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第478話 【最後の転移者】エルフの国『ガラドミア』編開始


 いやー、コイツは少し想定外のことが起こった。

 

 まさか俺がこっちの世界に召喚されてしまうとは―――

 

 六谷は周囲を確認する。

 

 まず自分が置かれている状況、背景、呼び出した者の目的―――、それらを把握することが最優先事項であると認識。

 

 たくさん人がいるようだけど―――

 

 俺達は歓迎されている?

 

 それに彼ら―――、尖った長耳、細身の長身、色白、極めつけは美形揃いときた・・・間違いなくエルフ族だな。

 

 完全にファンタジーの世界に迷い込んでしまったという訳か・・・

 

 そして、彼らの中心の玉座に座している―――、あの女性・・・彼女がこの国の長とみた。

 

 俺達を召喚した目的は何だ―――?

 

 「六谷さん―――、ここは一体・・・?」

 

 花は怯えた様子で六谷の袖をギュッと握っている。

 

 怯えるのも無理はない。

 

 突然、別の世界に召喚されたのだ―――、当然と言えば当然の話だ。

 

 しかし、六谷は落ち着いていた―――

 

 こういった突然の出来事に対する対応力も仕事人(プロ)にとっては必須事項。

 

 鑑定系統のスキル持ちがいるのかどうか―――、それは気になるな。

 

 俺の本当のステータスを相手に見せるべきか、どうか・・・

 

 あまりに低い数値だと、舐められるし、逆に高過ぎてもいいように利用されかねない。

 

 さて、どうしたものか・・・

 

 結局、六谷は自分の数値を隠蔽することにした。

 

 本当の数値は見せない―――、少し下げた値に書き換えて見せる。

 

 まぁ、この人達の中に鑑定系統のスキル持ちがいなければ、特にそんなことする必要はないんだけどね。

 

 うん、何やらあの人達、コソコソと話しているみたいだ。

 

 

 話している内容までは聞き取れないか―――?

 

 《超感覚》!!

 

 六谷は感覚を強化させるスキルを発動させ、耳に神経を集中する。

 

 

 『この者達が魔王軍に対抗できる者なのか―――?』

 『とてもそうは見えんが・・・』

 

 『女王陛下もあの御顔だ・・・』

 『一体何をお考えになっておられるのやら・・・』

 

 あの二人のエルフはそんなことを会話していた。

 

 魔王軍?

 

 ということは、俺達は魔王軍と戦わされる為に召喚されたってことか―――

 

 何となく見えてきた。

 

 ここはエルフの国『ガラドミア』で、現在、魔王軍がここを侵略中なのだろう。

 

 異世界出張組からの定例報告で、王権狙いの魔王軍がガラドミアに攻める可能性が高いと言っていた。

 

 そこで、戦力を強化する為に俺達が召喚された。

 

 そんな所か・・・

 

 これ、結局、いいように利用されるみたいだなー。

 

 どうすっかなー。

 

 まぁ、とりあえずこの人達の為に戦って、隙を見て異世界出張組と連携するが、一番丸いかな。

 

 まずまずの方針が六谷の中で固まった。

 

 「異世界より来たれり、英傑よ―――」

 「突然の召喚、無礼とは存じ上げますが―――、どうか我らをお助け願いたい!!」

 

 代表のエルフが六谷達の前で跪き、そう申し上げる。

 

 「えっ・・・と、六谷さん―――、この人達は外国の人なんでしょうか?」

 「何を言っているのか分からない―――」

 

 花は今まで掴んでいた六谷の袖をさらに強く握り、身体を近づける。

 

 そうか・・・この子は《異世界語翻訳》のスキルを持っていないから、この人たちの言葉が分からないのか。

 

 「この人達は、どうやら俺らを歓迎してるみたいだよ―――」

 「俺らに助けを求めてるんだ―――」

 

 「六谷さんはこの人達が言ってること分かるの―――?」

 

 「・・・・・うん、分かるよ。」

 

 少し言葉に詰まった。

 

 この子の扱いをどうするか。

 

 自分一人なら何とでもなると思っているけど、この子を守るってなったらちょっと面倒だな。

 

 でもなー、この子、鍜治原さんの姪子さんなんだよなー。

 

 しかも結構、可愛がられてるっぽいし・・・

 

 六谷は昔、鍜治原が一回だけ、自分の姪について語っているときのことを思い出していた。

 

 その時、珍しく鍜治原が嬉しそうな顔をしていたのが印象的だった。

 

 鍜治原さん、天童グループを除名されたみたいだけど、あの人のことだからいつか這い上がって返り咲きそうなんだよなぁ・・・

 

 俺の中で殺しても死ななそうな人ランキングの上位にいつもいるし。

 

 その時に俺があの人の姪子さんをこの世界で見捨てたなんて知ったら、どうなるか・・・

 

 想像しただけでも身震い。

 

 よし、この子は出来る限り助けてあげよう―――

 

 六谷はそう決心した。

 

 「花ちゃん―――、安心していいよ。」

 「俺が付いてるから・・・」

 

 花と目線の高さを合わせ、しっかり目を見てそう言い聞かせる。

 

 相手と目線を合わせることで相手に好印象を与える手法だ。

 

 それをさり気なく行う六谷。

 

 花ちゃんには俺に懐いてもらった方が今後、動きやすいからね。

 

 「いいよ―――、助けてあげる。」

 「その代わり、俺達の衣食住は保証してくれないか?」

 

 六谷はエルフ族にそう云った。

 

 代表のエルフは女王の顔を伺う。

 

 エルフの女王はコクリと頷き、立ち上がる。

 

 「・・・・・いいだろう!!」

 「貴公らを国賓として迎え入れよう―――ッ!!」

 

 「国賓ね・・・」

 客人に戦わせるのかって思うけど、まぁいいか。

 

 こうして、六谷達はそれぞれの部屋に案内された。

 

 これからどうするのか、二人で話し合わないといけない。

 

 だが、その前に―――

 

  "あーあ、こっちの声聞こえるか?俺だ!!六谷だ!!"

  

  "おっ、いつにも増してクリアっすね、どうしたんすか?"

  

  六谷は念話のスキルを発動させ、異世界出張組の円能寺に通信を行った。

  

  "ちょっと、想定外の事態に見舞われた―――"

  "俺と鍜治原さんの姪子さんがこっちの世界に召喚されてしまった"

  

  "えっ・・・とその話ちょっとkwsk聞かせてもらえますか?"

  

  六谷はこれまで事の経緯を細かく円能寺に相談する。

  

  "ひえぇー!!それは災難っすね―――、もし姪子さんに何かあったら鍜治原のヤツうるさそうですもんね。"

  

  "そうだ―――、だから俺は彼女を無事に元の世界に送り届けようと思う。ついでにこっちの世界に来たんだ、お前たちとも連携を取りたいと考えている。"

  

  "りょーかいっす!!こっちの方もまさか社長がやられて、しかも視えざる者バニッシュマンのヤツに連れていかれるとは思わなかったし、進様も記憶喪失でまともに立つことすらできなくて大変なんすよね!!六谷さんがこっち来てくれて助かったっす!!"

  

  "それで社長と進様の方は解決しそうなのか?"

  

  "社長の方は今どこかに監禁されていると思うので、俺の方で調査中です。進様の方は徳川さんがもしかしたら、どうにかなるかもって言ってましたけど、どっちにしろ社長の救出がマストって感じです。"

  

  "そうか―――、分かった!あともう一つ懸念がある。"

  "俺が元の世界の業務を行えなくなった穴は大きい、八代一人では荷が重いだろう―――第二事業部か第三事業部から人を出せないか調整をお願いしたい!"

  

  "りょーかいっす!!ちょっと話付けてみるっす!!"

  

  "頼んだぞ―――"

  

 

 六谷は念話による通信を切った。

 

 さてと、それじゃあ、花ちゃんと今後どうするか話をしてくるか・・・

 

 六谷は今後の方針を決める為、立ち上がる。

 

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