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第582話 【魔王城潜入組】バラム地区⑮


~大図書館 レプリカ~

 

 「赤目ッーーー!!」

 

 ベロニカは赤目の名を叫んだ。

 

 いつの間にか意識を失っていた。

 

 私は一体、何日寝ていたんだ―――?

 

 その間にも赤目はただ独りで、目標を達成する為に動き続けていたんだ。

 

 

 恐ろしい程の空腹がベロニカを襲う。

 

 ベロニカは急いで赤目を横にした。

 

 立ったまま意識を失っていたが、呼吸はある。

 

 生きている。

 

 問題は再び起きた時、以前と変わらないで活動が出来るか―――

 

 「こんなになるまで、お前は闘っていたんだな―――」

 

 ベロニカの眼に涙が浮かぶ。

 

 「お前は自分が忘れられることを恐れていたが、私はお前を覚えている!!」

 「決して忘れないッ!!」

 「"仲間"だからだッ!!」

 

 かつて人間にここまでの感情を抱くことがあっただろうか―――

 

 人間なんて取るに足らない種族。

 

 魔族には決して及ばないと考えていたが、この赤目という男は違う。

 

 自分が力尽き、倒れている間もただ独りでやり切ったんだ。

 

 「お見事です―――!!」

 「ついにこの図書館の本全てを読破しましたね―――」

 

 悲しみの顔を浮かべているベロニカの前にあの司書が現れた。

 

 勝利を称える拍手までして、ベロニカ達を祝福している。

 

 「貴方は・・・!?」

 

 ベロニカは奥歯を強く噛み締めた。

 

 これから魔王城へ行くのにパーティーが崩壊寸前まで行ってる。

 

 態勢を立て直すのにどれくらい時間が掛かるか―――

 

 ベロニカも馬鹿ではない。そのことに気付いている。

 

 「君達はテストをクリアした―――」

 「さぁ・・・コレが欲しかったんだろ?」

 

 あの司書は妖しい笑みを浮かべて古びた魔導書を差し出す。

 

 コレが『魔導大全』?

 

 思えば、こんな古びた本の為に皆、必死に作業を続けていた。

 

 ヴィクトル、ベリヤ、百鬼・・・それに赤目―――

 

 私だって、地獄のような思いをして、ここまで辿り着いた。

 

 「どうしたんだい?」

 「手を伸ばせば、届くんだよ?」

 

 『魔導大全』が宙に浮いている。

 

 ベロニカが手を伸ばせば簡単に届く。

 

 コレを手に取れば、御姉様に近づく―――

 

 私達に必要な物。

 

 ベロニカは手を伸ばし、『魔導大全』をその手に収めようとする。

 

 しかし、その刹那―――

 

 脳裏に過る。

 

 赤目達のことが―――

 

 バシッ―――!!

 

 「ッ―――!?」

 

 司書は驚いた表情を浮かべる。

 

 ベロニカが『魔導大全』を手で弾いて拒んだのだ。

 

 何で?

 

 コレが欲しくて今まで頑張ってきたんじゃないの?

 

 司書は理解が出来なかった。

 

 「えっ・・・と、これはどういうことかな?」

 

 「確かに私はその本を手に入れる為、これまで必死にテストをこなしてきたわ―――」

 

 「だったら・・・何故こんな真似をする?」

 

 「これは私一人の勝利じゃないッ!!」

 「チームの皆がいたからこそ掴めた勝利―――!!」

 「だからこそ、私一人しか立っていない状況で掴んでいいモノじゃないッ!!」

 ベロニカはハッキリとそう言葉にした。

 

 「一体、何を言ってる?」

 

 「赤目達を元に戻してもらうわ―――」

 「その上でその本も寄こしてもらう―――!!」

 

 ベロニカは人差し指を司書に向ける。

 

 「はははっ・・・それは強欲ってものだ!!」

 「君はテストをクリアした。」

 「だから素直にこの『魔導大全』を受け取って、別の仲間を連れて魔王城へ行けばいいじゃないか!」

 

 司書はそう云った。

 

 しかし、そんな言葉、今のベロニカにとって火に油でしかない。

 

 「強欲?」

 「ええ、強欲で結構ッ―――!!」

 「これから魔王城に行ってエレナ御姉様を助けるのにこれくらいで満足なんかしてられないわっ!!」

 

 「今ので覚悟が完全に決まった―――」

 

 「『魔導大全』!!」

 「アンタに勝負を挑むわ!!」

 「一対一の真剣勝負!!」

 「私が勝ったら、赤目達をここに来る前の状態に戻しなさいッ!!」

 

 

 ベロニカは『魔導大全』に挑戦する。

 

 「元に戻すって―――?」

 「魔導書である僕がそんなことまで出来ると本気で思っているのかい?」

 

 司書は試しような目つきでベロニカを見る。

 

 「ええ、間違いなく出来るわ―――」

 ベロニカは眼は力強い。

 

 自分は決して間違っていないとそう思わせる強い眼だ。

 

 「・・・・・・。」

 

 司書は無言でベロニカを見つめる。

 

 「分かった―――」

 「その条件を飲もう―――」

 

 「ただし、君が敗けたら、君は僕の物だ―――」

 「君ほどの知識を蓄えた存在なら僕の近くに置きたい。」

 

 司書は涎を垂らし、ベロニカが自分の近くにいることを想像する。

 

 「分かったわ―――」

 「私は敗けない、私が勝ったら赤目達を元に戻し、『魔導大全』を差し出すこと―――」

 

 こうして、ベロニカと司書の真剣勝負が行われることになった。

 

 

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