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第621話 【待機&防衛組】愚直


 あの日、アラタに敗けた日―――

 

 生まれて初めて心が晴れやかになった。

 

 ずっと、暗闇にいたボクをアラタが変えてくれた。

 

 崩れ行くボトムズ―――、一度は落とした命を誰かに救われた。

 

 気が付くと、地上にいた。

 

 「貴方は―――?」

 

 ボクはそこにいた人に助けられた。

 

 一緒に来ませんか―――?

 

 あの人はそう云って、手を差し伸べてきた。

 

 分かっている。

 

 この人はボクの力を利用したいだけなんだと。

 

 それでも他に行く当てなんてなかったボクはその手を掴んだ。

 

 アラタ―――

 

 ボクはね―――

 

 誰かを助けられる人間になりたい。

 

 ボクにはボクにしか出来ないことがある。

 

 そうやって、誰かの役に立ちたいんだ。

 

 以前のボクだったらこんなこと絶対に思ったりしなかったんだろうな。

 

~王都 聖ミラルド 裏通り~

 

 白金の剣同士が交わる。

 

 「どうしたーーー!?」

 「そんなものかッ!!」

 

 「ウッ―――!?」

 

 膝を地に着くグレガー。

 

 アルマン VS グレガー。

 

 開幕アルマンが優勢。

 

 まともに二人が闘った場合、グレガーに勝ち目はほぼない。

 

 鍛え抜かれたアルマンの剛剣を耐える程の胆力はグレガーにない。

 

 「ユニークスキル:超重力場グラビティフィールド!!」

 

 ゴオオオォォーーー!!

 

 轟音と共にアルマンの周囲の重力が何倍にも跳ね上がる。

 

 アルマンのユニークスキル超重力場グラビティフィールドは重力を操る能力。

 

 グレガーは地にへばりつき、身動きが取れない。

 

 「グレガー!」

 「所詮貴様はこの程度だッ!!」

 

 アルマン、やっぱり君はスゴイ奴だ。

 

 ボクじゃ手も足も出ない―――

 

 「さぁ、吐いてもらおうか―――」

 「あの事件の犯人は一体誰だ!!」

 

 でもね―――

 

 手も足も出せなくても"口"は出せるんだよ。

 

 「爆ぜろ!!」

 

 グレガーはそう云うと、グレガーの周囲が爆発する。

 

 「ッ―――!?」

 

 言騙し打ち―――

 

 グレガーのユニークスキル言騙し打ち。

 

 言葉に力を持たせて現実のものとする能力。

 

 アルマンの周囲に爆風が巻き起こる。

 

 ヤツはどこだ?

 

 視界からグレガーが消えた。

 

 アルマンは神経を集中する。

 

 「そこだッ!!」

 

 背後からの一刀をアルマンは剣で防御(ガード)する。

 

 ガッ―――!!

 

 両者の剣が火花を散らす。

 

 「ずる賢い貴様のことだ!!」

 「不意打ちを仕掛けてくることは目に見えている!!」

 

 アルマンは剣を滑らせ、グレガーの肩を貫く。

 

 「ぐああぁーー!!」

 

 グレガーは大げさに苦痛の声を上げる。

 

 痛みには慣れている。

 

 この程度の痛み、問題ではない―――

 

 しかし、グレガーには一瞬考える猶予が必要だった。

 

 

 こうして声を上げれば、アルマンのことだ。

 

 攻撃の手を少し緩める。

 

 その一瞬が欲しかった。

 

 「コレで終わりだ!!」

 「超重力場グラビティフィールド!!」

 

 再び、アルマンが超重力を展開しようとしたその瞬間―――

 

 「ここは深い海の中だ―――」

 

 グレガーのその一言で、世界が変わる。

 

 アルマンの眼の前に深海が広がった。

 

 錯覚―――

 

 実際のアルマンは街中にいる。

 

 しかし、アルマンからしてみたらそこは既に深海の中。

 

 グレガーの言騙し打ちはとどのつまり、催眠術のようなもの。

 

 あらゆるものに催眠術を掛け、グレガーの言葉を錯覚させる。

 

 負のエネルギーを司る力。

 

 「ゴボゴボ (ここはどこだ!!)」

 

 「アルマン―――」

 「君は真っ直ぐで正しくて強い。」

 「ボクは嘘つきで嫌われ者で弱い。」

 

 「人にウソついちゃダメだ―――」

 「よく親に叱られたよ。」

 「でもね・・・ボク思うんだ。」

 

 

 「ぐ、ぐっ・・・!?」

 

 グレガーの魔剣がアルマンの肌に触れる。

 

 

 「騙される方が"悪い"ってね―――」

 

 

 グレガーの一閃はアルマンの意識を失わせるには十分過ぎた。

 

 そのままアルマンは倒れる。

 

 

 フフン♪

 

 

 アルマン、安心して―――

 

 

 命まで取るつもりはないから。

 

 ただ君は真っ直ぐすぎる。

 

 だから、これから起こる闘いにはふさわしくない。

 

 君には君の役割がある。

 

 そして、ボクにはボクの役割がある。

 

 虚構の平和なんてつまらない。

 

 そもそも誰に許可を取ったのかな?

 

 ウソをついていいのはボクだけなんだよ―――

 

 許せないなぁ~~

 

 ウソはホントにしなきゃ。

 

 

 グレガーはその場を去っていった。

 

 

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