第539話 【ガラドミア遠征組】超人 唯我 新 VS 魔弾 ジャック①
~ガラドミア市内とある民家~
「ミーをブッ飛ばすゥ~~~???」
新の言葉に鼻で笑うジャック。
リボルバーのトリガー部分を指にはめ込み、グルグルと回転させている。
自分が敗けるなんて微塵も考えちゃいない。
新は身体をユラユラと左右に揺らす―――
特攻ッ―――!!
四の五の言わずにその拳をジャックの下顎目掛けて打ち込む。
スンッ―――!!
新の拳が空を切る。
空振り?
ジャックが脅威を感じて、身を引いた?
NO、NO!!
新がわざと外した。
「・・・・。」
一瞬で無言となるジャック―――
一瞬で新を雑魚から敵とみなしていた。
「今のが視えたかよ―――?」
新は余裕の表情で右手をプラプラさせている。
「ガキが調子に乗るんじゃないDEATH!!」
雄が二匹向かい合ったら、やること等一つしかない。
それが喧嘩だ。
新、今度は容赦なく大きく拳を振り下ろす。
武でも技でもなんでもないただ力任せに両腕を振り下ろす。
ジャックは大きく後ろに飛び跳ねる。
エルフの親子はその様子を震えながら見守る。
「お・・・お兄ちゃん、頑張って!!」
震える声で幼いエルフの少女は新を応援した。
彼女には新がピンチの時に現れた正義の味方に視えて仕方なかった。
そんな幼いエルフの応援にも新は反応することなく、後ろに飛び跳ねたジャックを追いかける。
ただ闘争を求めて―――
ジャック、高速で銃弾をリロードする。
弾倉に弾丸を詰め込み、そしてシリンダーを回転させる。
「銃は剣よりも強し、銃は拳よりも強しッ!!」
「ミーのリボルバーの前に素手で向かってくるとは無謀DEATH!!」
「SHOTッ―――!!」
ジャックは引き金を引いた。
その弾道は通常の銃とは異なり直線的ではない。
ジャックの魔力が込められた弾丸は、滑らかな曲線を描き、新の肉体を傷つけようとする。
「オラアァーーー!!」
力強く握られた拳は弾丸を弾く。
長い年月を費やしてきた武闘家の拳は岩をも砕くと言うが―――
まさかこんなガキがそうだって言うのかァァ~~??
そんなことを考えている間に新はジャックとの距離を詰める。
ガシッ!!!
新がジャックの右腕を掴む。
「捕まえたぜエェーーー!!」
ジャックは大きく眼を見開く。
ギチギチギチっっ・・・・!!
新の握力がジャックの腕を歪ませる。
「その程度の力でミーを追い詰めたつもりかァーー!?」
ズキュン、ズキューーン!!
新の背後から二発撃ち抜かれる。
「ア"ァ"―――!?」
思わず新が振り返る。
今、撃たれた?
初めに打ったジャックの弾丸が軌道を変えて、新の腹部を貫いていた。
ジャックは自分の魔力を込めた銃弾の軌道を自由自在に操ることができる『魔弾』の異名を持つ男。
「銃はミーの身体の一部みたいなものDEATH!!」
「ごちゃごちゃうるせェーーよ!!」
腹部を撃ち抜かれたにも関わらず、新の闘争心は何一つ変わることない。
ただ、真っ直ぐ―――
ひたすら真っ直ぐに、ジャックを見据える。
このガキ、やっぱり結構厄介だなァ~~~
クロヴィス城で異様な粘り強さを見せていた新。
その時からジャックは新に警戒心を抱いていた。
腹部の傷も既に塞がっている。
コイツ本当にただの人間か?
新の拳はジャックを射程圏内。
まずは、右フックからの左アッパー!!
ジャックの足が地面から離れる。
その後は、新の上段回し蹴りがジャックを捉え、強い衝撃で地面へ叩きつけた。
「どうだ、オラっ!!」
「ちったぁーー!目が覚めたんじゃねェーか!?」
新の拳はこれまで多くの魔族を戦闘不能にしてきた。
つまり、魔族が相手であっても充分に通用する。
「コイツは驚いたZE~~~」
「たかが、人間如きがここまでの"暴力"を有しているとはなァ~~~」
衣服に付いた砂埃を手で払いながら、何食わぬ顔でジャックは立ち上がる。
新の打撃が効いていないのか?
「テメェー何か技使いやがったなァ~~!!」
新は違和感に気付いていた。
数発の打撃を与えた時の感触が期待していたそれとは微妙に違ったからだ。
「何のことだかなァ~~~」
ジャックはとぼけた顔をする。
「とぼけんじゃねぇーーぞ!!」
さらに距離を詰める。
「オラオラオラオラぁーー!!」
ひたすら連打、ラッシュ。
ひらひらとしなやかな動きでジャックは新の拳打を躱す。
そして、隙を見て引き金を引く。
「弾けるDEATH!!」
ジャックの弾丸が新の左肩をヒットする。
ヒットした弾丸は、そのまま新の体内に入り込み、爆発する。
「クソッ!?」
傷口からダラダラと血が流れる。
まるで意志を持ったかのような銃弾にジャックの受け流しの技術。
新は苦戦を強いられていた。