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第503話 【守るべきもの】久しぶりの友人


~エルフの国 ガラドミア~

 

 六谷と花が六魔将 アドラメレクを退いてから数日が経過した。

 

 六谷と花の活躍により、魔王軍の進軍は落ち着いていた。

 

 何よりクロという別次元の王者が魔族を警戒させるには充分過ぎた。

 

 「ふああぁぁーーー!!」

 

 ガラドミアの王女セルフィは玉座にふんぞり返り、退屈そうに大きな欠伸をする。

 

 「爺や!!退屈じゃ!!」

 「何か面白いことはないのかや―――」

 

 またセルフィのわがままが始まったと横に控えていた侍女達は思った。

 

 「面白いことですか・・・?」

 「ふーーーむ・・・」

 

 年老いたエルフはセルフィの要望に頭を悩ませるが、答えが思い浮かばない。

 

 一向に答えを出さないその様子に苛立ったのか、セルフィはさらに口を開く。

 

 「先日話していた魔王軍の動きはどうなったのじゃ!!」

 

 「えぇ、それでしたら、六谷殿達の活躍により、魔王軍は撃退―――、以降は目立った動きは見せていませんね。」

 

 セルフィは六谷という名前に今一ピンと来ていなかったが、少し時間を置いて、そう云えば異世界から召喚させた者がそんな名前だったと思い出す。

 

 「ほう・・・それは興味深い―――」

 「その者達を連れて参れ!!」

 

 と、そんなセルフィの言葉により、六谷と花はセルフィの前に連れてこられた。

 

 

 セルフィの前に連れてこられた六谷と花―――

 

 六谷はいつもの鋭い目つきで辺りを見渡す。

 

 顔には出さないが、予定にない命令をさせられて内心イラっとしている。

 

 そして、何故呼び出されたのか考える。

 

 素直に受け取るなら、魔王軍を退けてくれてありがとうと感謝が本命。

 

 だが、逆に俺達が六魔将に匹敵する戦力だということがエルフにバレた訳だから、エルフ達に警戒されて呼ばれた可能性もあるか・・・。

 

 「セルフィ様直々に俺達に何の用でしょうか―――?」

 六谷は落ち着いた声で尋ねる。

 

 相手に警戒されていたら、あまり高圧的に出るのは悪手。

 

 「・・・・・・。」

 「まず、先日の魔王軍との戦闘ご苦労だった―――」

 

 「それはどうも―――」

 六谷は一礼した。

 

 感謝の方だったか―――

 

 

 「聞けば、六魔将 アドラメレクを退いたそうじゃな―――」

 「六魔将と言えば、この世界最強クラスの猛者だとか。」

 「そう聞いて、私自身お前達の強さに興味を持ったぞ―――」

 

 そう云って、セルフィは不敵な笑みを浮かべ、立ち上がる。

 

 ・・・威圧感―――

 

 ゾッと背筋に鳥肌が立つ。

 

 セルフィの後方から膨大な魔力が溢れている。

 

 やる気か―――?

 

 六谷は警戒する。

 

 その瞬間、隣にいた花の右手が光り、紋章が浮かび上がる。

 

 「えっ―――!?」

 

 花自身も驚いていた。

 

 「クロっ―――!?」

 

 別次元の古龍ブラックドラゴンのクロが召喚された。

 

 幸いにここは王宮内で一番広い大広間。

 

 クロのサイズでも室内が壊れることなく収まった。

 

 「どうしたの―――?」

 

 クロはその太い首で辺りを見回す。

 

 「花に危険が迫っている気がしたのでな―――」

 「こっちに来てみた・・・」

 

 セルフィのことを言っているのか?

 

 確かに一瞬、物凄い殺気を出したが、それを感じ取ってこの一瞬でここに来るとは、凄いんだか、暇何だか―――

 

 六谷はそう思った。

 

 「これが話に聞いていた『ブラックドラゴン』。」

 

 セルフィはクロを見上げて、そう云った。

 

 ステータス鑑定しなくても分かる。

 

 圧倒的な戦闘力で六魔将すら退かせたのはこのドラゴンの力だと。

 

 「お主がこのドラゴンを呼んだのか?」

 

 セルフィが花の方を向いて聞いた。

 

 花はクロを通じて、この世界の言葉が分かるようになっていた。

 

 「はい―――」

 「クロは私の"友達"です!!」

 

 花はそう答える。

 

 セルフィとクロはお互いに目を合わせる。

 

 そして、セルフィは生きていた中で最も強く雄々しいドラゴンに出会えたと喜ぶ。

 

 「花よ―――」

 「私の前でその"召喚"の力使ってみてはくれないか?」

 

 「えっ・・・!?」

 「召喚の力ですか―――?」

 

 「花ちゃん・・・。」

 

 六谷が花に目を向ける。

 

 嫌だったら断ってもいいんだよと、目で伝える。

 

 花は右手を翳した―――

 

 召喚を試みようと力を込めるが、あの時のように閃かない。

 

 ビビッと来ない。

 

 クロを召喚した時は身体の中で絶対に出来ると確信めいた何かがあったが、今はそれがない。

 

 花は六谷の方を向いて首を振る。

 

 花が出来ないことを察する六谷。

 

 そのことをセルフィに伝えようと思った、その時徳川から『念話』が繋がる。

 

 徳川さん―――!?

 

 六谷は右耳を触れて、徳川の念話に応える。

 

 「六谷か―――」

 

 「はい。」

 

 「時間がないから手短に用件を言うぞ―――」

 「進様の身に危険が迫っている。」

 「先の報告で有った、鍜治原の姪子さんに進様をそちらに召喚してもらえないか?」

 

 進様に危険・・・?

 

 先日六谷と会話した時、進様がこの先の未来のキーマンとなると感じた。

 

 その進様がこの段階で死んでしまうことは絶望的な未来に直結すると考えていた。

 

 「分かりました―――」

 

 六谷は了承した旨を徳川に伝える。

 

 「花ちゃん・・・・」

 「進様が危険な状況らしい。」

 「進様をここに"召喚"してくれないか?」

 

 「天童に危険・・・?」

 

 真剣な顔で六谷は花に頼んだ。

 

 いきなりのことで驚いたが、六谷の顔を見て、ただ事ではないのだと感じた。

 

 「やってみます―――」

 

 花は深呼吸をする。

 

 頭の中に進を思い浮かべる。

 

 右手に神経を集中する。

 

 その時、室内なのに風が吹いた感じがした。

 

 六谷もセルフィもクロも他の人も―――

 

 確かに風を感じたんだ。

 

 花の身体にビビッときた―――

 

 コレはクロを召喚した時と同じ感覚だ。

 

 これなら出来る。

 

 

 召喚できる―――

 

 そして、自分でも知らない詠唱呪文が自然と口から出てきたことに気付く。

 

 「若き英雄の魂を持つ正義の戦士よ!!」

 「我の前にその姿を現せッ―――!!」

 「超召喚術スーパーサモンッ!!」

 

 

 何重にも描かれる召喚の魔法陣。

 

 あの時と一緒だ―――

 

 クロを最初に呼び出した時と。

 

 その召喚の魔法陣の中心に現れる。

 

 よく知った顔の少年 『天童 進』。

 

 やっと再会できた。

 

 懐かしい友―――

 

 「会いたかったぞ―――」

 「天童ッ!!」

 

 花はその顔を見た瞬間、自然と涙が出た。

 

 「アア"ァァーーー」

 「あう・・・。」

 

 しかし、その天童の姿は花が見たこともないようなものだった。

 

 車椅子に座り、ろくに口も聞けないような虚ろな眼をした友人。

 

 一体何があったのだろうが、検討すらつかないその変わり果てた姿。

 

 これでは廃人ではないか。

 

 「て、天童・・・?」

 「何があったんだよ―――??」

 

 

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