第614話 【待機&防衛組】魔王と天使と国王
~王家の墓~
王都 聖ミラルドから北東に数十キロ離れた地点、聖王国王家の墓有り。
「未央ちゃん―――」
「あれから私達、本当の友達になったと思ったのだけれども・・・。」
「コレはどういうことかしら?」
鏡花は未央に対して言葉にする。
二人は今、この王家の墓の入り口前に来ていた。
魔王と天使―――、物語だったら相反する者達。
そんな二人が仲良く、王都から離れた場所に来ることになるとは。
「さっきね、ウィルから頼まれたんだけど―――」
「王家の墓にある指輪を取って来てほしいんだって。」
「こういうのって、普通その王族も付いて来るものじゃないんですの?」
鏡花がツッコむ。
「そそ、だから今からウィルを連れてくるね―――」
「《転移》!!」
スッと姿を消した未央―――
その数十秒後、ウィルを連れて転移してきた。
「・・・・・・。」
鏡花はポカンと口を開けたままになってしまう。
女二人で探索を始めるのかと思ったら、まさかの聖王国の新王ウィリアムを連れてきたのだから。
「王家の墓に連れてって欲しいと頼んだのは未央さんなのだが・・・」
「そちらの方はどなたですか?」
ウィリアムからしてみたら鏡花は初対面。
「朝霧 鏡花よ―――」
「未央ちゃんとは・・・友達の関係よ。」
「ボクは聖王国の新国王ウィリアム―――」
「アラタや未央さんには非常に感謝しています。」
ウィリアム、見た目は好青年、悪い人ではなさそうなのが伝わる。
スキルを使えば、どんな人物か分かるが、敵でもない人間に対してそれを使うのは止めておくことにした。
「それで取りに行って欲しい指輪でしたっけ―――?」
「一応、理由は聞いてもいいかしら?」
「聖王国の王族の証としてどうやらこの王家の墓に眠っている指輪が必要とのことなんです。」
「ですが、この王家の墓・・・暫く人が立ち寄ることが無かった為、魔物の巣窟になっているそうなんです。」
「それで・・・情けない話ですが、魔王である未央さんに探索の協力をしてもらおうと思ったわけです。」
未央ちゃんの魔王の力を頼りにしているという訳ね―――
「まぁ、事情は分かったわ―――」
「それで私もこの探索に参加するってことね。」
少し怪訝そうな表情の鏡花。
「そうそう!」
「せっかくだし、鏡花ちゃんとも冒険したいかなって思ったんだけど・・・」
「ダメかな?」
上目遣いで聞いてくる未央―――
こんな表情をされては断り辛い。
「はぁ・・・分かった―――」
「私も一緒に参加するわ。」
渋々ではあるが、鏡花も探索に参加することになった。
「やったーー!!」
「久しぶりに鏡花ちゃんと探検できる!!」
魔王と天使と国王の3人でのダンジョン探索が始まった。
階層的にはそれほど深くはない。
地下4,5階といったところだろう。
確かに魔物の気配はある―――
「フンフンフ~~ン♪」
鼻歌まで歌っている未央。
よほどこの探索が楽しいのだろう。
元々、都市伝説やオカルト掲示板の情報を元に遠征するのが趣味だったような子だ。
冒険は好きなのだ。
「あっ!奥から魔物が出てきた!!」
ガイコツの剣士が群れでやってきた。
手には剣やボウガン等の武器を持っている。
「未央さん―――、大丈夫そうですか?」
ウィルはちゃっかり未央の後ろに待機している。
ウィルの戦闘能力がそれほど高いわけではない。
レベル30の魔物が出てきたらそれだけで太刀打ちできないだろう。
「まーかせなさいって!」
未央は自信たっぷりだ。
"未央よ―――、あまり油断するなよ。"
後ろで前魔王アリスが忠告している。
勿論、鏡花やウィルにはアリスの姿は視えていない。
"アリちゃん、大丈夫だって―――"
未央は魔眼を発動させる。
魔物の戦闘力を見てもレベル20程度。
ガイコツ兵達が襲い掛かる。
剣が振り下ろされるが、未央の身体に傷をつけることは叶わない。
この程度の攻撃だとダメージにすらならない。
「よっと―――!!」
未央が少し、魔力を解放させただけでガイコツ兵達は消滅していく。
圧倒的すぎる。
「どんなもんよー!!」
ドヤ顔の未央―――、しかしその後ろでウィルが残ったガイコツ兵と剣を交えていた。
「クッ!!」
「《破邪剛掌波》!!」
苦戦しているウィルに後ろから攻撃が放たれる。
「ギャアアアーー!!」
ガイコツ兵の断末魔が聴こえる。
邪気を滅するエネルギー。
天使である朝霧 鏡花の技だ。
かなり力は抑えての放出。
「全く、王様はあまり戦えないってさっきいってたじゃないの―――」
鏡花が未央に説教をしている。
「ごめんねー!!」
未央が鏡花に謝る。
「ごめんなさいは禁止・・・なんでしょ?」
「・・・・そうだね!!」
「鏡花ちゃんありがとう!!」
「よろしい―――」
「「フフっ・・・!!」」
未央と鏡花は笑い合う。
「お二人ともとてもスゴイですね!!」
ウィルは未央と鏡花の強さに改めて感心する。
「さぁ!じゃんじゃん奥に進んじゃおー!!」




