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第534話 【ガラドミア遠征組】ガラドミア内戦闘④


~ガラドミア内市街地~

 

 魔族の襲撃を受けて、家々は壊れ、道のあちこちには死傷者が多数いる。

 

 このまま魔王軍の奴らを放置すれば、この被害はさらに広がるだろう。

 

 「ヒドイ有様だ―――」

 

 リオンは辺りから砂埃が出ている道を掻き分けて走り続けていた。

 

 「あの二人は上手くやれているだろうか―――」

 

 新とフラムは既に動き出し、どこに行ったかも分からない―――

 

 恐らく、魔王軍と戦闘になっているだろう。

 

 私は私でキルから魔王軍の連中を止めて欲しいと頼まれている。

 

 勿論、云われなくてもそうするつもりだ。

 

 「ひっぐ・・・うぅ・・・。」

 「お母さん―――、どこぉ?」

 

 リオンは走っていると、一人のエルフの子どもが泣いていた。

 

 母を探しているのだろうか。

 

 服はボロボロになり、俯き、涙を流している。

 

 親とはぐれてしまったのだろうか―――、それとももう・・・。

 

 そんなことが脳裏に過ってしまう。

 

 あんな小さな子どもまで戦争に巻き込まれ、可哀想だ。

 

 しかし、今は魔王軍の連中を止めなければ―――、更なる被害につながる。

 

 リオンはその子どもを横目に道を走り抜けようとするが―――

 

 「・・・・・・。」

 

 「ひっぐ、ひっぐ―――」

 

 ポンっ―――

 

 リオンはその柔らかい手でエルフの少年の頭を撫でる。

 

 「あぁ~~♪大切な~~~あの人が~~♪」

 「今日も私に微笑みかけて~~♪」

 「それを~~~♪私は幸せだと感じ~~♪」

 

 「お姉ちゃん―――?」

 

 リオンはその美しい声で歌い始めた。

 

 少年を元気づけようと歌を歌った。

 

 あの少年がもし自分の国の民だとしたら―――

 

 確かに魔王軍の攻撃を止めることが優先するべきことだが、一国の姫として、傷だらけの少年をそのままにすること等出来なかった。

 

 そのリオンの歌声は素晴らしく、他の傷だらけエルフ族の耳にも届き、彼らを勇気づけた。

 

 こんな地獄のような状況でも希望があるんだとそう思わせるような歌声だった。

 

 「少年、元気になったか?」

 

 リオンは優しく微笑みかけた。

 

 「うん!!ありがとう、お姉ちゃん!!」

 

 少年の笑顔が戻って、リオンの耳はピョコピョコと動いていた。

 

 そう云ってもらえて、リオンも嬉しかったのだ。

 

 「貴方、いい歌声で歌うじゃん―――」

 

 背後から女の声がした。

 

 リオンは驚いて後ろを振り返る。

 

 そこにはオレンジ色のショートヘアの魔族の少女がいた。

 

 「魔王軍―――?」

 

 そういえばこの子、見たことがある。

 

 確か、クロヴィス城に六魔将が揃ったあの時、そこにいた。

 

 であれば、間違いなく魔王軍の戦闘員。

 

 こんな女の子が魔王軍にいるなんて―――

 

 ぱっと見た感じ、自分とそう大差が無いくらいの年頃の少女。

 

 「そっ―――、アタシは魔王軍 レヴィアタンの一人、負荷の『シエル』!」

 「ヨロシクねっ―――!!」

 

 魔王軍とは思えない位、明るくてフレンドリーだ。

 

 よく見たら薄い透明な膜が彼女の全身を包んでいる。

 

 「貴方、もしかしてレオン姫?」

 

 シエルはリオンがクロヴィスの姫であることに気付いた。

 

 「いかにも、私はクロヴィス王国の姫フィラー=アレクサンドル・リオン!」

 魔王軍の前でもちゃんと名乗る。

 

 名乗った上で、剣を構える。

 

 シエルがこの惨状を生み出した魔王軍の一人であることには変わらない。

 

 「うーん、その剣はもしかして、私と闘る気ってこと?」

 

 剣を向けられて、シエルはそのことに気付く。

 

 「無論だ―――」

 「キルに頼まれているのだ!!」

 「貴様ら魔王軍を止めて欲しいと―――」

 

 リオンはそう云う。

 

 「えっ、キルもこっち来てんの?」

 「ちょー久しぶりなんですけど~~!!」

 「めっちゃ会いたいっ!!」

 

 シエルは嬉しそうにテンションを上げている。

 

 何だ、この者は―――!?

 

 リオンは困惑する。

 

 ここが戦場だというのにこの気の抜けた感じ。

 

 恐ろしい魔王軍のイメージとは異なる魔族。

 

 しかし、警戒を止める訳にはいかない。

 

 だが、もしかしたら話し合いの余地もあるのか・・・。

 

 リオンは一旦、剣を下す。

 

 「貴公は、魔王軍なのに戦闘の意志はないのか?」

 

 「えぇーー!戦闘なんて服が汚れるからしたくないに決まってるじゃん♪」

 

 シエルはハッキリとそう答えた。

 

 なんと―――!?

 

 リオンは驚いた。

 

 もしかしたら、戦わなくても済むのでは?

 

 リオンは一瞬期待をしたが、そんな淡い期待はすぐに崩れ去ることになる。

 

 先ほどのエルフの少年が身体を震わせて、リオンの服の裾にくっつく。

 

 「ん?どうしたのだ?」

 

 リオンは少年に尋ねる。

 

 明らかに恐怖で震えて、委縮している。

 

 「あ、あの人―――、僕のお母さん連れて行ったの・・・。」

 

 その表情から少年が嘘を言っているようには思えない。

 

 「この少年が言っていることは本当なのか!?」

 「本当であれば、この少年の母親をどこへやった―――!?」

 

 リオンは声を荒げて、シエルに聞いた。

 

 「えっ?あぁ、さっきの女の―――」

 「あの女、私が魔王軍だからっていきなり攻撃して来て―――」

 「あぁ~~思い出すだけでも腹が立つッ!!」

 「服が汚れて、頭来たからぶっ殺してやったよォ―――!!」

 

 シエルの態度が豹変する。

 

 さきほどまでの温厚な態度から一変、怒り狂った表情を浮かべ、口が汚くなる。

 

 「貴様っーーー!!」

 

 リオンは一瞬でも話し合いで解決できるのではと思った自分がバカだったと後悔する。

 

 やはり、この魔族は危険だと判断。

 

 剣を構え、戦闘態勢をとる。

 

 リオン VS シエル。

 

 Fight It Out!!

 

 

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