第589話 【魔王城潜入組】魔王城攻略戦③
~魔王城 6階 迷宮エリア~
魔王城に入り込んだベロニカ達―――、赤目の静寂の暗殺者により、6階の迷宮エリアまで特に妨害を受けることなく無事に到達することが出来た。
一行はひたすらに上の階を目指す。
「これならラクショーでエレナ様の所に着いちゃうね!!」
ヴィクトルがはしゃぎながら口にする。
魔王城も半分の階層まで到達した。
ヴィクトルみたいに油断してしまうのも無理はない。
「それにしてもここ―――、入り組んでいて分かりにくいですね・・・。」
百鬼は嫌そうな顔をしている。
6階層は迷宮エリア。
複雑に入り組んだ巨大な迷路を攻略しなければいけない。
「魔王城は各階層に侵入者を阻むトラップや仕掛けが散りばめられているの―――」
「この6階層は侵入者を上の階に行かせない迷宮になっているって訳よ。」
本来ならここに来た者を惑わせる作りだろうが、ベロニカはこの迷宮の経路をよく把握している。
赤目達はベロニカの後ろを付いていけばいいだけ。
それでもこの迷宮を走り回るのはいささか面倒に感じていた。
「でも残すところ半分でござる!!」
「この調子なら、あっという間でござるよ!!」
ベリヤは皆を元気づける為に云った。
しかし、それはフラグにしかならない―――
「みんな止まれッ!!」
赤目が大きな声でそう云った。
ベロニカ達はその言葉にビクッと反応して足を止める。
一体何事なのかと周囲を警戒する。
「葬牙:噛み斬り!!」
5人の頭上から強めの衝撃波が降って来る。
咄嗟にベロニカ達は後ろへ退いた。
「今のを避けるたァ!中々やるじゃねェーか!!」
一人の魔族が現れる。
大きな剣を軽々と持ち上げ、強者のオーラを漂わせる。
「あれ?ボク達、気付かれてるよ―――!?」
ヴィクトルがそう云った。
静寂の暗殺者が通用しない者が現れた。
「中々できる者のようだな―――」
赤目は至って冷静。
まるで、静寂の暗殺者を見破る者が現れることを予見していたようだ。
「認識阻害―――、それで隠れてるつもりだったんだろうな!!」
「だがなー!この俺にそれは通用しねェーぜ!!」
「ベロニカ―――、あの魔族が何者か知っているか?」
「いいえ、知らないわ―――」
「多分最近入った新人よ―――」
ベロニカも知らない魔族、それもかなり手練れ。
情報が少ないな―――
赤目はそう思った。
赤目の脳内データベースでもヒットするデータは存在しない。
あの魔族―――、よく見ると頭に角が生えている。
「もしかして、鬼人族?」
「いや、そんなはずない―――!?」
「だって、鬼人族はサンドル様以外いるハズがないんだもの・・・。」
ベロニカは何かに気付いたようだ。
「鬼人族?」
赤目はベロニカの言葉を聞いて思い当たる節があった。
六魔将 ハイロンが"鬼"について研究しているという情報をハンクから得ていた。
「ということはアレが、その研究成果という訳か・・・。」
赤目はそれで納得した。
ハイロンは無から鬼と呼ばれる化物を創り出す研究をしている。
その過程で鬼人族が生み出されていても何ら不思議ではない。
「ということは、本格的に情報が無い状態という訳か―――」
ハイロンは他にも鬼人族を生み出しているのだろう―――
これから上層に行くにつれ、その者達と戦闘をしなければいけない可能性が生まれた。
「でもこちらは5人―――、相手は1人!!」
「恐れるに足らないでござるッ!!」
ベリヤはそう云って前に躍り出る。
やる気満々だ―――
確かに頭数では勝っている。
しかし、本当にそうか?
敵だってそんなことを分かった上で姿を現すはずだ。
赤目は周囲の気配を入念に探知する。
「みんな―――、我々は既に囲まれているようだ。」
10、20・・・いや、30人はいる―――
「あっちゃーー!!気付いちゃったか!!」
「やはり、敵の本拠地―――、一筋縄では行かせてくれないらしい。」
5対30・・・数的有利は向こうにあるようだ。
「赤目さん―――、私ならやれます!!」
百鬼はそう云った。
しかし、相手の戦力が未知数である以上、下手に動くのは得策ではない。
「止めるんだ―――、数の暴力に勝てないことは我々が一番よく分かっているハズだ―――」
そう―――、どんなに優秀だろうが、数で押し切られて負ける。
かつて、赤目と百鬼は鍜治原に決して勝てなかった。
圧倒的な組織力は秀でた個を圧倒する。
「分かりました―――、とりあえず様子見します。」
「私達を取り囲んでどうするつもり?」
「襲う気なら既にやってるわよね―――」
初撃以降、追加の攻撃は来ていない。
初撃は我々が避けることを考慮してのあいさつ代わりだったのだろう。
「ハイロン様は貴様らが来ることを予見していた―――」
「貴様らを連れて来いとお達しでな!!」
「俺達に付いて来てもらうぜ!!」
鬼人族の男はそう云った。
「どうする?ベロニカ―――」
六魔将 ハイロン―――、高度な魔法を有するリッチとだけ聞いている。
あのベルデとかいうネクロマンサーと同じリッチ―――
相当な魔法の使い手とみる。
「上の階層に行けるのは願ったり叶ったりよ―――」
「あの男の言う通り、付いていきましょう!!」
ベロニカはそう云って、男の言う通りに動くことにした。
赤目達はその言葉に軽く頷き同意する。
こうして、ベロニカ達は鬼人族の男に連れられて上の階層へ進むのであった。