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第536話 【ガラドミア遠征組】ガラドミア内戦闘⑥


~ガラドミアの近く~

 

 「ねぇ・・・メルクロフ―――」

 

 「何だい、姉さん―――?」

 

 「もしかして、まだ彼らのこと恨んでるの?」

 

 「そんなことないよ―――」

 

 ガラドミアの中へ入ろうと足を進めるメルクロフとモロトルフの二人。

 

 メルクロフの歩く速度がいつもより遅いことに気付くモロトルフ。

 

 長年一緒にいる為、そんな些細なことにも気付いてしまう。

 

 「そう・・・ならいいんだけど―――」

 

 モロトルフは少し悲しそうな顔をする。

 

 モロトルフとメルクロフは姉と弟という関係。

 

 幼い頃はこの辺りに住んでいたこともある。

 

 この地はエルフの故郷。

 

 しかし、ダークエルフという肌が黒く、暗黒の力を有しているというだけで他のエルフから白い目で見られたこともある。

 

 モロトルフとメルクロフの母親は二人が幼い頃、この地で亡くなった。

 

 元々、二人の母親は身体が弱く、病気を患っていたが、ダークエルフというだけで彼らはガラドミアへ入ることも許されず、医者に診てもらうこともできなかった。

 

 仕方ないから人間の医者に診てもらおうと、北の地へ行ったこともあるが、そこでもダークエルフというだけで拒否された。

 

 そして、二人は頑張って母親の為、尽くしたが、彼女はベッドの上で安らかに眠った。

 

 二度と目を覚まさなかった。

 

 モロトルフとメルクロフの二人は今まであの時のことを忘れたことはない。

 

 その後、二人は心の優しい人間のシスターに拾われ、孤児院で暮らすことになったが、そこでも他の人間たちにダークエルフというだけで迫害を受けた。

 

 100年近く経った今でもあの時のことは忘れてはいない。

 

 モロトルフだって、当時のことを嫌なことだったと感じているが、それで他のエルフ族に復讐をしたりする気はサラサラない。

 

 でも、メルクロフはそうは思ってないかもしれない。

 

 彼の中にまだ当時のエルフ達に対する恨みを抱いているかもしれない―――

 

 モロトルフはそれを危惧していた。

 

 「メルクロフ―――、見て!!」

 モロトルフは木に実っている果実を指差した。

 

 メルクロフはモロトルフが指差した方向へ目を向ける。

 

 そこには赤い果実が実っている。

 

 「私達よくアレを食べて二人で喜んでいたよね―――」

 

 そんなこともあったなと、メルクロフは思い出す。

 

 その思い出の中には優しかった母親の記憶が蘇る。

 

 「そうだね、姉さん。」

 「あの頃は母さんもいて、楽しかった―――」

 

 モロトルフは指に少量の魔力を込め、木に実っていたその果実を撃ち落とす。

 

 そして、モロトルフとメルクロフの二人はその果実を口にする。

 

 ちょっと酸っぱいけど、口の中に懐かしい甘みが広がる。

 

 「メルクロフは今も楽しい―――?」

 モロトルフは唐突聞いてきた。

 

 「あぁ・・・楽しいよ!」

 

 メルクロフはすぐにそう返した。

 

 今は姉さんだけじゃなく、モレク様やジャハンナムのメンバーがいる。

 

 彼らは自分の家族だと思っている。

 

 そんな家族との時間はかけがえのないものだ。

 

 どうして唐突にそんなことを聞くのだろうとも思った。

 

 「私も同じだよ―――」

 「メルクロフだけじゃなくて、みんなと一緒にいられて嬉しい!」

 「だから、もう過去に囚われないでいいんだよ―――」

 

 「ッ―――!?」

 

 メルクロフに衝撃が走った。

 

 別に過去に執着したつもりはなかったが、もしかしたらモロトルフの言う通り、自分は過去に執着していたのかもしれない。

 

 「・・・・そうだね、姉さん。」

 

 メルクロフはそう云った。

 

 そんな二人の上、上空に黒光りする金属生命体が飛翔している。

 

 「あ・・・アレは!?」

 

 二人はその存在が誰か知っている―――

 

 「"殲滅"のディアブロ!?」

 

 「マズイ!?」

 「今、ヤツにガラドミアへ入られたら、あの国は火の海になるぞ!!」

 

 メルクロフがそう云った。

 

 殲滅のディアブロ、南の大国『ブロワ王国』を数日で滅ぼした恐ろしい金属生命体。

 

 身体に備え付けられた数々の兵器は広範囲を破壊し尽くす。

 

 ヤツが通った後には生命が存在しないとまで謂われた。

 

 故に"殲滅"のディアブロ。

 

 「メルクロフ!!なんとしてもヤツをガラドミアへ入れないようにしないと!!」

 

 モロトルフはすぐに弓を構え、ディアブロへ目掛けて放った。

 

 魔力を帯びた矢はディアブロの身体に届く。

 

 ドンっ!!!

 

 確かにモロトルフの弓は当たった―――

 

 しかし、その頑強なディアブロの身体を傷付けるには至らない。

 

 今の一撃でモロトルフ達は気付かれた。

 

 「コノ矢ハ・・・マサカ・・・!?」

 

 メルクロフ達がディアブロを知っているようにディアブロもまたメルクロフ達のことを知っている。

 

 ディアブロはその矢が向かってきた方向へ両手を合わせる。

 

 そして、熱感知機能を発動する。

 

 「生命反応アリ・・・対象ハ二体!!」

 「コノ生命反応ハ、ヤハリ間違イナイ!!」

 「ジャハンナムノメルクロフトモロトルフ!!」

 

 そう分かった瞬間、全身から発射口がむき出しになる。

 

 そして、大量のミサイルが射出される。

 

 「姉さん―――!!」

 「伏せてッ!!」

 

 「完璧な障壁パーフェクトガード!!」

 

 大量のミサイルを全て防ぎ切る。

 

 メルクロフの防御は完璧。

 

 どんな攻撃もその防御を壊すことは出来ない。

 

 「姉さん―――、大丈夫!?」

 モロトルフはそう聞いた。

 

 自分の防御に絶対の自信はあっても、モロトルフは実の姉。

 

 心配にもなる。

 

 「えぇ、私は全然平気よ―――」

 「それよりも・・・。」

 

 プシュー――っ!!

 

 ディアブロは空気の抜ける音を出しながら、地面に着陸する。

 

 「ヤハリ、貴様ラ姉弟ダッタカ―――」

 黒い鋼鉄のボディに赤い光を発する瞳。

 

 

 「ディアブロ・・・。」

 

 「何故、貴様ラガ、エルフ二味方スル?」

 「ダークエルフハ、エルフカラ迫害サレテイタト聞クゾ!!」

 

 ディアブロはエルフ族のことも知っているらしい。

 

 ただの意志を持たぬゴーレムではない。

 

 どういう原理かは分からないがちゃんと思考を持っている超高性能なゴーレムだ。

 

 「ダークエルフがエルフを守って何がおかしい?」

 

  "メルクロフ―――、貴方が皆を守ってあげるのよ!"

 

 何でこんな時にあの人の言葉を思い出してしまうんだろうか―――

 

 メルクロフの脳裏に浮かんだのは、孤児院で自分達を育ててくれたシスターだった。

 

 あの孤児院での日々があったから今がある。

 

 「私は私が守りたいものを守るッ!!」

 「それが例え誰が相手だとしてもだッ―――!!」

 

 ディアブロは間違いなく格上の相手。

 

 それでもメルクロフは一歩も引かない。

 

 引いたら守りたいものを守れなくなるからだ。


 メルクロフ & モロトルフ VS ディアブロ

 

 Fight It Out!!

 

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