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第541話 【ガラドミア遠征組】超人 唯我 新 VS 魔弾 ジャック③


 『ジャックは魔族の癖にいつも変な機械を弄ってるんですよ―――』

 

 『アイツは生まれながらにして魔力が弱い魔族の落ちこぼれだ!!』

 

 ミーは魔族の中でも変わり種として周りから囁かれ、疎まれ、虐げられてきた。

 

 ミーだって、他の魔族みたいに武器を振り回してみたり、魔法を唱えてみたりしてみたかった―――

 

 でも、ミーにはそんな才能が無かった。

 

 力が全ての魔族社会でミーの存在などゴミクズ同然だった。

 

 『おい!ジャック―――、またその変な機械弄ってんのかよ!!』

 

 ドカッ!!

 

 「イタッ―――!!」

 

 同じ歳の魔族に突き飛ばされる。

 

 同じ歳でも魔力や腕力に差があり過ぎる。

 

 突き飛ばされた拍子に手に持っていた機械が地面に落ちてしまう。

 

 「あぁ・・・!!」

 

 急いで拾い上げようと、ジャックが手を伸ばすが、その突き飛ばしてきた魔族に足で踏みつけられ、壊されてしまう。

 

 「ヒ、ヒドイ・・・!!」

 

 とても悔しかった―――

 

 眼から涙が溢れ出そうだった。

 

 でも、仕方ない。

 

 こうなってしまったのは、力のない自分が悪いんだとどこか諦めた感情が沸いていた。

 

 「ククク・・・悔しかったら力のない自分を恨むんだな~~!!」

 

 その同じ歳の魔族もそんなことを言っていた。

 

 それが正しい。

 

 力が有る者が力の無い者から全てを奪う。

 

 それが世界の真理で、正義なんだ。

 

 その日からさらにミーに対する仕打ちが強まった。

 

 殴る蹴るの暴行が日常化していた。

 

 その時の経験が今の受け流しの技術の習得に繋がっていた。

 

 ミーは悔しかったからいつか絶対に復讐をしてやろうと心の奥底に誓っていた。

 

 自分に出来ることは機械弄りしかない。

 

 そこから魔力や腕力が無いミーでも扱える"武器"を作り出せないか必死に考えた。

 

 必死に必死に必死に考えた―――

 

 そうしなければ、いつか自分が彼らの暴力で死んでしまうから。

 

 でもそんな中、ミーは途中であることに気付いてしまったんだ―――

 

 それから数年後―――

 

 「な・・・何だよそれッ!?」

 「見たこともない武器だ!!」

 

 引き金を引くだけで相手を無力化できる。

 

 ミーが造った武器。

 

 どこかの国では量産されているらしいが、ここは魔族領。

 

 彼らは見たことすらないだろう。

 

 必死に自分だけの武器を探して、辿り着いた。

 

 これなら力の弱いミーでも力を持つ者に対抗できる。

 

 バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!

 

 ミーは彼らの足を撃ち抜いてやった。

 

 今まで散々痛めつけられたお返しだ。

 

 「痛ッ―――!!」

 

 痛いか?でもミーが長年受けた暴力はこんなものではなかった。

 

 彼らに情けなど掛けるつもりは毛頭なかった。

 

 力がないというだけで虐げられてきたんだ。

 

 復讐したって何の問題もない。

 

 ジャックはそう思っていた。

 

 そして最後に彼らの心臓をその弾丸で貫いた。

 

 絶命したよ。簡単にね。

 

 「ウオオォォォっーーーー!!!!」

 

 ジャックは叫んだ。腹の底から大声で。

 

 

 そして、確信した。

 

 ジャックは暴力を受け続けて、その美しさに簡潔さに力強さに魅了されてしまったと。

 

~ガラドミア市内~

 

 「グ・・・グハッッ!!!」

 

 ジャックは新の無からの解放ゼロ・フリー・ナックルを受け続け、内臓が壊され、吐血してしまう。

 

 しかし、それでも新の無からの解放ゼロ・フリー・ナックルは止まらない。

 

 相手が泣こうが、叫ぼうが、血を吐こうが、絶命しようが、殴り続ける。

 

 それが無からの解放ゼロ・フリー・ナックル。

 

 解除する手段は新が技を解除するのみ。

 

 「ググオオオォォーーー!!」

 「ミーは暴力の象徴"レヴィアタン"だぞ!!」

 「こんな・・・こんな暴力に屈するなんてあっちゃならないんだッ!!」

 

 口では強気なジャックだが、既にその身体は限界だった。

 

 バタンッ―――

 

 ついにジャックの背中が地面に着いた。

 

 それでも無からの解放ゼロ・フリー・ナックルは止まらない。

 

 ドドドドドドッーーー!!

 

 留まることを知らない連打。

 

 「グガガガ・・・!!」

 

 必死に耐えるジャック。

 

 どうすればいいか思考を巡らす。

 

 もう意識も保てそうにない。

 

 試しにエネルギー発生源と思われる新へ銃口を向けてみる。

 

 「撃ってみろよ―――」

 

 新はジャックを見下ろしながらそう云った。

 

 クソッ―――、余裕な顔で云いやがって!!

 

 ジャックは最後の気力を振り絞り、引き金を引いた。

 

 銃弾は新の頬を掠る。

 

 新は立っているだけで、避けようとすらしない。

 

 この痛みのせいで照準が定まらない。

 

 最初は腹部への一発が既に全身に広がり、肋骨、両肩、右手、左手、右足、左足。

 

 次々と人体の部位を一つ一つ壊されていった。

 

 こんな所でミーは敗けるのか・・・!!

 

 敗北を受け入れてしまいそうになる。

 

 ジャックの意識が完全に失いそうになるその時、新が無からの解放ゼロ・フリー・ナックルを解除する。

 

 「ッ―――!?」

 

 この行動にはジャックは驚いた。

 

 まさかミーに情けを掛けるつもりか―――

 

 その驚きは途端に怒りに変化する。

 

 敵に情けを掛けられる・・・それは戦士にとってこれ以上ない屈辱。

 

 「・・・まさか・・・ミーに・・・情けを掛けるのDEATHか!?」

 

 ジャックは喉も潰されて、声が上手く出せない。

 

 やっとの思いでか細い声が出せた。

 

 「ア"ァ"―――!?」

 「俺がやってんのは殺しじゃねェー!!」

 「ただの喧嘩だよ!!」

 「命まで奪うつもりは最初からなかったんだよ!!」

 

 新はそう云った。

 

 それほどの力を持ちながらなんと甘いことかとジャックは心の底からそう思った。

 

 でも声が出せない。

 

 「それにもう嫌なんだよ―――」

 「この手で誰かの命を奪うなんざよォーー」

 

 新の脳裏にP3にとどめを刺した時の光景が蘇る。

 

 自分の甘さを捨てる為にP3の命を奪ったが、あの時結果としてP3は機械だった。

 

 つまり、新は人の命を奪っていない。殺人を行っていない。

 

 あの時、心のどこか底でホッとした自分がいたことに新は気付いた。

 

 そして、誓った。

 

 もう二度と人を殺すような真似はしないと。

 

 どれだけ自分が甘いと言われようが、自分は自分の自由に道を歩くんだと誓った。

 

 だから、ジャックに対する無からの解放ゼロ・フリー・ナックルを解除した。

 

 「また・・・今度ミーが・・・テメェーの・・・命を狙うとは、考えないのか?」

 

 ジャックからしたら当たり前の疑問だ。

 

 魔族は執念深い。

 

 相手を屈服させるまで何度でも執拗に攻撃を続ける。

 

 ここで自分にとどめを刺さなければ今後、何度も新のことを付け狙うだろう。

 

 「ハッ!望むところじゃねェーか!!」

 「何度でも掛かってきやがれッ!!」

 「全勝してやるよ!!」

 

 

 そう自信満々に言い切った新。

 

 そして、ジャックに近づく。

 

 

  「だから―――、生きろッ!!」

  「ぜってェー、死ぬんじゃねェーぞ!!」

 

 新はジャックに顔を近づけそう云った。

 

 「ッ―――!?」

 

 こんな男が今までいただろうか―――

 

 勝負に敗けたものは命を奪われる。

 

 それが勝負の世界では当たり前だったのに。

 

 この男は、勝負に敗けたミーに生きろと云うのか。

 

 生きる・・・生きる?

 

 DEATHじゃなくALIVE?

 

 「ミーの完敗です―――」

 

 ジャックは涙を流して敗北宣言をする。

 

 新 VS ジャック

 

 新の勝利でフィニッシュ。

 

 

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