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第488話 【最後の転移者】仕事の仕事人 六谷 五人 VS 暴虐のアドラメレク①


神秘の門アルカナゲート

 

 コイツは予想以上だぜェ―――

 

 ステータスの数値的にはそれほど大きな開きはないと思っていたが、向かい合って見て始めて分かる。

 

 存在感がハンパねェ・・・!!

 

 普通に生きていたいだけなんだけど、どうしてこうなるかねー。

 

 「これだけの戦力差を感じながら、立ち上がってきたことは称賛に値するが―――」

 「努力が必ずしも報われる世界など存在しないッ―――!!」

 

 アドラメレク―――、立ち上がったばかりの六谷に上から拳を振り下ろす。

 

 その拳に電撃を纏わせて―――

 

 「《雷拳》!!」

 

 「それについては俺も同意だよ―――」

 

 六谷―――、乱れる呼吸を心臓を掴むように左胸を抑え、抑止する。

 

 そして、力を入れることなく宙をフワッと浮く、まるで重さなど感じさせない羽毛のように。

 

 アドラメレクの《雷拳》を躱し、カウンターの回し蹴り。狙いはアドラメレクの首元。

 

 「無駄なことを・・・。」

 

 アドラメレクには効いていない。

 

 アドラメレクの鍛え抜かれた身体には半端な攻撃は通用しない。

 

 まるで、何百年も成長を続けてきた大木のような硬さ。

 

 人体の急所を的確に狙ってもこの反応かよ―――

 

 六谷はそう思った。

 

 あぁ、そうかい。

 

 だったら、俺ももっと好きにやらせてもらうぜ。

 

 手を大きく広げ、《五指》の力を全開にする。

 

 アドラメレクに触れまくる。

 

 どんな生物、無生物だろうと、原子レベルで存在していることには変わりはない。

 

 ディアブロにやったように、相手の性質をコントロールすれば、相手を勝利できる。

 

 六谷は軽い身のこなしでアドラメレクに対して、それを行った。

 

 ダンっ!ダンっ!ダンっ!ダンっ!ダンっ!

 

 繰り返される六谷の接触。

 

 何かしら能力を使用しているであろうことはアドラメレクだって把握している。

 

 しかし、微動だにしない。

 

 六谷の素早い動きに何もできない―――?

 

 いや、そうではない。

 

 六谷の動きなど全てその眼で正確に追えていた。

 

 その上で反撃はしてこない。

 

 時間にしてものの10秒―――

 

 その間、アドラメレクは何も動かない。

 

 流石に六谷にも違和感が生まれる。

 

 《五指》が通じていないことに。

 

 原子レベルで相手の性質を変えることが出来る能力をアドラメレクは全く意に介していない。

 

 「そうか―――」

 「そういうことか・・・!!」

 「アンタも操れたんすね―――」

 

 六谷は気付いた。

 

 そもそも原子とはプラス電気の性質を持つ原子核とマイナスの電気の性質を持つ電子で出来ている。

 

 そんな電気の特性を持つ原子をアドラメレクがコントロールできない訳はない。

 

 「・・・・気付いた所で、もう遅い!!」

 「《雷撃》!!」

 

 アドラメレクが手を振り下ろす。

 

 それが合図。

 

 遥か上空から一筋の閃光が光の矢となり、六谷の頭上目掛けて落ちてくる。

 

 「グッ―――!?」

 「ウ、ウオオォォーーっ!!!」

 

 エルフ族の結界で力が弱まっているとは言え、アドラメレクは六魔将。

 

 大陸一つを滅ぼせるとまで謳われた実力者。

 

 彼の放った《雷撃》は地面を深く抉り、削り、陥没させる。

 

 本来電気を逃がすはずの地面すらも彼の圧倒的な高電流・高電圧の前では導電体と何ら変わらない。

 

 通常の雷が落ちた際に流れる時間はおよそ10のマイナス6乗秒と言われている。

 

 しかし、アドラメレクの放った《雷撃》の持続時間は約30秒。

 

 人は100ミリアンペアの電流が人体に流れただけでも感電死すると言われている。

 

 そんな中、アドラメレクの放った《雷撃》は数万アンペア。

 

 約3~5万アンペアの間の電流をアドラメレクは戦闘で使用する。

 

 暗黒大陸という弱肉強食の世界で生まれ育ったアドラメレク。

 

 彼は生まれた時から闘争の最中にいた。

 

 母親は電気を操る一族の戦士で、父親は己の肉体の身で上り詰めた怪物だと聞いている。

 

 生まれた瞬間、そこは戦場だったという。

 

 母は自分を身籠り、安静にしている時、他部族から襲撃され、母も闘うことに。

 

 そして、血で血を洗う闘いの中、自分は生まれた。

 

 父も母も最期まで戦い、そして死んだ。

 

 生まれたての自分を敵将である魔族が拾い、育てた。

 

 しかし、それは決して憐れみなどの感情ではない。

 

 自分の部族の戦士として働かせる為だ。

 

 そして、アドラメレクに自我が芽生えるくらいに成長した頃。

 

 彼は神を見た。

 

 戦場で暴れまわるサンドルだ。

 

 純粋な暴力を楽しむ彼にアドラメレクは憧れを抱いた。

 

 そして、自分もサンドルのようになりたいと願い、各地の戦場で名を上げるようになる。

 

 母親の血を色濃く受け継いだことで、強力な電撃を操ることが幼い頃からできた。

 

 そして、父親のような屈強な肉体で思いのままに暴虐を尽くしてきた。

 

 暴力―――

 

 それこそが、アドラメレクのただ一つの正義。

 

 暴力で成り上がり、暴力で認められ、暴力で支配する。

 

 「フン!やはり、人間などこの程度だな・・・。」

 「サンドルの旦那が来るまでにここら辺にいるエルフは掃除しておくか―――」

 

 アドラメレクはその場から離れようとする。

 

 しかし、すぐに足を止める。

 

 生命エネルギーを感じたからだ。

 

 それもさっき自分が《雷撃》を落としたところからだ。

 

 まさか―――、まださっきの人間が生きているというのか?

 

 「いやー、流石の俺も一瞬、天国が見えちまったよ―――」

 

 十メートル近く、陥没した穴から六谷は飛び出てきた。

 

 「貴様―――、本当に人間か?」

 

 「"新人類"―――」

 「社長たちはそう呼んでいるみたいっすけど、俺は俺を人間だと思っているよ。」

 

 最強の細胞―――S細胞が環境に馴染む。

 

 ダーウィンの進化論を元に造られたこの細胞。

 

 数多の生物の生態をヒントにどんな環境にも適応する最強の細胞。

 

 それを俺の身体にも埋め込んでいる。

 

 「さぁ、続きと行こうぜ―――」

 首をボキボキと鳴らして、再び戦闘態勢に入る六谷。

 

 「いいだろう―――」

 「何度でも潰してやる!!」

 

 

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