第615話 【待機&防衛組】探索
~王家の墓~
じめっとした閉塞感、冷たい土壁、魔力の籠った瘴気。
低レベルの魔物が蠢くダンジョン―――
未央、鏡花、ウィルの3人はダンジョンの奥へと進んでいく。
ウィルは緊張しているのか、周囲を警戒しながらゆっくり足を進める。
鏡花はこの程度のダンジョンと高を括っている。
反対に未央は久しぶりの探検に胸を躍らせている。
ワクワクで胸がいっぱいだ―――
「見て~~ここ、キラキラ光って綺麗だね~~!!」
魔素を含んだ苔が長い年月積み重なって光るようになったのだろう。
この世界ではあまり珍しいことではないが、現実世界からやってきた未央にとっては新鮮だった。
「あぁ、それはですね―――」
「魔力苔といって、苔が少量の魔力を長い年月吸い続けて光を帯びてるんですよ。」
「おぉー、流石王様!!」
「博識ィ~~!!」
未央がおだてるように云った。
「いえいえ、こんなの全然すごくないですよ―――」
少し、照れながらウィルは返した。
「二人とも、アレ何かしら?」
鏡花がそう云った。
3人の眼の前に一つの台座がある。
台座には球体がフワフワと浮いている。
「これって所謂、"謎解き"ってやつじゃない?」
未央は昔からゲームも良くしていた。
たしか進の家で連日ゲームに没頭していたこともあった。
「魔力を送ってみる?」
未央が二人に確認する。
「未央ちゃん―――」
「貴方が魔力を送ったらこの水晶壊れるわよ。」
鏡花が少し、笑いそうになりながら云う。
「・・・・・マジ?」
自分の力の強さを把握していない未央。
「じゃあ、鏡花ちゃんがやったらいいじゃん―――」
未央が少し不貞腐れて鏡花に云った。
「多分、同じよ―――」
しかし、鏡花も未央とそれほど変わらない。
多分、魔力を送り込んだ瞬間にこの水晶は壊れてしまうだろう。
それほど二人の魔力量は規格外。
二人は悩んでいると、ウィルが恐る恐る手を上げて発言する。
「ボクがやってみます―――」
元々、王族の証である指輪を取りに来る為、協力してもらっている立場。
自分がやれることはやらないといけないと考えていた。
スッと、水晶に手を翳すウィル。
水晶が光る。
どうやらウィルの魔力に反応しているようだ。
空中につらつらと文字が浮かび上がる。
「すっご・・・。」
思わず、未央が口にする。
「えーっと何々―――」
未央が空中に浮かび上がる文字を読み上げる。
「聖杯に金色の槍にて王族たる者の血を捧げよ―――、さすれば道は開かれん。」
「どうやら、この聖杯に王族の血を捧げればいいってことね。」
眼の前には女神像が置かれており、その手には聖杯を持っている。
「でも金色の槍なんてないよ?」
未央が首を傾げる。
「金色の槍なら何でもいいんじゃないの?」
鏡花はそう云い、特殊なスキルを発動する。
「究極錬金術:クリエイション!!」
指先からシャボン玉みたいな液体を生み出す。
その液体は光を帯び、辺りを照らす。
金だ!
鏡花は金を容易く生み出す。
さらにその金を自在に操り、瞬く間に槍へと変えてしまう。
「これで王様の血を取ればいいのね。」
槍の切っ先がウィルの指先をほんの少し切る。
一滴の血を聖杯に垂らす。
が、聖杯は反応しない。
流石に鏡花の裏ワザはここでは意味を為さないようだ。
「ダメみたいですね―――」
ウィルはそう云った。
「やっぱりズルはダメなんだよ!!」
未央がそう云った。
「ズルって―――、貴方ね・・・。」
「賢いやり方って言って欲しいわ―――」
「金色の槍・・・グングニルのことかもしれないです!!」
ウィルはそう云った。
「グングニル?」
未央が目を輝かせて尋ねる。
「はい!!そうです―――」
「聖王国に伝わる伝説の槍―――、それがグングニルです!!」
「それはどこにあるのかしら?」
「恐らく、この王家の墓―――」
「一番下の階層です。」
「それじゃあ駄目じゃない―――」
「この先は扉が閉まっていていけないんでしょ?」
まるでウィルが叱られているようだ。
「はい・・・。」
「でもこっちから下に降りれそうだよ―――」
少し目を離した隙に未央が二人を呼んでいる。
一体いつの間に―――?
未央が下へ降りる階段を見つけたようだ。
それではこの奥の扉は?
二人は疑問に思う。
「もういっそのことこの壁事破壊しようかしら?」
鏡花が物騒なことを云うが、慌ててウィルが止める。
そんなことをしたらご先祖様に申し訳ない。
それだけは止めてくれと必死に止めた。
「冗談よ―――」
「そんなことしたら未央ちゃんに何て言われるか分かったものじゃないわ。」
二人は未央の呼ぶ方向へ行き、下の階層へと向かった。