第520話 【ガラドミア遠征組】後処理と報告、そしてガラドミアへ
~自動機械製造工場 最奥部~
「3人とも無事か―――!?」
施設内の兵器達を破壊しながら進んだであろう、キル達と合流。
リオンが別チームの新達3人の安否を気遣う。
「こっちは大丈夫だ―――」
「それより、そっちの後ろの方々は―――?」
フラムが答える。
気になるのはやつれた魔族達。
ボロボロの衣服を着ているのに目の中の闘志は死んでいない。
最初は小さかったが、ここに来るまでに徐々に炎が燃え上がったという感じだ。
「この方たちは、ここで強制労働をさせられてきた人達だ。」
「一緒に戦うことを決めてくれたんだ。」
リオンは半ばキルが脅して奮い立たせたことまでは云わずにここまでの経緯を話した。
フラム達もそれで納得し、そこからは後始末作業だ。
施設内を片っ端から調べ、怪しいところがないか確認する。
ギルドマスターに報告しなければならない。
残党もいなくなり、黒幕であったタイアンも既に姿を消していた。
「結局、タイアンは何者だったんだ―――?」
新達はそう呟いた。
すると、徳川から少し心当たりがあると話が入る。
「私も少し耳にした程度の話ですが―――」
「国光と関りがあると聞いて、タイアンという名前に心当たりがありました。」
「中国の裏社会を牛耳るマフィア―――、そのボスの名前が確か『大闇』と呼ばれていました。」
「国光が支配する第三事業本部は主に軍事業務を担います。」
「近代兵器などの開発も行ったりする為、中国のマフィアと関りがあってもおかしくはないです。」
徳川の説明を皆は黙って聞いていた。
何にせよ、俺達は無事に終わることができた。
それだけで、今回のことは満足しており、助けた魔族をリーヨンまで送り届けた。
そして、今回のことをギルドマスターのロンメルに全て報告する。
異世界の兵器であることは説明がややこしくなるからぼかしはしたが。
後日、リーヨンからも調査隊を派遣するらしい。
タイアンはあそこを明け渡すと言っていた。
ヤツを完全に信用するわけではないが、あぁ云った以上、そこまで危険はないだろうと判断した。
~エアルベア 首都 劇場観覧席~
エアルベアでは大きな劇場で定期的に様々な劇が行われ、それが一種の娯楽になっている。
民衆達は次はどんなお話が見れるのかと胸をワクワクさせ、劇場に足を運ぶ。
そんな観覧席の一席にタイアンは座っていた。
後からシンもやってきて、二人で劇を観覧している。
劇を見ながら、タイアンは工場での一件のことをシンに話す。
新という面白い存在と対峙したこと。
工場を明け渡したこと。
「それは良かったな―――」
シンはただ一つそう云った。
自分の居場所の一つを奪われて、それは良かったとシンは云う。
タイアンにとっての不幸であることを喜ぶ。
不幸は自分を成長させてくれる―――
これでタイアンは一つ成長することが出来たとシンは思っていた。
「良かったか―――」
「そうだな―――、実験施設が一つ潰されたが、新という興味深い存在に会えたことは良かった。」
「前にも話したと思うが、私は元の世界にいた時からずっと思っていた。」
「どうすれば世界は平和になるのかと―――」
タイアンが語り出した。
「その答えが"兵器"だったんだろ―――」
「そうだ―――」
「強い兵器は相手への抑止力となる。」
「だから私はより強く、頑丈で、安価で、美しさすら感じる究極の兵器を探求し続けてきた。」
「そして、ある時、気付いた。」
「私自身が究極の兵器になればいいんだと―――」
「そうすれば、全世界の人間が私に畏怖し、争いがなくなると。」
タイアンの話を聞いていたシン。
ニヤリと笑みを浮かべる。
タイアン―――、貴様も充分狂ってるなァァ~~~
だが、それでいい―――
そうでなくちゃ、オレと"対等"にはいられない。
「だからこそ、私は自分の身体にその兵器を取り込み、私自身が究極の兵器になろうとした。」
「本当の世界平和の為に―――」
「新はオレの子孫だ―――」
「そして、オレの細胞や様々な次元のあらゆる種族の細胞を取り込んだ生物兵器だ。」
「タイアン―――、お前の望みは叶いそうか?」
同じ生物兵器同士―――、やること等一つしかない。
それは『強さ比べ』。
いずれ、タイアンは予感していた。
再び、新と対決する日が来るであろうことを。
「えぇ、楽しみです。」
「彼と相対する時、今度は全力を出そうと思います。」
~リーヨン ギルド~
「みんな、お疲れ様―――」
「君たちの活躍、本当に助かった。」
ギルドマスターのロンメルはそう云って、頭を下げた。
「あぁ、それは良いのだが―――」
「結局、あの魔族の人達はどうするんだ?」
リオンは聞いた。
ロンメルは今後の彼らがどうするか話す。
どうやら、元々は彼らの村はあの工場の付近にあったらしい。
P3達が機械兵器を使って攻めてくるまではあそこで平穏に暮らしていた。
だから、元の故郷に戻って、あそこを復興したいと話していた。
「そして、彼ら言っていたよ―――」
「キルさんにありがとうって―――」
「えっ―――!?」
キルは動揺した。
まさか、彼らから恨まれるようなことは有っても感謝されるとは思ってなかったからだ。
「私達を奮い立たせてくれて、ありがとうと伝えてくださいって。」
「気づいてたみたいだね―――」
「良かったじゃん!!」
モロトルフはキルにそう云った。
キルは赤面して、ポカポカとモロトルフを叩いた。
まるで二人でじゃれ合っているようだ。
"彼らにもキルさんの優しさが伝わったんですね―――"
アルマがキルの中でそう云った。
「アルマまでそんなこと云うのっ!?」
キルは恥ずかしさで死にそうになる。
「僕からも今回のことは本当に助かった―――」
「だから、最初に約束した通り、君たちをガラドミアへ連れていくことを約束しよう。」
「おぉーーー!!」
新は声をあげた。
「出発は明日でいいかい?」
「えぇ、問題ございません―――」
「対応感謝します。」
徳川が答える。
こうして、一行はガラドミアへと向かうこととなった。