第618話 【待機&防衛組】疑惑
~王家の墓 入り口~
「た、大変です!!」
「ウィル様!!」
未央達が墓から出てきたタイミングで、従者がやってきた。
「・・・?」
「どうした?何があった?」
「はい、聖王国の中心にある時計塔で・・・磔にされている死体が・・・!!」
「何だって―――ッ!?」
ウィルの顔は険しくなった。
あの事件からやっと平穏が戻りつつあったのに、また事件が起こってしまった。
急いで未央達は聖王国へ戻った。
未央達が聖王国に戻った時には既に磔にされていた男は下に降ろされていた。
見るも無残な死に様だったらしい。
全身を無数の刃物で刺され、血だらけで息絶えていたと聞いた。
「この人って・・・!?」
未央は昨日、この男と出逢っている。
ケルベルと一緒にいるところを偶然に挨拶した程度だが。
男の遺体が公国からのスパイだと分かると、ウィルの顔がさらに険しくなった。
「これは厄介なことになってしまった。」
しかし、まずは祈りだ―――
遺体に両手を合わせ、祈りを捧げる。
きちんと弔わねば、魂は天国へ行くことができない。
聖王国ではそれが当たり前。
子どもでも知っている。
だから周囲の人達は遺体に祈りを捧げている。
「詳しく話を聞かせてくれ―――」
ウィル、未央、鏡花の3人は、ケルベルから詳しい話を聞くことにした。
死体の状態を見るに自殺はない。
明らかな他殺。
それも殺された男のレベルを考えれば最低で70以上のレベルは持っていることになる。
「公国のスパイということには気付いていたんですね―――」
「はい。」
「それを何故、報告しなかったのですか?」
「いたずらに事態を大きくするべきではないと考えたからです。」
「彼と最後に別れたのはいつですか?」
「昨日の夕方になります。」
次々とウィルはケルベルに質問を投げ、ケルベルはそれに対して答える。
「ウィル―――」
「まさか、ケルベルさんを疑っている訳じゃないよね?」
未央が確認する。
ウィルの聞き方がまるで尋問だった為、未央が心配した。
「ボクは疑っている訳ではないですが・・・」
「国民は皆、不安を感じているでしょうから、一刻も早く犯人を見つけないと―――」
「それに公国だって、自国の者が殺されたとあれば、どういった行動を取って来るか分からない。」
ウィルも焦っているようだった。
未央は悲しい気持ちになった。
昨日まで楽しくやっていたのに、ウィルがケルベルさんを疑っていると感じたからだ。
「ウィル様!」
「公国から使いの者がやってきました!!」
「昨日の件で話がしたいと・・・!!」
「思ったよりも早かったな―――」