第545話 【ガラドミア遠征組】銀獅子姫 リオン VS 負荷 シエル①
~ガラドミア内市街地~
ガラドミア遠征組 VS レヴィアタン。
その闘いの様子を高所から眺めている二人の少女がいた。
どちらも見た目は可愛らしい少女なのにどこか野心に満ちたギラつく目をしている。
クォーク「あらららーー、ジャックもハイバネートもやられちゃったねー( ´∵`)」
レプトン「ねー!!アイツ等自信満々に出ていった割に情けないねー(^·ェ·^)」
クォーク「シン様に報告だー!報告ーー(^ν^)」
レプトン「ねぇー、クォークあっちみて!!あっちでもまたバトルが始まりそうよΣ⊙▃⊙川」
少女達の目線の先にはリオンとシエルの二人。
数キロ地点のその二人を少女たちはハッキリと捉えている。
「どうしてもアタシと闘うって言うのー?」
シエルはリオンとは闘いたくなさそうだ。
「アタシ、キレイなものは汚したくないタイプなんだよねー!」
「??」
シエルはそう云って、上目遣いでリオンを見つめる。
リオンは無言でその顔を見る。
シエルが何を言っているか理解できない。
「ほら、リオン姫可愛い女の子だからサァーー!!」
リオンが気づいたらすぐ目の前にシエルがいた。
何時の間に―――
既に攻撃の間合い。
あまりにも突然のことで身体が動かない。
シエルはリオンの唇を人差し指で触れる。
プニプニ柔らかいリオンの唇に満足そうな表情をする。
「何をするかッーー!!」
やっと動いたリオン。
鞘から剣を引き抜き、シエルを斬りつけようとする。
「おっとーーー!!」
「いきなり危ないなー!!」
シエルは身体を後ろに引き、リオンの剣を躱す。
近くにいて気付いたあのシエルの身体を覆った薄膜。
シエルが触れても割れない。
何だ?あの膜は・・・?
リオンは疑問に思う。
「ふぅーー!リオン姫激しいィーー!!」
何故か嬉しそうなシエル。
「そんなにアタシと闘い合うたいならいいよ!!」
「付き合ったげる!!」
少しやる気を出すシエル。
「泡魔法:淡い泡」
シエルの周囲に泡が湧き出る。
シエルの魔力で作られた泡。
「なんだこの泡は・・・!?」
リオンは警戒する。
今まで泡を使用してきた敵と戦ったこと等ない。
未知の戦法に戸惑う。
シエルはどこから取り出したのか、手に魔導士の杖を持っている。
「ふふん・・・♪」
「みんな綺麗にしてあげる!!」
シエルはそう云うと、周囲の泡を発散させた。
バタッー!!
バタッー!!
周りにいたエルフや魔獣たちがその泡に触れると一気に脱力が始まり、立っていられなくなる。
触れた者すべてに『脱力』を与える―――、それがシエルの泡の正体。
触れたものに負荷を掛ける "負荷"のシエルの由縁。
「ガルルル・・・!!」
地面に伏せている魔獣がシエルを睨む。
魔王軍が飼っている魔犬だろうが、シエルは容赦ない。
「醜い顔ね―――」
「お掃除しなくちゃ♪」
バキバキバキバキバキバキ!!
力いっぱい、手に持っている杖でその魔犬を殴り掛かる。
硬い骨が折れる音、鮮血が噴き出す様子、全てリオンの眼の前で行われる。
自分たちが飼っている魔獣であるにも関わらず容赦が一切ない。
「キャハハハハハーーー!!」
そのシエルの笑みはただただ愉しそうだ。
「な・・・なんて酷いことをッ!!」
魔犬はピクピク身体を動かし、虫の息だ。
「ふぅーー、やっと黙った―――」
「お掃除完了ね。」
改めて、シエルは周りを見渡す。
もはや、シエルの周りに立っている者は、リオンとエルフの少年だけだった。
「うん、その子―――」
「邪魔だね―――!!」
「ココにいていいのは綺麗なアタシとリオン姫だけだよ♪」
シエルは泡を操作して、エルフの少年の方へ放つ。
「ッ―――!!」
少年は小さく身を屈めて、目を瞑った。
恐怖から身体が動かなくなっていた。
「銀魔法:銀鏡の障壁!!」
間一髪リオンの銀魔法が少年を守る。
「リオン姫・・・。」
シエルは驚いた表情をする。
自国の民でもないエルフの少年を何故、リオンが守るのか理解できなかった。
「少年―――、ここは危険だ!」
「少し離れてなさい。」
リオンが少年の頭に手を乗せ、笑顔で言い聞かせる。
その笑顔は優しい笑顔だ。
これから戦闘をするとはとても思えない。
「う・・・うん!!」
エルフの少年だって、今が緊急事態であることは分かっているさ。
だからこそ、リオンを心配させないように逃げることを選んだ。
リオンの言う通り、すぐに走った。後ろを振り返ることもなく。
「待たせたな―――」
リオンがシエルの方を向いた。
「・・・・・。」
シエルは無言でリオンを見る。
追撃はしない。
不意打ちもしない。
他のレヴィアタンならそうしたかもしれないが、シエルはそんなことしない。
あくまで、シンプルに純粋に暴力を振るう。
自らの能力を用いて、相手をひれ伏し、力の関係性をハッキリさせる。
「うん、アタシには理解できないね―――」