第586話 【魔王城潜入組】魔王城へ
~バラム地区 大図書館~
ベロニカは椅子に座り、紅茶を飲みながら赤目達を待っている。
ひと時の休息―――
「ベロニカ~~!!」
赤目と百鬼を呼びに行ったヴィクトルとベリヤが戻ってきた。
しかし、赤目と百鬼はいない。
彼らはどうしたのかとヴィクトルに尋ねると、何故かもじもじして言葉に詰まっていた。
「二人ともまだ体調が戻っていないとのことだったでござる―――」
「もう少し休ませた方がいいでござるよ―――」
明るい口調でベリヤが割って入ってきた。
「あら?そうなの―――」
ヴィクトルが恥ずかしそうにしていたのは少し気になったが、ベロニカはそれで納得した。
まぁ、無理させていたのは間違いないし―――
ここで、無理に来させるのも申し訳ない。
「二人には後で私から伝えておくわ―――」
「それじゃあ、改めて魔王城に入っていく為の作戦を説明するわ―――」
ベロニカはヴィクトルとベリヤに話し始めた。
自分の中に魔導大全が取り込まれたことも改めて説明した。
まず、赤目が得た情報によるとここから北西に行った地に魔王城から着陸ポイントとして設定されている場所があるらしい。
そこからなら魔王城を囲むバリアの影響を受けにくいらしい―――
まずはそこに行き、そして、魔導大全の知識と魔力を持ってしてあのバリアを破壊する。
「大体、流れはこんな所ね―――」
「早速、明日出発するから、後は各自身体を休めておくことね―――!!」
「は~~~い!!」
「承知したでござる―――!!」
こうして、ベロニカ達は魔王城へ向かうことになる。
~魔王城 10階 生物研究室~
ベロニカ達がバラム地区を出発する少し前―――
「ハイロン様~~~!!」
「何ですか―――、騒がしい。」
ここは魔王城10階 生物研究室―――
様々な実験によって生み出された素体がカプセルの中に並ぶ。
六魔将 ハイロン―――、魔の頂点である種族リッチ。
近年は幾多の生物研究に励んでいる。
究極の生物を創り上げる為、日々研究を重ねている。
そんな彼の前に現れたのは先日研究資料を盗み出したハンクを殺処分する為、送り込んだ戦士の一人―――、名前は確か"ファイ"。
「おや?貴方一人ですか―――?」
自分が送り出した戦士は3名。
しかし、ここに現れたのはたった一人。
それが何を意味するか分からない程、愚かではない。
「誰にやられたのですか?」
「誰かまでは分かりませんが、恐ろしく強い人間でした―――!!」
「それもたった一人です!!」
圧倒的な力を持つ人間?
今回送り込んだ戦士は英雄級には及ばないが、それなりの力を持つ戦士3名。
それを一方的に倒すほどの力を持つ人間がこの世界にどれだけいるか。
以前、クロヴィス城で視た天童 進という少年―――
アレに匹敵する人間がまだこの世界にいたということ―――
「実に興味深いですね―――」
ハイロンは妖しく笑う。
「すいません、それとこれは後から聞いた噂ですが、あの時ベロニカらしき人物をバラム地区で見かけたという情報もありました!!」
ベロニカ?
あぁ、エレナの妹の―――
時期的に考えるとその人間とベロニカが手を組んでいると見るのが自然。
ベロニカが絡んでいるとすると、目的はこの魔王城にいるエレナの救出。
「ということは彼らはここに来ますねェー!」
ハイロンは察する。
ベロニカ達がここへ向かっていることを。
「ちょうどコイツの実験台が欲しかったところです―――」
ハイロンはカプセルに入った素体の一体を見つめる。
そして、再び戻ってきたファイの方を向く。
「ハイロン様―――?」
ハイロンはファイに手を向ける。
ファイはハイロンが何をするのか分からなかった。
「負け犬はいりません―――」
「ハイロン様ァァァーーー!!」
ほんのちょっと―――、ハイロンが魔力を放出しただけでファイの身体は消え去った。
最後にファイの叫び声が虚しく響く。




