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【完結】エレベーターに乗ったら異世界に来てしまった件 ~大切な幼馴染を追いかけて異世界に来た天才少年は聖女しか使えないハズの治癒魔法の才能を開花させる~  作者: ゆに
第7章 エレベーターに乗ったら異世界に来て困惑していたらいつメンが揃った件

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第528話 【ガラドミア遠征組】不死の軍団⑦


~ガラドミア近辺~

 

 「クフフフ・・・。」

 「No.8を倒したのは素晴らしいですが―――」

 「No.8という名前から分かるように、あの不死者(アンデッド)も駒の一つにしか過ぎません。」

 妖しく笑うベルデ。まるで地獄の底の悪魔のような濁った声で。

 

 「貴様も元は人間だったのなら何故、こんな非道なことが出来る!?」

 「人の命は貴様の玩具ではないんだぞッ!!」

 

 アニーが怒りを込めて、ベルデに向けてそう云った。

 

 六谷は黙っている。

 

 アニーには悪いが、この手の者がそんな善人気取りの言葉に耳を傾けることはない。

 

 「私はかつて、死者を蘇らせる研究をしていマシタ。」

 「妻と娘を亡くしてしまって、彼女らを蘇らせようと必死デシタ。」

 「人は誰しもがいずれ死ぬ―――、それは避けようのない事実。」

 「だからこそ、"死"を克服する為、私は死霊術を極めることにしマシタ。」

 「だって、素晴らしいデショウ―――」

 「愛した人が―――、大切な人が、死なない世界ッ―――!!」

 「貴方達だって、一度は夢想したはずデス!!」

 「誰しもが"永遠"を生きることの出来る世界ヲ!!」

 「それを私は叶えようとしているのデスっ!!」

 「私のしていることは"正しい"ことダト!!」

 「何故、分からないのデスカ!?」

 

 流暢に演説をするベルデ―――

 

 

 そんな野心もいつかの時は有ったのだろう。

 

 本当にそんな世界を理想とした日が有ったのだろう。

 

 「でも、今は違うんすよね―――?」

 ここで初めて、六谷が冷めた顔で云った。

 

 その言葉を待っていたかのようにベルデは笑みを浮かべる。

 

 「えぇ、その通りデス―――、今のは全部『建前』デスヨ。」

 

 少し、気持ちが分かるからだ。

 

 社長も俺達も人間を超える人間を作り出す為、活動してきた。

 

 現実世界が弱者にのみ優しく、強者に優しくないのなら、弱者を全て強者にしてしまえばいい―――

 

 社長はそう云った。

 

 俺達もそれに賛同した。

 

 人間を超えた力を手に入れて、嬉しかった。

 

 そして、その幸福感を全人類に味わって欲しかった。

 

 俺は最初そう思って、社長に手を貸していたが、それがいつしか勝つことに対する執着、勝利への渇望へと変わっていった。

 

 耳触りのいいお題目など己の快楽の前ではゴミクズ同然だ。

 

 このリッチもきっとそうなのだろう。

 

 「未知なる魔術の研究に勤しむこと―――」

 「身に着けた魔法がどういった効果になるのか、どの程度の威力があるのか―――」

 「私の知らない知識、魔法が他にないのか―――」

 「溢れ出るんデスヨ!!」

 「私の"魔"に対する好奇心ガ!!」

 「抑えることができないんデスヨッ―――!!」

 

 「さぁ、話しは終わりデス!!」

 

 「これから貴方達に絶望を与えてあげまショウ!!」

 

 ベルデは両手に魔力を込める。

 

 「漆黒の暗渠より悪鬼を招かん―――出でよ!サモンダークネス!!」

 

 ベルデの周りに7体のモンスターが出現する。

 

 「う・・・嘘だろ?」

 

 アニーは顔が青ざめる。

 

 そこに現れたのは先ほどのNo.8と同じ漆黒の鎧を身に纏った騎士の不死者(アンデッド)が7体。

 

 当然、その不死者(アンデッド)の騎士達はLv.90。

 

 「ろ・・・六谷殿?」

 

 アニーは青ざめた顔のまま六谷の方を向く。

 

 そこにいた六谷は笑っていた。

 

 それは戦闘者(ファイター)としての顔。

 

 戦う気満々のようだ。

 

 一体でも苦戦した相手なのに今度はそれが7体もいる―――

 

 さらにその騎士達よりもさらに強いリッチが後ろに控えていると来た。

 

 だが、こんな状況でも六谷は絶望など決してしない。

 

 「アニーは後ろに下がってて―――」

 

 六谷の眼は真剣そのもの。

 

 アニーでは戦力外だと判断した。

 

 アニーも足手まといであることは自覚していた為、コクリと頷く。

 

 こっちは1人、対する相手は騎士の不死者(アンデッド)が7体にリッチが1人。

 

 それにさっきの爆発のケガもある。

 

 どこまで抵抗できるか―――

 

 もしかしたら、一瞬でやられるかも?そんな覚悟もしておく。

 

 「丁寧に殺してあげるのデス!!」

 

 ベルデがNo.1~No.7に号令を掛ける。

 

 彼らはベルデの手駒だ。指示通りに動く。

 

 六谷は《6-シックス・ツール》も《五指》も《通常業務ノーマルノルマ》、いやそれだけじゃない。 

 持てる魔法やスキル全てを駆使して立ち向かった。

 

 アニーはその時の雄姿を瞬きすることなく見ているだけしか出来なかった。

 

 「六谷殿ォーー・・・。」

 

 アニーは自然とその姿を見て、涙を流していた。

 

 六谷も本心から勝てると思っていた訳ではないだろう。

 

 それでも彼は退くことなく立ち向かっていた。

 

 その姿に気持ちが高ぶってしまう。

 

 「クフフフ・・・」

 「圧倒的な戦力差があると分かっているのに、一歩も引かない!!」

 「"勇敢"・・・いや、この場合は"無謀"と云うんデショウカ。」

 

 「ハァ・・・ハァ、ハァ・・・。」

 

 激しい息切れ状態の六谷。

 

 既にボロボロとなっている。

 

 ナンバーズに斬られ、殴られ、突かれる。

 

 それでも尚、立ち上がり、その度ナンバーズにまた斬られ、殴られ、突かれる。

 

 初めは抵抗を見せていたが、流石にレベル90の不死の騎士7体が相手では六谷の方が先にジリ貧になる。

 

 「それにしても驚きましたヨ―――」

 「貴方も不死者(アンデッド)のようにしぶといんデスネ―――」

 

 ベルデは相変わらず、ナンバーズの後ろでただ嬉しそうに傷つく六谷を見ているだけ。

 

 「・・・・ハァハァ・・・良い・・こと、教えて・・・やる。」

 「俺はなぁ・・・社内で"社畜ゾンビ"って・・・呼ばれて・・・るんだぜ。」

 

 力なく、かすれ気味の声で六谷はベルデに言い返していた。

 

 もはや立つこともやっとなのに―――、それでも立ち上がる。

 

 "執念"―――

 

 「六谷殿―――、もういい!!もう立つなっ!!」

 「本当に死んでしまうぞッ!!」

 

 アニーは叫んだ。

 

 もしかしたら、自分がベルデの標的にされてしまうかもしれない。

 

 でも、それでもいい。

 

 それで六谷が助かるなら自分の身などどうだっていい―――

 

 この偉大な男を死なせてしまったら、エルフ族として、一人の男として恥だと思ってしまった。

 

 だから、自分が囮にでも、生贄にでも何でもなるから、この六谷という英雄を死なせないでくれと泣きながら神に祈る。

 

 「クフフフ・・・」

 「この男を殺したら、次は貴方の番デスヨ―――」

 

 「お・・・い―――」

 「おたくらの相手は・・・この俺だ・・・ろ!!」

 

 その姿を見て、ベルデは溜息を付く。

 

 何故、人間というのはこうもしぶとく、諦めが悪いのだろうか―――

 

 「そんなに死にたいのなら、いいデショウ―――」

 「とどめを刺してあげなさい―――、No.7!!」

 

 No.7が長剣を六谷へ向け、その心臓目掛けて突き立てようとする。

 

 その瞬間―――、一筋の流星がNo.7の前に!!

 

 「ッ―――!?」

 

 「誰デスカ―――?」

 「貴方は―――」

 

 砂煙を撒き散らし登場したのは、天童グループ第一事業本部長『徳川 将司』。

 

 「六谷―――、よく頑張りましたね。」

 

 徳川は優しく六谷のことを労う。

 

 「と・・く・・・がわ・・・さん?」

 

 徳川の姿を見て安心したのか、そのまま倒れる六谷。

 

 徳川はその六谷が地面に倒れないようにそっと優しく支える。

 

 「貴様らか―――、私の部下を可愛がってくれたのはッ―――!!」

 

 その瞳の奥には迸る怒りの感情が渦巻く。

 

 静かな口調はそのままにその全身から自分の部下が痛めつけられたことに対する怒りが溢れ出ていた。

 

 

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