第613話 【待機&防衛組】だって友達じゃん
~王都 聖ミラルド 喫茶ホワイト~
聖王国 王都 聖ミラルドの街中で営業している喫茶ホワイト。
落ち着いた雰囲気の店内にモダンな内装、多種多様なハーブティー、珈琲、洋菓子を提供してくれる。
「私、ここ来たの初めてなんだよねー。」
腹をすかせた未央―――、気になった喫茶店があった為、こっそり来てみた。
「飲み物は何にする―――?」
「鏡花ちゃん―――」
未央は一人で店内に入ってきたわけではない。
朝霧 鏡花―――
先ほど、外で二人は再会した。
偶然?
いや、違う―――
鏡花の方が未央の魔力を探知して会いに行ったというわけだ。
未央はそんな鏡花との再会に喜び、一緒にお茶することを提案した。
それが二人がこの喫茶ホワイトに入った経緯。
「・・・私は珈琲でいいわ。」
鏡花は未央に云った。
「すいません!珈琲二つとこのホットサンド二つ!!」
未央は店員に注文を伝える。
「かしこまりました―――」
「ホットサンドは別にいらなかったのに・・・。」
鏡花はそう云ったが、未央は笑顔でいいからいいからと云った。
未央は鏡花と久しぶりに会えたことが嬉しいのだ。
注文した品が来た後、二人は同時に飲み物に口をつける。
一口飲み、カップをテーブルに置いた後、鏡花が口を開く。
「・・・・えっと、改めて謝るわ―――」
「ん?何が?」
未央はいきなりの鏡花の謝罪を聞き返す。
心当たりがない。
「貴方達をこの世界に騙す形で連れてきたことよ―――」
んーーっと、確かに最初はそうだった気がするけど・・・。
「別に気にしてないし、いーよ!」
未央はサラッとそう云った。
「本当に気にしてないの?」
「貴方は死にかけたこともあるし―――」
鏡花はそんな態度の未央に思わず、聞き返した。
この世界に来て、危険なことも少なくなかったハズだ。
未央などサンドルに殺されかけている。
元凶である自分のことを恨んでいるかもとは内心思っていた。
「確かにこの世界に来て、辛かったこともあったけど、ステキな出会い、元の世界にいたら出来なかった体験もした。」
「私は自分の選択したことに後悔はしてないし、それを誰かのせいになんてしないよ―――」
「天童君もあんな口の聞けない身体になったのに?」
鏡花はさらに質問をぶつける。
こんなことになって、気にしてないとは思えなかったからだ。
「進ちゃんは必ず帰って来る―――」
「私は信じてる。」
未央はそう云って、珈琲をさらに一口飲む。
普通の女子高校生なのに、この子はなんて強いんだろう。
鏡花はそう思った。
「それにさ、結果的に鏡花ちゃんを助けることもできたんでしょ―――」
「じゃあ、よかったじゃん♪」
何で貴方はそんなサラッと言えるんですか?
鏡花には分からなかった―――
だからつい、口にしたんだと思う。
「何で、そう思えるの?」
そしたら、未央はニコッと笑って、こう云ったの。
「だって友達じゃん―――」
「まぁ、最初っから言ってくれても良かったとは思うけどさ―――」
「結局、私も進ちゃんも―――」
「オカ研のみんなは力になろうとしたと思うよ。」
そうだ―――、この人達はそう云う人達だった。
鏡花はそんな未央の言葉に思わず、涙が流れた。
「えっ!?どうしたの―――、鏡花ちゃん!?」
「えっ、エェ~~~!?」
鏡花の涙に狼狽える未央。
清潔なハンカチで鏡花の涙を拭きとる。
「もう~~驚いたよ~~!!」
「急に泣き出すんだもん!!」
少し、時間が経過して鏡花の感情も落ち着いた。
そういえば、前に天童君にも信じると云われたことがあった。
自分達をこんな目に遭わせた元凶だと云うのに。
なんでそんなお人好しなのかしら。
でもそんな人達だから私も元の日常に戻りたいと本気で思うようになった。
今では後悔の方が強い。
「ごめんなさい―――」
「鏡花ちゃん!!」
「ごめんなさい禁止!!」
「えっ?」
「そこは"ありがとう"でしょ―――?」
「ねっ?」
「あ、ありがとう・・・。」
慣れない感謝の言葉に鏡花は頬を赤くする。
そんな鏡花を見て、フフっと笑う未央。
鏡花は今日、初めて未央達と本当の仲間になった気がした。
「あっ、そう云えば!!知ってた?」
「花ちゃんもこの世界に来てたんだって!!」
「知ってましたわ―――」
「私は皆のことを見てましたから―――」
「びっくりだよね~~。」
そうだ、鈴谷さんもこっちの世界に迷い込んでしまったんだ。
彼女がこっちの世界に来るのは完全に想定外だった。
心配して、私も陰ながら力を貸そうと思ったけど、どうやら彼女は召喚士の力を秘めていて、何とかこの世界を生き抜いているらしい。
私もそんなこと気付かなかった。
オカ研のメンバーには本当に驚かされてしまう。
「これでいつメンが揃ったって訳だね♪」
未央がそう云った。
とても嬉しそうだ。
そうだ―――、放課後は未央ちゃん、天童君、唯我君、鈴谷さんと部室で楽しくやってた。
何だが、とても昔のように感じる。
「みんなで元の世界に戻ろうね―――」
未央がそう云った。
「ええ―――」
鏡花も思いは同じだ。
しかし、その前にやることがある。
「私、感じるの―――」
「最後の闘いが近いって。」
そうだ、シン―――
あの男と決着をつけない限り、決して平穏な日常は訪れない。
未央もそのことを感じているようだった。
最後の闘い―――、つまりシン達との決着。
「そうね―――」
「勿論、私も出来る限り協力するわ。」
未央と鏡花は笑みを向け合った。
共に力を持つ者同士―――、そしてオカ研の仲間として力を合わせることにした。