第552話 【ガラドミア遠征組】完璧 メルクロフ & 静弓 モロトルフ VS 殲滅 ディアブロ②
~ガラドミア市街近く~
はぁーー、全く―――
エルフやダークエルフと共闘するとか、"普通"の生活ってヤツは一体どこに行ったんすかね―――
六谷は今更、今の状況を考える。
自分が非凡な才能を持って生まれたばかりに"普通"から遠ざかっている現状を嘆く。
まぁ、いいや―――
敗けるのは死ぬより嫌だから、アイツはブッ飛ばそう―――
それにしても、この二人のダークエルフはえぇーと、六谷は人差し指で自分の額に触れる。
頭の中のインプット情報を引っ張り出す。
あの眼鏡を掛けてる方が盾使いのメルクロフ―――、物理や魔法の攻撃全てを完璧に封じ、蓄積されたダメージを相手に反射する能力を持つ。
で、あっちの弓使いのダークエルフがメルクロフの姉のモロトルフ―――、フェイルノートという弓を使って、多彩な弓スキルを使うことができる。
大体分かった―――
六谷は仕事人の顔に戻る。
一方、ディアブロの心中は穏やかではない。
前回、自分が敗けた相手―――、六谷を前にしているからだ。
しかも、聞くところによると自分との戦闘の後、アドラメレクと戦闘を行い、善戦していたと言うではないか。
自分との闘いが前座か何かであったという認識がより一層、ディアブロの闘争心に火を付ける。
「オイ!人間―――」
「貴様ハ俺ガ必ズ処理シテヤル!!」
「ハハハっ―――」
「こんな怪我人を前に冗談きついっすよ―――」
4対1―――、数では有利だが、相手は広範囲を殲滅できるゴーレム。
数が多いと言って油断は出来ない。
「フォーメーションとかどうします?」
六谷はメルクロフ達にそう云った。
「フォーメーション?陣形のことか?」
メルクロフは聞き返す。
「そうっすよ―――」
「おたく、盾使いなんすよね?」
「ってことは前衛任せちゃっていいっすか?」
「構わん―――」
「アニーもお姉さんも弓使いなら後衛で、俺も魔法使えるんで、後衛できますよ―――」
軽い口ぶりの六谷。
メルクロフはそんな六谷の軽さが気に入らなかったが、贅沢は言ってられない。
殲滅のディアブロを前に味方が一人でもいるというのはありがたい。
前衛メルクロフの後衛六谷、アニー、モロトルフの3人で話はまとまった。
この男、本当に魔法を使えるのか?
メルクロフは六谷を怪しむ。
魔術師のような杖も魔導書も持っていない―――、手に持っているのはよく分からない球体が一つ。
どう見ても魔法を使えるようには見えない。
そんなメルクロフの疑問などお構いなしに六谷は手に持った球体を前に出す。
「変形しろ!!《6-シックス・ツール》!!」
六谷の手に持った球体がその言葉で変わる。
「ッ―――!?」
メルクロフは驚いた。
一瞬でただの球体だった物が魔術師が使うような杖に変わっていた。
「それじゃあ、行くっすよ!!」
六谷がそう云って、魔法攻撃を仕掛ける。
「ウソでしょ―――」
モロトルフは顔が引きつっていた。
六谷が使用している魔法は魔族顔負けのとても高度な水準の魔法だった。
針に糸を通すレベルの高精度、大地の地形を変えるレベルの威力、大軍を軽々蹴散らせるレベルの圧倒的な物量。
「これならイケる―――!!」
「暗黒武技:ウル・ショット!!」
モロトルフは全神経を集中させた一矢をディアブロ目掛けて放つ。
アニーも二人に置いていかれないように加勢する。
「ムムッ・・・小癪ナ・・・!!」
ディアブロのボディは魔力耐性・物理耐性共にずば抜けて高い。
六谷達の攻撃などほとんどダメージにはならない。
それでも、ほんの少しずつダメージは蓄積される。
「全弾発射!!」
ディアブロが全てを破壊するように応戦する。
そこはもう火の海、爆撃の嵐。
しかし、ディアブロの攻撃は全てメルクロフがシャットアウトしている。
完璧だった―――
一切壊れることのない盾と少しずつでもダメージを受け続けるディアブロ。
どちらに軍配が上がるかは明白だ。
「クソッ!!」
「ココデ俺ガ負ケタラ今度コソ―――!!」
前回、六谷に敗けて酷くプライドを傷つけられたディアブロ。
また敗けたとなればいよいよ、魔王軍での地位も危ないと危機感が芽生える。
「コンナ奴ラニ!コンナ奴ラニィーーッ!!」
「ディアブロ―――」
「貴様は強い!!」
「だが、貴様は独りだ!!」
「だから、貴様は私達には勝てない!!」
「ウオオォォォーー!!」
ディアブロの全身から高温の蒸気が噴き出す。
草木はその蒸気に触れるだけで燃える。
それだけの熱量。
「ユニークスキル:上限無しの反撃!!」
蓄積されたダメージを全てを相手に跳ね返すメルクロフの能力。
ディアブロが蓄積していたダメージ全てを反射させる。
「コノ俺ガコンナ所デ・・・グフッ!!」
ディアブロのその重い機体が地に伏す。
相手は最強の四角と言われた殲滅のディアブロだったが、こちらは4人。
「やったか・・・!?」
思った以上にあっさり勝利してしまったことで、メルクロフの中に消化不良感が残った。