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第502話 【守るべきもの】進の行方


~亜空間内 魔族の街 霊園~

 

 気が付いたらシンとベルデは既にこの場所から姿を消していた。

 

 そして、リカントの遺体もなくなっていた。

 

 スッ―――

 

 未央に憑いていたアリスの精神が抜ける。

 

 「あの人達、どこかに行ったんだね・・・」

 「結局、リカントさん連れていかれちゃった・・・。」

 

 「死んでもなお、その身体を利用しようとするとは許せない奴らだ―――」

 

 フラムが剣を鞘に納め、云った。

 

 フラムも一呼吸入れる。

 

 周りを見渡すと、シンとの戦闘で皆、疲弊していた。

 

 シンからしてみたら"戦闘"とは言えなかっただろうが―――

 

 「クッソーーーッ!!」

 「またしても奴らに好き勝手されたッ!!」

 

 ベロニカは地面を拳で殴る。

 

 その勢いで手の皮は剥げ、そこから血が出る。

 

 いつも冷静なベロニカが、その冷静さを失うくらい怒っている。

 

 "キルさん―――"

 

 「アルマ・・・?」

 

 キルの中にいるアルマが話しかける。

 

 "今のシンって人―――、私達と同じ血を持っているんですよね?"

 

 「・・・・残念ながらそうみたいなの―――」

 「アイツが始まり―――」

 「アイツが異世界へ行ったことで、私達が生まれたの―――」

 

 "やっぱり、憎いですか―――?"

 

 「そんなの全然なの。」

 「始まりなんて言っても、何百年も前の話なの。」

 「そんなヤツに恨みなんて私はないの。」

 

 キルは憑き物が落ちたような顔で話す。

 

 アルマと一体化したことで、最近は精神に変化が現れた。

 

 自分でも不思議なくらい落ち着いている。

 

 世界が輝いて見える。

 

 周りの景色、生き物や植物、朝日なんかが素晴らしく思えてしまう。

 

 こんな感情、今までは感じたこともなかった。

 

 「進ちゃんはどこに消えたんだろう―――」

 

 未央は思いつめた顔で呟いた―――

 

 あの状態の進が突然、どこか別の場所に転移してしまった。

 

 心配しないハズがない。

 

 魔力から痕跡を辿れるか試してみることにした。

 

 「特に魔力は感じない―――」

 

 不思議な感じだ。

 

 通常、召喚する為には魔力を消費する。

 

 しかし、今ここに魔力の痕跡はない。

 

 魔力を帯びない召喚、もしくは痕跡を残さない召喚を使う者がいるってことになる。

 

 

 「徳川さん―――」

 「言わなくていいんすか?」

 「進様がどこに行ったか―――」

 

 円能寺は徳川に耳打ちをするように小声で話す。

 

 「そうですね―――」

 「今後の為にも皆さんには話しておきましょうか。」

 

 徳川は自分に注目を集める為、手を一回叩く。

 

 「ッ―――!?」

 

 周囲にいた者達は徳川に目を向ける。

 

 「進様の居場所なら分かっておりますので、ご安心ください―――」

 

 徳川は皆に進が無事であると説明を始める。

 

 「どこ―――!?」

 「進ちゃんはどこにいるのっ!?」

 徳川に迫るように進の居場所を問い質す未央。

 

 「落ち着いてください―――」

 「未央様―――」

 「進様は現在、エルフの国『ガラドミア』にいます。」

 

 「「「ガラドミア!?」」」

 

 一同は驚いた顔をする。

 

 「そうです。」

 「そして、そこは次の我々の目的地でもあります。」

 

 「どうして、そんなところに・・・?」

 「それに何でそれを貴方が知ってるんですか?」

 未央は徳川に聞いた。

 

 それは当然の疑問。

 

 「そうですね―――」

 「初めから話しますと、弊社の六谷が先日手違いでこっちの世界に来てしまったと本人から報告がありました。」

 「そして、さらにこれも手違いで、貴方のお友達である『鈴谷 花』さんもこちらの世界に連れてこられたと―――」

 

 「えっ・・・!?」

 「花ちゃんもこっちの世界に来ちゃったの!?」

 

 鈴谷 花とは同じオカルト研究部のメンバーである。

 

 怪奇現象とかよりは、人間を超えた力―――、いわゆる超能力、異能力に物凄い興味を持った子だ。

 

 そんな花がこっちの世界に来たことを知った未央。

 

 嬉しいような、懐かしいような気分になる。

 

 「そして、花さんに関して、私も認知していませんでしたが、どうやら鍜治原の姪であることが判明しまして・・・」

 

 「鍜治原って・・・?」

 

 未央は首を傾げる。

 

 未央は知らない。

 

 天道グループ第一事業本部人事部にいたあの男のことを。

 

 「鍜治原だぁ―――!?」

 

 その名前に反応したのは、新だった―――

 

 首をポキポキ音を鳴らしながら、話しに加わってきた。

 

 先ほどまで気絶していたハズなのに恐ろしい程の回復力だ。

 

 「新様はよくご存じかと思います。」

 「あの"鍜治原"です。」

 

 奇妙な召喚術を使い、魔物だけでなくあらゆる物を自分の駒のように操る《万物使いオールマスター》の使い手。

 

 勝つ為ならどんな手段でも用いる男。

 

 相手を金で買収したり、味方になりそうな者に取り入ったり、相手の大切な人を人質に取ることも厭わない。

 

 そんな男だ。

 

 「花ちゃんがその鍜治原さんの姪だからなんだって云うの?」

 

 「花さんも『伝説の召喚士一族』の末裔なんですよ―――」

 

 花も、ということは鍜治原もその伝説の召喚士一族の末裔ということになる。

 

 「そこで、シンが進に手を出しそうになった少し前―――」

 「進様の身に危険が迫る可能性を考慮し、六谷の方にコンタクトを取り、花さんに進様を召喚するようにお願いしたという次第です―――」

 

 花が進を召喚した―――

 

 シンに手を出されないようにする為とはいえ、中々思い切ったことをする。

 

 「シンは今、進様の所在を見失っていることでしょう―――」

 

 「えっ―――ってことは花ちゃんに連絡して、私達も召喚して貰えばいいんじゃない―――!!」

 

 未央がそう云った。

 

 それと同時に未央はスマホを取り出す。

 

 流石は女子高生だ。

 

 異世界だというのにスマホを携帯している。

 

 しかし、当然『圏外』。

 

 花に繋がるはずが無い。

 

 「異世界でスマホが使える訳ないっすよ―――」

 円能寺がクスクスと笑っている。

 

 「むっ!?」

 

 その円能寺の言い方にムカッとした未央は口を膨らませる。

 

 「だって、電波を受信する基地局がないんすよ―――」

 「スマホ使えるわけねーじゃねェーっすか!!」

 

 「ムムム・・・!!」

 「何で二回言った!?」

 「大切なことか!!大切なことなのか!!」

 

 少しお怒りモードの未央。

 

 円能寺の言い方に腹を立てる。

 

 "未央よ―――、念話で会話したらどうだ?"

 

 精神体のアリスがそう云う。

 

 「私、念話使えないもん!!」

 

 未央に念話のスキルはない。

 

 「未央様、ご安心を―――」

 「六谷を通じて、花様とはお話しの場を設けるようにいたします。」

 

 徳川はそう云って、未央を宥める。

 

 

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