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第570話 【魔王城潜入組】バラム地区③


~バラム地区 スラム街~

 

 「赤目さん、臭いが酷いですね―――」

 

 鼻が曲がりそうになるほどの悪臭。

 

 下級の魔族達が住み着いたスラム街。

 

 そもそも下水が機能していない為、伝染病などの危険も大きい。

 

 「コレが住処を失った魔族達の生活か・・・。」

 

 赤目や百鬼もデータとしての資料で見たことがあるが、実際に目にしたのはコレが初めてだった。

 

 「こんな生活を見たり、体験したら、レヴィアタンのような上位魔族が今の人間達を襲う理由も頷けてしまうな。」

 

 赤目や百鬼にとってここは異世界だが、生活している者にとっては現実。

 

 今の生活を改善しようと必死になる気持ちは痛い程、理解出来た。

 

 「だが、現状、我々が彼らにしてやれることは少ない―――」

 「今後の課題としては挙げておくべきだな。」

 

 赤目は冷静にそう云う。

 

 「えーん!!えーん!!」

 

 お腹を空かせて泣いている魔族の子どもがいた。

 

 ここではそんな子どもも珍しくはないのだろう。

 

 誰も助けたりはしない。

 

 日々の生活が苦しいのは彼らも一緒だから。

 

 「お腹が空いたんですね―――」

 「では、こちらをどうぞ―――」

 

 百鬼はそんな魔族の子どもにチョコを与える。

 

 「百鬼!?」

 「そんなことをしたって根本的な解決にはならないだろう―――」

 「お前はここにいる全ての飢餓に苦しむ者に施しを与えるつもりか?」

 

 そんな行動をする百鬼に赤目は嗜めるように云った。

 

 「赤目さんの言いたいことは分かりますし、赤目さんの言う通りだと思ってますよ!」

 

 「では、何故?」

 

 「・・・・それでも私はこんな幼い子どもを見捨てるなんてことできないです。」

 

 「・・・・・・ハァ・・・。」

 赤目は深くため息を吐いた。

 

 仕方ない―――

 

 「私達はプロで、仕事が何よりの最優先だ―――」

 「しかし、ここで彼らに恩を売ることでハンクという者の情報を引き出すことが出来るかもしれない。」

 「出来る限りのことはしようか。」

 

 「赤目さん!!」

 

 百鬼の我儘に応える。

 

 赤目も百鬼も三カ月以上はサバイバル出来るくらいに常に食料はキープすることにしている。

 

 携帯食料のほとんどは収納のスキルに保管しており、いつでも出せる。

 

 そして、その食料をスラムに住む彼らに配給した。

 

 彼らは最初は警戒していたが、百鬼の擬態する気体アトモスフィアを使用することにより、彼らの警戒心を解いた。

 

 「それで、肝心のハンクの情報は聞き出せたか?」

 

 赤目は百鬼に尋ねる。

 

 「はい―――、どうやらその男はこの先の廃屋に最近住み着いたらしいです。」

 

 「そうか―――、では私達はそこに行くとしようか。」

 

 赤目はとりあえずベロニカ達に現状の定時連絡を行い、その廃屋に行くことにした。

 

~大図書館~

 

 「―――、そう。分かったわ!」

 「引き続きお願いね。」

 

 ベロニカは額に親指を当てて、念話を行っている。

 

 通信相手は赤目だ。

 

 「向こうの方も進展があったみたいよ―――」

 「どうやら魔王城から抜け出してきた男がいたらしいの。」

 「それで、今からその男にどうやって抜け出したか聞き出すって言ってたわ。」

 

 ベロニカは赤目からの報告をヴィクトルとベリヤにも伝えた。

 

 「それはよかったけど―――、こっちはどうするのさ。」

 

 ヴィクトルの眼の前に膨大な数の本が格納されている。

 

 この図書館の蔵書は少なく見積もって1億冊以上。

 

 そんな数の本の中からたった一冊を短時間で探し出さなければいけない。

 

 こんな無理ゲーがあるだろうか。

 

 「係員さんに聞いたらいいんじゃない?」

 

 ヴィクトルは思いついたかのようにして、本を整理、管理しているここの従業員に『魔導大全』のありかを尋ねたが、彼らは知らないと答えた。

 

 「ムムム・・・!!」

 「やっぱり駄目か―――」

 

 彼らがもし知っていたとしても教えてくれないだろう。

 

 もし、教えてくれるのなら他の魔族だって同じ方法で持ち出しているハズだ。

 

 「こうなったら、あの人たちの頭に入り込んで直接、聞いてみるか―――」

 

 ヴィクトルが物騒なことを考えていると、ベロニカに止められた。

 

 「それは止めなさい!!」

 「言ったでしょ―――、ここで悪事を行えば、もう二度と立ち入ることはできなくなる。」

 「ここはそういう所よ―――」

 「だから、正攻法で探すしかないのよ。」

 

 「分かったけどさ、正攻法って何よ。」

 「この本探しにルールなんてあるの?」

 

 それはヴィクトルが何気なく放った一言だった。

 

 「ルール・・・?」

 「そうか、もし『魔導大全』探しで私達を試していると云うのなら何かルールがある?」

 

 ベロニカは何かに気付いた。

 

 そして、辺りを見回す。

 

 数多くの魔族達が『魔導大全』探しを挑戦をしてきたが、そもそも膨大な蔵書の中に1冊紛れ込ませていましたという話では偶然見つける以外に方法はない。

 

 逆に何かしらのロジックがあって、それが分かれば誰でも入手できるのなら短時間での取得も難しくない。

 

 「初めの受付の女性よ―――」

 ベロニカはそう云った。

 

 「えっ・・・!?」

 

 そういうと、ベロニカは受付の女性をここに呼んできた。

 

 「私達は『魔導大全』を探しているの。」

 「貴方があの本を見つける為のヒントを持っている―――」

 「それで合っているわよね?」

 

 ベロニカは真面目な顔で聞いた。

 

 「『魔導大全』探しの挑戦ですね―――」

 「分かりました。」

 「直接ルールを尋ねてくる方・・・意外と少ないんですよね。」

 

 ニヤッとした顔で受付の女性は笑う。

 

 そして、一旦奥へ移動し、文字を書くことができる板を持ってきた。

 

 どうやらこれから『魔導大全』探しのルールを説明してくれるみたいだ。

 

 「ではこれから詳しいルールを説明しますね。」

 そういうと、女性は淡々とルールの説明を始めた。

 

 

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