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第606話 【魔王城潜入組】浄化


~魔王城 11階 瞑想部屋~

 

 ベロニカがエレナと再会する中、ヴィクトルとベリヤの二名はリカントと対峙していた。

 

 リカントの容赦のない連撃が二人に降り注ぐ。

 

 「ヴィクトル殿・・・まだいけるでござるか?」

 

 「うん―――、まだまだいけるよ。」

 

 二人とも口ではそう云ってるが、実際の所かなりギリギリだ。

 

 全身はボロボロで、魔力は枯渇しかけている。

 

 ヴィクトルは手を武器化することが上手く出来なくなり、ベリヤの刀剣は刃が欠け、中心から上が折れていた。

 

 「ベロニカ・・・エレナ様と再会できたかな?」

 

 「我々はベロニカ殿を信じるだけでござる―――」

 

 「そうだね―――」

 

 絶対にこの先は死守する。

 

 二人の瞳に闘志が灯る。

 

 「ウ・・・ア"ア"ァーー、ヴィクトル・・・ベリヤ・・・。」

 「私ハ何ヲシテイル?」

 

 死者の魂は浄化しなければならない。

 

 一介の戦士として目を背ける訳にはいかない。

 

 リカントが死者とは思えぬスピードで再び向かって来る。

 

 どこまで持つかは分からないが、死ぬ気で喰らい付く。

 

 ベリヤはリカントの爪撃を折れた刀剣で防御する。

 

 段々、リカントのスピードにも慣れてきたが、それでも体力、装備が最悪すぎる。

 

 ヴィクトルがその隙にリカントの背後に回り、全身を水分に変えて、リカントを抑え込む。

 

 リカントの身体をガッシリとホールドしたが、化け物じみた腕力で強引に引き剥がす。

 

 「グワァーー!!」

 

 ヴィクトルは分厚い壁に叩きつけられた。

 

 「ううぅ・・・。」

 

 ヴィクトルは霞む視界の中、ベリヤが必死にリカントに応戦している光景が見える。

 

 「ク・・・拙者もそろそろ限界でござる!」

 

 「オオオォォーーー!!」

 

 最後の力を振り絞り、ベリヤが両手に刀を持ち、リカントへ斬りつけた。

 

 グサッーーー!!

 

 しかし、その刀がリカントに触れることはない。

 

 逆にベリヤの肺をリカントの鋭い爪が貫く。

 

 「ぐわああぁーーー!!」

 

 ベリヤは苦しそうに声を上げる。

 

 い・・・息が・・・。

 

 「ベリヤーーン!!」

 

 ヴィクトルは叫んだ。

 

 リカントがあとほんの少し力を加えたら、ベリヤの身体は真っ二つに引き裂かれていただろう。

 

 既にリカントはアンデッド―――

 

 良識など持ち合わせてないし、身体は生者を死へ追いやるようにできている。

 

 「モウ・・・止メテクレ・・・。」

 

 自分が今何をやっているか分かってしまったのだろう。

 

 でも、身体はベリヤを殺そうとしている。

 

 かつての同胞を―――

 

 救いはないのか―――

 

 死者となったリカントは願う。

 

 コレが夢であってくれと。

 

 リカントの願いは届くことになる。

 

 その願いを叶えるべく救いの手を差し伸べたのは彼女だった―――

 

 

 「そこまでよ★―――!!」

 

 

 聞き覚えがある。

 

 あぁ、君だったのか―――

 

 エレナ―――

 

 

 「エ・・・エレナ様!!」

 

 ヴィクトルは思わず、笑みが零れてしまう。

 

 エレナ様が来たってことはベロニカは救うことが出来たんだ。

 

 「みんな―――、待たせたわ!!」

 「どうやら間に合ったみたいね。」

 

 ベロニカがその後ろから現れた。

 

 それはまさしく希望。

 

 「リカント―――、安らかに眠りなさい★!!」

 「白魔法:聖除霊(イクソシズム)!!」

 

 エレナの手から白魔法が放たれる。

 

 アンデッドを浄化する魔法だ。

 

 「ウ・・・ウギャアアァーーー!!」

 

 どれだけ肉体を鍛えていようが、アンデッドに対する除霊魔法は強烈だろう。

 

 リカントは頭を抱え、苦しみ始める。

 

 しかし、その苦しみもすぐに快楽へ変わり、最期には穏やかな表情で、エレナ達を見つめた。

 

 「ありがとう―――」

 「私は救われた―――」

 

 

 「リカント・・・」

 「もういいの―――」

 「貴方はもう戦わなくていいのよ★」

 

 エレナは真剣な眼で崩壊するリカントに語り掛けた。

 

 同じ六魔将として、楽にさせるのは自分の役目だと。

 

 「頼みがある―――」

 

 

 「・・・・・・・・。」

 「言ってみなさい★」

 エレナはリカントの言葉を聞く。

 

 「シン様を・・・」

 「あの人を止めてくれ。」

 

 リカントはそう云った。

 

 リカントはまだシンのことを―――

 

 アンデッドにされたのもシンの指示だろう。

 

 それなのにまだリカントは恨むわけでもなくシンのことを思って。

 

 全く・・・呆れた忠誠心ね。

 

 「分かったわ―――」

 「シンのことは私にまかせなさい★」

 

 エレナのその言葉を聞いて安心したのか、リカントの肉体は天へと帰った。

 

 終わった―――

 

 ベロニカはそう思った。

 

 魔王城へエレナを救出するという目的は果たした。

 

 しかし、何だろうか―――

 

 自分は何か大切なことを忘れている。

 

 そうだ、下の階でハイロンと闘っている百鬼はどうしているだろう―――

 

 ん?あれ?

 

 さらにその下の階であの巨大な鬼を足止めしていた人がいたような―――

 

 ベロニカは何か大切なことを忘れている気がしていた。

 

 頭の中がもやもやする。

 

 忘れてはいけない何かが頭の中に気持ち悪く存在する。

 

 

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