」

 

 「それでその3人はどこにいるの・・・?」

 

 未央はそう問いかけた。

 

  "余が出るまでもなかったな―――"

 

 アリスが未央の戦闘を見てそう云った。

 

 その瞬間、アリスがここに来るまでに感じていたイヤな予感が最高潮になった。

 

  "―――っ!?"

 

 「3人は・・・」

 

 アルが未央の問いに答えようとしたその時だった。

 

 一筋の閃光がアルの心臓を貫いた。

 

 「ぐうっ・・・!?」

 

 ドサッ―――!!

 

 「うぅ・・・そうか―――」

 「アンタ・・・・ここにいたのか!?」

 

 そう言い残すと、アルは白目を向いてそのまま息絶えた。

 

 

 未央は突然の出来事に驚いたが、すぐにその閃光の放たれた元へ振り向く。

 

 一体誰がアルの命を奪ったのか確認する為。

 

 「キャアアアァァーーー!!」

 

 「アンジェさん!!」

 

 アンジェが物凄いパワーで吹き飛ばされた。

 

 不意打ちだったのだろう―――

 

 そのまま意識を失う。

 

 「何で貴方が・・・!!」

 

 「シーオス司祭!?」

 

 

 「フフフ・・・これ以上余計なことを吹き込まれるのも嫌でしたのでねェ―――」

 「そちらの方には退場して頂きました。」

 

 コレがあの人格者の顔?

 

 あの穏やかで優しい司祭はどこへ?

 

 その時のシーオス司祭の顔はまるで別人だった。

 

 「貴方が黒幕だったんだね―――」

 

 未央はそう云った。

 

  "未央―――、気を付けろ!奴は危険だ!!"

 

 アリスのイヤな予感の正体はシーオス司祭の存在だった。

 

 立ち込める不穏な気配。

 

 「私はこの時を待っていました―――」

 シーオス司祭はそう口にした。

 

 

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