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第543話 【ガラドミア遠征組】爆炎 フラム VS 監視者 ハイバネート②


~ガラドミア内市街地~

 

 「どこに隠れているのか知らないが、貴様が姿を現さないと云うのなら、ここにいるエルフ達を一人ずつ殺していくだけだッ!!」

 

 正しいだけじゃ生きていけない―――

 

 時には勝利の為、卑怯な手だって使う。

 

 ハイバネートは怯えたエルフの少年・少女達に魔爪を向ける。

 

 どこかに隠れているフラムを誘き出す為だ。

 

 

 どうする―――?

 

 ヤツの言葉通り、ここで出ていくのか?

 

 まだ、腹の傷が完全に塞がっていない。

 

 フラム―――、とりあえずの応急処置はしているが、腹部からまだ血が出ている。

 

 こんなことならヴィクトルからポーションを貰っておけば良かった・・・。

 

 フラムは後悔するが、今更そんなことを言っていても仕方ない。

 

 腹部の傷の他にハイバネートの前に出るのを躊躇う理由が、ハイバネートの能力の正体が分からないことだ。

 

 ヤツの能力の正体が分からない以上、ここで出て行ってもやられる可能性が高い。

 

 でも、エルフとは言え、あんな年端も行かない子を見殺しにするようなことは出来ない―――

 

 フラムは迷っていた。

 

 そんな陰で様子を伺っている間―――

 

 エルフの女性が一人立ち上がった。

 

 さっき、フラムがハイバネートの攻撃から守った人だ。

 

 「もういい加減にして・・・!!」

 

 エルフの女性は震える声でそう云った。

 

 ハイバネートが恐いんだろう。

 

 「やるなら私からやりなよッ!!」

 

 女性は覚悟を持った声で叫んだ。

 

 さっきまで怯えていた彼女とは思えない。

 

 散々、同胞を殺されてついに魔族に怒りが爆発した。

 

 圧倒的な力の差がありながらもその姿は勇ましかった。

 

 勇気ある行動だった―――

 

 しかし、それがハイバネートの気に喰わない。

 

 「そうか―――、君はそっち側なのか!」

 「素直にしていれば命が助かったかもしれないのに―――」

 

 ハイバネートは爪を振り下ろし、その子の命を奪おうとする。

 

 その時、フラムが再び、剣で受け止める。

 

 本日、二度目の死守―――

 

 誰かの為に動ける人間の命が奪われるなんて現実が受け入れられない。

 

 どこまでも優しい心を持つ。

 

 「やはり、出てきたか―――」

 「君もそっち側ってことだなっ!!」

 

 ハイバネートの腕に力が入る。

 

 「僕はもう逃げないッ!!」

 「どれだけ痛かろうが、傷だらけになろうが、恐い思いをしようが―――」

 「立ち上がるッ!!」

 

 そうだ―――

 

 君がそうしたように―――

 

 僕もあの時、勇気を貰ったんだ。

 

 何度も強敵を前にして怯むことなく突き進む君の姿に―――

 

 救われたッ!!

 

 ススム君!!

 

 だから今度は僕が君のことを救いたいんだッ!!

 

 フラムの周囲に炎が巻き上がる。

 

 「炎だと・・・!?」

 

 ハイバネートはその暑さを肌で感じる。

 

 フラムはハイバネートの能力の正体が分かった訳じゃない。

 

 それでも、目の前の命の方が大切だと―――

 

 黙っていられるほど、物分かりが良い訳ではない。

 

 「僕は君と違って、"監視者"じゃないッ!!」

 「誰かが助けを求めているのなら動けるッ!!」

 「だから、何度でもこの刃を振るおうッ―――!!」

 

 

 「極大赤黄魔法:爆熱の心臓フラムハート!!」

 

 フラムは全身が炎のように赤くなる。

 

 全身から熱気が迸る。

 

 高熱を帯びたフラムは飛躍的に身体能力を向上させる。

 

 

 速いッ!?

 

 重たい鎧を纏っているとは思えぬ俊敏さ。

 

 ザスッーーー!!

 

 ハイバネートの左の魔爪を一刀両断。

 

 「ッ―――!?」

 

 あんなに硬かった魔爪が簡単に切断された。

 

 断面は熱さで火が出ている。

 

 「まさか、これほどの力を君が有しているとは・・・!?」

 

 心底ハイバネートは驚いていた。

 

 勝てる勝負しかしない。

 

 最初にフラムから感じていた甘さを今は全く感じない。

 

 容赦なく、自分を殺しに来ている。

 

 「これじゃあ、本当の"殺し合い"じゃないか!?」

 

 殺し合いはしない主義。ただ一方的に殺すことは好き。それがハイバネート。

 

 だから今一度使う。

 

 「ユニークスキル:監視者は(リザーバー)保護されている(オブザーバー)!!」

 

 ハイバネートの身体がまたもや怪しい雰囲気を纏う。

 

 フラムは一秒間に何十回も剣技を振るう。

 

 そのどれもが人体を焼き切るように―――

 

 しかし、手ごたえが全くない。

 

 さっきと一緒だ!!ハイバネートの身体がまるで煙みたいに掴めない。

 

 やはり幻覚系のスキルなのか―――

 

 だとしたら、自分に対抗する手段は存在しない。

 

 熱の力で身体能力を向上させたフラム―――、この形態もそう長い時間は持たない。

 

 精々持って数分、時間制限があるのだ。

 

 フラムが攻略法が探っている間にハイバネートは反撃に動き出す。

 

 ギュルルルルルーーー!!

 

 ハイバネートの右手の魔爪が触手のようにフラムの身体に纏わりつく。

 

 フラムの行動を制限する。

 

 「グっ・・・!?」

 

 フラムは必死にもがくが、なかなか抜け出せない。

 

 時間がないというのに・・・!!

 

 フラムは焦る。

 

 だが、抜け出せない。

 

 そうこうしている内にハイバネートの左手の魔爪が再生する。

 

 「ククク・・・!!」

 「いい動きをするようになったが、こうなってしまっては手も足も出せないだろうな―――」

 

 ハイバネートは復活した左の魔爪をフラムの傷となっている腹部にゆっくりと突き刺していく。

 

 「ぐああぁぁッーー!!」

 フラムは痛そうに声を上げる。

 

 傷口を抉るような真似をしてハイバネートは愉しんでいる。

 

 仮面で顔は見えないがきっと満面の笑みだろう―――

 

 「どうしたぁ!?」

 「赤髪の剣士!!さっきの威勢はもう終わりか!?」

 

 明らかな挑発―――

 

 ズブズブズブ・・・

 

 数センチずつゆっくりとフラムの腹の奥に爪を差し込む。

 

 フラムの内蔵の壊すように・・・ゆっくりだ。

 

 フラムの腹の中でうねうねと動くのが伝わる。

 

 ハイバネートは決めていた。

 

 フラムのことは楽には殺さないと―――

 

 クソっ・・・こちらの攻撃が通らないのに・・・

 

 一体どうしたら・・・

 

 フラムは答え等持っていなかった。

 

 でもこのまま何もしなければやられるのは時間の問題―――

 

 だから、イチかバチか限界レベルの出力の炎で攻撃してみることにした。

 

 「極大紅魔法:フレアバーニングッ!!」

 

 拘束されていた両手で何とか生み出した光球をハイバネートの足元目掛けて放った。

 

 本当はハイバネートの顔面を狙いたかったが、両腕がガッチリ拘束されている為、それは出来ない。

 

 フラムの創り出したフレアバーニング―――、小さな太陽。

 

 温度も太陽と遜色ない。

 

 熱に耐性のあるドラゴンの鱗だって、簡単に溶かしてしまうだろう。

 

 まぶしい光が両者の視界を奪う。

 

 「グっ・・・!?」

 「こ・・・コレはまさか!!」

 「グオオオォォォーーー!!」

 

 「えっ・・・!?」

 

 フラムは驚いたような表情を見せる。

 

 だって、ダメ元で放ったフラムの最大火力魔法がハイバネートにダメージを与えているようだったから。

 

 

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