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第492話 【最後の転移者】別次元の竜王


神秘の門アルカナゲート

 

 「六谷さ~~ん!!」

 「助けに来ましたよぉーー!!!」

 

 花はクロの背中から大声で叫ぶが、上空数十メートル先からでは六谷の姿は見えない。

 

 「あの古龍は一体どこから来た・・・?」

 

 アドラメレクは空を仰ぎ、呟く。

 

 「《魔眼》発動・・・!!」

 

 アドラメレク、上空の古龍を敵と見なし、早々に魔眼によるステータススキャンを開始する。

 

-----------------------------------

名前:クロ

種族:ブラックドラゴン

性別:男

Lv.250

クラス:次元超越竜

◆状態◆

浮遊

◆パラメータ◆

体力:2500

筋力:2800

魔力:3100

物理抵抗力:2800

魔力抵抗力:2300

精神力:1500

器用さ:2000

素早さ:2000

◆装備◆

なし

◆アクティブスキル◆

◆パッシブスキル◆

◆ユニークスキル◆

◆称号◆

災厄の黒

別次元の竜王

-----------------------------------

 

 「魔眼でも測り切れない程の強者―――」

 「レベル上限100を超える別次元から召喚された竜王か・・・」

 

 アドラメレクのレベルは90。

 

 自分のステータスの倍以上ある古龍の出現にもそこまで動じる様子はない。

 

 「ねぇ、クロ!!」

 「六谷さんはきっとあそこだよ!!」

 

 魔族やエルフがたくさん集まっている所。

 

 先ほどまでアドラメレクと六谷が殴り合いをしていた所を指差す。

 

 「分かった―――」

 「では、あの付近へ降りよう。」

 

 クロはそう云って、着陸態勢へと移ろうとする。

 

 その時、アドラメレクは飛び上がり、ちょうどクロと同じ目線までやって来る。

 

 律儀なものだ―――

 

 とクロは思った。

 

 クロからしてみたら、獲物が自ら目の前に現れたようなものだから。

 

 アドラメレクは電撃を帯びた鋭い拳をクロの顔面に向けて放つ。

 

 「《雷拳》!!」

 

 バチバチと音を立てて、周囲に衝撃波が巻き起こる。

 

 花なんて、その衝撃に思わず目を閉じて、飛ばされないよう必死にクロの背中にしがみついていた。

 

 「汝・・・誰に拳を向けている―――?」

 「我を誰と心得ている?」

 

 ギョロっとクロの大きな瞳がアドラメレクを捉える。

 

 クロの体表は黒く恐ろしいまでに硬い。

 

 アドラメレクのとてつもない一撃すらも微動だにしない。

 

 クロは自分の長い尻尾をアドラメレク目掛けて当てる。

 

 極太の尻尾が鞭のようにアドラメレクの身体を空から大地へ弾く。

 

 あの六魔将 アドラメレクが反応すらできない。

 

 突如、現れた古龍の存在に魔族もエルフも声が出ない。

 

 アレは全く、別次元の存在なのだと―――

 

 そう理解するのにそんなに時間は掛からなかった。

 

 クロの一撃により、上空数十メートルから一変、地下数十メートルまで埋められたアドラメレク。

 

 彼が地面から這い上がって来るまでに数秒掛かる。

 

 頭から魔族特有の黒い血を流し、何事も無かったかのように現れるアドラメレク。

 

 「・・・・・強いな。」

 

 ただ一言そう云うだけ。

 

 「アドラメレク様―――!!」

 「やっぱり、そんな簡単にやられるような御方じゃないんだよ!!」

 

 アドラメレクの無事を見るや、周りにいた魔族達は歓喜の声を上げる。

 

 彼らにとって、アドラメレクは云わば魔族のスター的な存在。

 

 力の象徴。

 

 アドラメレクが現れる数秒の間にクロと花は地へ降りていた。

 

 「六谷さんは―――!?」

 「どこっ!?」

 

 花はあたりをキョロキョロと見回すが六谷の姿は視えない。

 

 少し前にアドラメレクに吹っ飛ばされて、何十メートルも六谷は飛ばされていた。

 

 「貴様、別の世界から来たのだろう―――?」

 「何故、エルフ族に味方する?」

 

 アドラメレクはクロにそう聞いた。

 

 「我はこの花に召喚された―――」

 「彼女がそれを望んだからだ―――」

 

 クロは答える。

 

 「別次元の竜王が小娘に従うというのか―――」

 「下らんっ!!」

 「その小娘のどこにそんな価値があるというのだッ!!」

 

 アドラメレクは力のみを信仰する。

 

 愛だの勇気だの、友情だのと、アドラメレクはそんなもの決して信じない。

 

 目の前の古龍は明らかにこの世界の生物の上限を超えている。

 

 それなのに、あんな何もないような娘に従うというのは、何かしらのメリットがあるのかとも思ったが、そんな事ではないらしい。

 

 「価値があるかないかは我が判断すること―――」

 「貴様のような魔族一匹に指図される筋合いはないぞ!!」

 「それに最近兄もまたどこかへ行ってしまい、我もちょうど退屈していた所だからな―――」

 

 クロは不敵な笑みを浮かべる。

 

 口の中の大きな牙がチラリと見える。

 

 

 どうやらこちら側に付くことも無さそうだな。

 

 まともにやっても勝ち目はないだろう―――

 

 アドラメレクは考える。

 

 クロと真っ向からやれば確実に死ぬ。

 

 だから、クロを召喚したというあの娘の方を殺れば、あのクロとやらも元の世界へ戻るだろうと。

 

 そう判断してからは早かった。

 

 バチバチと音を立てて、アドラメレクは全身の魔力を指先に集中させる。

 

 「《雷撃》!!」

 

 何千アンペアにも及ぶ稲妻を上空から召喚させ、クロへ放つ。

 

 ビリビリとクロの全身に電流が流れる。

 

 しかし、そんな必殺の一撃と言えども相手は遥か格上のレベル250の古龍。

 

 効いたとしても一瞬動きを止める程度だろう。

 

 だが、アドラメレクにとってそれで充分。

 

 一秒あれば、あの小娘を殺れる。

 

 「ひぃ―――!!?」

 

 物凄い形相のアドラメレクが花の前に現れた。

 

 殺気を立て、電撃を纏った手刀を花目掛けて放つ。

 

 

 

 あっ、やばい―――

 

 私、殺される。

 

 

 花はそう悟った。

 

 思わず、両手を頭の辺りに構え身を守るような態勢になり、目を瞑った。

 

 

 「おい―――ッ!!」

 「何勝手に花ちゃんに手を出そうとしてんだよ―――」

 「お前の相手はこの俺だろ―――?」

 花のピンチに現れたのは六谷だった。

 

 

 「貴様・・・」

 「まだ動けたのか?」

 

 アドラメレクの手刀を受け止める六谷。

 

 頭から血を流してはいるが、その眼はまだ死んでいない。

 

 寧ろ、さっきより断然闘志が漲っている。

 

 「我のことも忘れてもらっては困るな―――」

 クロは冷たい暗黒闘気を放つ。

 

 アドラメレクの稲妻から早々に解放されていた。

 

 全力の電撃を喰らってもピンピンしている。

 

 「チッ!!」

 

 アドラメレクは舌打ちをする。

 

 とても悔しそうだ。

 

 素早い身のこなしでサッと後ろへ退いた。

 

 「撤退だ―――」

 

 「えっ!?」

 

 周りにいた魔族達は動揺したが、いち早く転移のスキルで姿を消したアドラメレクを追う形で周囲の魔族達も姿を消していった。

 

 

 「俺達の勝ちだ―――!!」

 頭から血を流し、フラフラの六谷。

 

 「六谷さん!!」

 「だ、大丈夫ですか!?」

 

 そんな六谷の身体を支える花。

 

 「ん?」

 「あぁ、コレはちょっとその辺で転んだだけだよ。」

 

 明らかなウソだ。

 

 こんな体になるまでさっきの魔族と戦ってたんだ。

 

 花は六谷のウソにすぐ気づく。

 

 「な、何でそんな身体で私のことを守ったんですか?」

 

 

 「・・・・・・・。」

 「約束しただろ?」

 「俺は君を無事に元の世界に帰すって―――」

 

 そう云った六谷は満足したかのようにその場に倒れて意識を失った。

 

 

 この日、エルフ族は魔王軍を撃退することに成功する。

 

 そして、六谷と花の活躍は瞬く間に国中に知れ渡ることになり、すぐにガラドミア国民は六谷たちを受け入れた。

 

 

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