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第562話 【ガラドミア遠征組】決戦⑥


 僕はかつて一度、闘いの最中恐くて立ち上がれないことがあった。

 

 信頼していた仲間が次々とやられていくことを眺めていることしか出来なかった。

 

 サンドルの圧倒的な強さに膝を折り、震えることしか出来なかった。

 

 自分の無力さを痛感し、そんな自分のことを恨んだ。

 

 そんな絶望的な状況の中で、僕は君に聞いたんだ。

 

 なぜ君は立ち向かうことができるのかと―――

 

 そしたら、君は自分だって恐いけど、戦わなければ大切な何かを守れないってそう答えたんだ。

 

 僕なんかよりもずっと年下なのに凄いなって思ったよ―――

 

 そして、その言葉は僕に勇気をくれたんだ。

 

 だから、今度は僕が君のことを守る為に戦うよ―――

 

~ガラドミア宮殿内 玉座の間~

 

 「テメェーの顔も覚えてるぜェ~~!!」

 「前に俺様にズタボロにやられて、ビビッて何も出来なかった小僧じゃねェーか!!」

 

 「あぁ、その通りだ―――」

 「僕はあの時、何も出来なかった。」

 「貴様に仲間が殺されていくのをただ見ていることしか出来なかった―――」

 「だから、コレは彼らの敵討ちでもあるんだッ!!」

 

 ススム君―――、今度は僕が君を守るから。

 

 だから、安心してくれ。

 

 「フラム!!俺も手貸すぜェー!!」

 新はそう云ったが、フラムは首を振る。

 

 そして、コレは自分の闘いなんだと、ただそう云った。

 

 「アラタ君―――、君はススム君を安全な所へ運んでくれ!!」

 

 「チッ・・・分かった!」

 「だけど、死ぬんじゃねぇーぞ!!」

 新はフラムとサンドルが何か因縁があることを察して、フラムの言う通り、進を安全な所へ運ぶことにした。

 

 ありがとう―――、アラタ君。

 

 これで思う存分やれるよ。

 

 既にハイバネートと一戦やっており、腹部に深手を負っている状態。

 

 アレから、応急処置とエルフの住民にポーションを貰い、何とか傷口の修復は行えたが、体力や魔力まで完全に回復したわけではない。

 

 ベストコンディションではないのだ。

 

 しかし、それはヤツも同じこと。

 

 辺りの状況を察するにここでエルフの王女様と一戦交えたのは明白。

 

 この状況なら何とかなるかもしれない。

 

 いや、そんなことどうだっていい―――

 

 勝てるとか勝てないとかそうじゃない!!

 

 ヤツは僕の仲間を傷つけて、殺した。

 

 憎むべき敵なんだ。

 

 やっと、復讐の機会が回ってきた。

 

 だから戦うしかないんだ!!

 

 「セルフィ様―――!!」

 

 フラムは横で倒れているセルフィに声を掛ける。

 

 名前はこの国のエルフの人達から聞いた。

 

 どうやらこの国で一番強いらしい。

 

 だから、もし戦えそうなら共に戦わないかと提案することにした。

 

 でも、希望としては薄いだろうことも分かってはいる。

 

 彼女が倒れ、ヤツが立っている―――、それは彼女が敗北したことに他ならない。

 

 「共にヤツと戦えますか?」

 

 「私もヤツには借りがあるが、暫くは無理じゃ―――」

 

 セルフィもフラムが敵ではないことを察する。

 

 サンドルとは違い邪悪な気配が感じられなかったからだ。

 

 ということは、自分とヤツの一対一・・・。

 

 望むところじゃないか―――

 

 寧ろ、期待して恋焦がれていたくらいだ。

 

 フラムは武者震いに震える。

 

 「どうした?またあの時みたいに恐怖で震えてんのか?」

 

 サンドルは煽るようにそう云った。

 

 「恐怖?いや・・・コレは違うよ!!」

 「これから貴様を殺せることに胸が昂ってるのさ!!」

 

 「俺様を殺すだとオォォーーー!?」

 「生意気なことを言うようになったじゃねェーか!!」

 

 激高するサンドル。

 

 二人は互いに武器を手にする。

 

 そして、衝突する。

 

 フラムは力負けしない。

 

 ぶつかっても倒れない。

 

 初めてサンドルと遭遇した日から半年以上が経過している。

 

 アレから進の下、修行に修行を重ねた。

 

 《超ラーニング》を用いた効率的な修行により、短期間で常人では決して到達することが出来ないレベルに達することが出来た。

 

 それを今、ここでサンドルに発揮する。

 

 まだ流石に互角とは言い難いかもしれない―――

 

 でも、あの時より闘えている。

 

 「大分、力をつけたみてェーじゃねーか!!」

 

 ギシギシと武器の押し合いが起こる。

 

 サンドルのアッシュ・スレイ・ランスを使った攻撃に対応する。

 

 以前では考えられない。思えば、魔坑道ではサンドルは武器すら使っていなかった。

 

 それが今や武器を使用したヤツと対等に渡り合っている。

 

 自分でも大きな成長を感じられた。

 

 「赤魔法:フルブレイズ!!」

 

 フラムは片手から炎を放出する。

 

 これも以前に比べて火力、魔力密度、精度が格段に上がっている。

 

 「チッ!!」

 

 サンドルは武器によって弾き飛ばす。

 

 避けても追尾されることが分かっているからだ。

 

 このガキ―――、魔力操作も格段に上達してやがる・・・

 

 一体どうなってやがる―――、ただの人間が短期間でここまで強くなるなんて―――

 

 一年間の間にサンドルを殺さなければ、フラムの大切な人―――、エリアが永遠に目覚めなくなる。

 

 つまり、コレはチャンスなのだ。

 

 もうあまり、時間もない。ここでサンドルを殺らなければ、エリアは助からないかもしれない。

 

 だから、フラムも本気だ。

 

 「灰魔法:失われた希望ロストエスポワール

 

 サンドルは失われた希望ロストエスポワールを発動する。

 

 相手を複数の状態異常へ陥れる魔法。

 

 「ッ―――!?」

 

 フラムはそれを受け、顔を歪める。

 

 「ヒャハハハハーー!!」

 「どうだ―――、苦しいだろ?」

 

 セルフィもこの魔法を受けて、立っていられなくなった。

 

 サンドルはフラムも同じように倒れると思っていたが―――

 

 「なっ・・・!?」

 

 サンドルは目を見開き、驚く。

 

 フラムが立っている。それも戦意がまるで衰えていない。

 

 「その魔法は各種状態異常を起こす魔法―――」

 「魔坑道での戦闘で一度見ている!!」

 「だから、状態異常の対策してきているさ!!」

 

 あの戦いで何も出来なかった自分が悔しかった―――

 

 だからこそ、サンドルの再戦を夢見て、ここまで来た。

 

 やれることは何でもやった。

 

 フラムはこの時、不思議と負ける気がしなかった。

 

 

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