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第605話 【魔王城潜入組】姉妹の絆


~魔王城 12階 エレナの部屋~

 

 エレナとベロニカは互いに向き合う。

 

 今まさに戦闘が始まるところだ。

 

 そんな折、ベロニカの中で戦局を見守る魔導大全は考えを巡らせる。

 

 六魔将 エレナ―――

 

 サキュバスクイーンのクラスであり、長年六魔将の座につく実力者。

 

 しかし、その力は未知数―――

 

 古参のリカントやサンドルと違って、積極的に戦場に赴くタイプではない為、データがほとんどない。

 

 物理攻撃ではなく、魔法による攻撃を主としているという話も聞く。

 

 血が繋がっていないが、ベロニカ達と姉妹の契りを交わしている。

 

 ベロニカ―――、君は姉妹というだけあって六魔将 エレナの戦闘スタイルを把握しているのだろう?

 

 「ええ、勿論―――、エレナ御姉様の闘い方は私が一番分かっているわ―――」

 

 そうか、ならば僕の力を貸せば、充分君にも勝機はあるという訳だな。

 

 「この闘いは勝つことが目的じゃない―――」

 「エレナ御姉様を元に戻すことが目的なのよ。」

 

 ・・・そうだったね―――

 

 君は好きにしたらいいさ。

 

 他人事のように話す魔導大全。

 

 正直、ベロニカとエレナの関係にそこまで興味がある訳ではない。

 

 「貴方にそう云われずとも、そうさせてもらうわ―――」

 

 ベロニカと魔導大全がやり取りをしている最中―――

 

 エレナが動いた。

 

 「《誘惑》―――」

 

 エレナが自分の人差し指に手を当て、投げキッスをする。

 

 しかし、変わらずエレナの眼は正気を取り戻していない。

 

 妖しく笑い、術を行使する。

 

 ベロニカ!!

 

 魔導大全がベロニカの頭の中で声を上げる。

 

 「分かっているわ。」

 

 エレナの《誘惑》は相手の行動を自分の意のままにするというもの。

 

 操られながら、操りの術を行使する―――、何と滑稽か。

 

 ベロニカは横に飛び跳ねてエレナの術を躱す。

 

 「七星魔法:偉大なる流星(グランド・メテオ)!!」

 

 ベロニカはエレナに容赦のない魔法を放つ。

 

 手を抜いていてはやられる。

 

 殺す気で掛からなければ。

 

 「白魔法:聖なる障壁(ホーリーバリア)!!」

 

 エレナは周囲に白魔法のバリアを展開する。

 

 それを持ってして、ベロニカの偉大なる流星(グランド・メテオ)を防ぎ切る。

 

 「白魔法:聖なる柱セイントピラー!!」

 

 ベロニカの頭上から光り輝く光の柱が落ちてきた。

 

 「ッ―――!?」

 

 「水晶魔法:クリスタルクリア!!」

 

 ベロニカは両手を構えて、魔力を解放する。

 

 エレナの聖なる柱セイントピラーを相殺。

 

 拮抗する実力―――

 

 いい調子だ、ベロニカ。

 

 だが、六魔将 エレナの実力こんなものではないハズだ。

 

 魔導大全はエレナの強さを感じ取る。

 

 「エレナ御姉様!!目を覚ましてください!!」

 

 ベロニカが必死に呼びかける。

 

 しかし、エレナの心には届かない。

 

 ベロニカ、どうにか接近して、エレナの頭に手を触れるんだ!!

 

 僕の力を使えば、エレナを覚醒できる!!

 

 魔導大全はそう云った。

 

 さっきまで興味無さそうにしていたのに、二人の闘いぶりを見て、考えを変えたのだろう。

 

 ベロニカは一直線にエレナへ向かって走った。

 

 距離で云ったら10メートルもないだろうが、相手は六魔将 エレナ。

 

 そう簡単に距離を詰めれない。

 

 「御姉様!!御姉様!!御姉様アァァーー!!」

 

 ベロニカは必死だ。

 

 ベロニカはエレナとの日々を思い出す。

 

 エレナと交わした言葉の数々。

 

 共に魔道具を作った日のこと。

 

 ルミナスが来た日のこと。

 

 ナデシコが来た日のこと。

 

 自分達が姉妹になったこと。

 

 笑い合った思い出、楽しい日々、充実した日々。

 

 戻りたい、取り戻したい、理想の日々を。

 

 ベロニカの身体から強い光が発せられる。

 

 魔導大全が力を貸してくれている証拠だ。

 

 力が溢れる。魔力が溢れる。まるで自分の身体ではないみたいだ。

 

 「ッ―――!?」

 

 その手がついにエレナに届く―――

 

 やっと届いた。

 

 さぁ、ベロニカ―――

 

 術を解くんだ!!

 

 魔導大全がそう云った。

 

 「《洗脳解除マインドリリース》!!」

 

 「エレナ御姉様戻って来てェーーー!!!」

 

 ピカっとフロア全体が光った。

 

 ここまで来るのをどれだけ夢見ただろう。

 

 もし、これでエレナ御姉様が元に戻らなければ―――

 

 少しの不安はある。

 

 でも、成功していることを信じるしかなかった。

 

 そして、その祈りは届く。

 

 現実のものとなる。

 

 

 「ベロニカ・・・・?」

 

 

 エレナがそう呟いた。

 

 はっきり、目の前のベロニカを認識した。

 

 

 「御姉様アアァァーーー!!」

 

 ベロニカはその嬉しさから涙を流し、エレナに抱き着いた。

 

 いつぶりだろうが、こんな大胆にエレナに抱き着いたのは。

 

 「????どうしたの?」

 「ベロニカ―――、今日はやけに情熱的ねぇー。」

 

 エレナは少し記憶が混濁しているようで、状況を飲み込めていなかった。

 

 そんな彼女でも大切に思うベロニカのことを受け入れ、泣きじゃくる彼女の頭を優しく撫でて上げてた。

 

 

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