第557話 【ガラドミア遠征組】決戦①
~ガラドミア上空~
キル、アルマと接触後、撤退を決めたシン。
その撤退中、彼らはガラドミア上空を飛んでいた。
自由気ままに空を飛んで帰り道を楽しむ。
レプトンとクォークもスキルで空を飛ぶことはできるが、敢えて二人はシンの背中にしがみついている。
こっちの方がシンの温もりを感じられるからとのことだ。
クォーク「シン様~~何で帰っちゃうんですか(@_@)?」
レプトン「ですです―――( ・_・)」
二人はアルマを前に撤退を決めたシンの考えに疑問だった。
クォーク「シン様があの子を殺れなくてもクォーク達が殺れば良かったの―――o(^o^)o」
無邪気に笑いながら話すクォーク。
幼い少女の口から簡単に殺すという言葉が出ている。
シンに見込まれた二人の少女―――、可愛らしい見た目に騙されてはいけない。
彼女たちもまた怪物の一角。
「そうだな~~確かにお前らならあの小娘に攻撃することは出来るだろうなぁ。」
「だが、見た目以上にあの聖女は強かだ―――」
「そうなったら、心の方に主導権を渡し、お前達二人は返り討ちに遭っていた―――」
レプトン「シン様は私達がアイツらに敗けるって思ってるの(`´)」
レプトンは頬を膨らませて、機嫌を悪くしている。
レプトンだけでなく、クォークも同時に不機嫌そうにする。
「お前達二人じゃまだ心には勝てんだろうなァーーー」
シンはハッキリとそう云った。
シンの観察眼は真実を見据える。
数百という先を見据えるキルの脳のシミュレーションのさらにその先数千までを見通す。
「単純に今の心はお前達二人よりも強い―――」
「二人掛かりでも簡単に無力化される。」
クォーク「そんな~~(;_;)」
「それにオレが加わったとしてもだ―――、結果はそこまで変わらない。」
「心とアルマ―――、二人が協力するということが何を意味するのか。」
「一瞬のスイッチング、アレが自在に可能ということは、オレが攻撃を仕掛けるその瞬間、アルマに代わり、攻撃が止まった所を心に変わる―――」
「そんな芸当をされれば、オレと言えども無事では済まない。」
「オレ達はこんな所で痛手を負う訳にはいかない―――、だから今日は元より観察だけなんだ。」
「お前達二人がもっと強くなれるようにな―――」
シンは二ヤリとした不敵な笑みを浮かべる。
彼の中には既に自分が理想を叶える瞬間しか思い描いていないのだろう。
レプトン・クォーク「「分かったの(^^ゝ」」
レプトンもクォークも嬉しそうだ。
シンには心を完全に開いている。
◆◆◆
~ガラドミア内市街地~
「天童ォォーーー!!どこだあぁーー!!」
ジャックとの戦闘に勝利した新―――
進を探す為、市街地を駆け回っていた―――
「アラタ君!?」
「ん?あぁ!フラムじゃねェーか!!」
ハイバネートと闘った後のフラムと出逢う。
「ススム君は恐らくあの建物だ!!」
フラムはこの国で一番大きい建物、ガラドミア宮殿を指差す。
ここに来るまでで街の人から英雄があそこに召喚されたと聞いた。
それにさっき、あの建物から魔族の者と思われる存在と巨大なドラゴン出てきたのが見えた。
両者は明らかに戦闘をしていた―――
あの建物で何かがあるのは間違い。行く価値はある。
「本当か!?」
「おっしゃー!!待ってろよぉ天童!!」
新はまだまだ力が有り余っている。
こうして、新とフラムの二人はガラドミア宮殿を目指す。
◆◆◆
~ガラドミア宮殿内 玉座の間~
「この国の"王権"を奪いに来ただと?」
サンドルを前にセルフィは静かにそう云った。
眼の前の六魔将に怯える様子は一切ない。
長生きしているだけあってサンドルのことはよく耳にしている。
「私の"王権"をそう簡単に渡す訳がなかろう―――」
"王権"は云わば、国の心臓。
悪しき心の者に渡れば、多くの民が苦しむことになる。
王族として何としても死守しなければならない。
「じい!」
「はっ!」
セルフィが呼ぶとどこからともなくやって来る使いの者。
「私はこの魔族の相手をする。」
「だから、クロヴィスの英雄を死守せよ―――」
セルフィはそう命じた。
「承知いたしました。」
セルフィの使いは車椅子に座る進を引いて、後ろに下がった。
「アアァ・・・!?」
どこか悲しそうな声を上げる進。
セルフィのことを心配でもしているのだろうか―――
いや、今の彼は空っぽ。
感情なんてとうに消えているハズ。
心配をするなんて思考は持ち合わせていない。
「まさかセルフィ王女自ら相手をしてくれるとはなァーー!!」
サンドルはポキポキと腕を鳴らす。
まずはサンドルが手を伸ばし詠唱をする。
セルフィ相手に魔法を仕掛ける。相手がどの程度の力を持っているか見極める為だ。
「灰魔法:灰色の絨毯!」
サンドルを中心に床が灰色に変わる。
サンドルが使用する灰魔法は生命エネルギーを吸い取り、我が物にする魔法。
魔導に精通しているセルフィもそのことは熟知している。
「琥珀魔法:凍れる果ての世界!!」
「ッ―――!?」
セルフィは部屋全体に凍らせる。
「凍った世界では全てが眠る―――」
「生命など感じさせない程にな・・・」
セルフィの冷たい瞳がサンドラを突き刺す。
セルフィは敵にはとことん容赦ない。
ハッキリ、サンドルは敵と認定している。
「ほぉーー生命を吸収する灰魔法を生命を絶えさせる程の冷凍世界で対応したってことかァァ~~!!」
どうやら、灰魔法が届いてねぇーみてェーだ!!
あまりの生命力の無さにヤツの足元まで魔力が続かなかった。
エルフの王女 セルフィ VS 六魔将 鬼人族の王 サンドル。
Fight It Out!!