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第459話 BREAKING DOWN


~王都 聖ミラルド 中心街~

 

 王都動乱。

 

 アドラメレク直属の配下 レヴィアタンの手によって解放されたS級犯罪者と大型の魔物達の暴動―――、多くの兵士が多くの生命を奪った日。

 

 しかし、民衆を守る騎士達もただ黙っていたわけではない。

 

 神殿騎士団第六師団団長 アルマン-ツィ-カルビーノの元に国内に残った多くの兵士達が集った。

 

 民を護る為―――、立ち上がった。

 

 「アンジェ~~!まさかまた君と一緒に戦える日が来るなんてねェ。」

 「ボクは思ってもいなかったよーー」

 

 

 「喋っていないで手を動かせ―――」

 「今がどんな状況か貴様だって分かっているだろう。」

 

 神殿騎士第五師団団長 グレガーと神殿騎士第三師団団長 アンジェ、二人はこの危機的状況を切り抜ける為、共闘していた。

 

 「ちぇ!相変わらずつれないな~~」

 「そんなんだから、男の一人もできないんだよ~~」

 

 アンジェはグレガーのその一言にイラっとした。

 

 グレガーの背中を思いっきりぶっ叩いた。

 

 「イタッ!!何すんのさ~~」

 

 「闘いの途中でおしゃべりをしている貴様が悪い―――」

 

 それだけ云うと、アンジェは再び向かい来る敵に剣を向けた。

 

 「へいへい・・・やりますよ~~だ!!」

 

 グレガーも仕方ないような様子で剣を構えた。

 

 

 それにしても珍しい。

 

 あのグレガーが理由はどうあれ、民を守るために悪しき者達に剣を向けている。

 

 何か心境の変化でもあったのだろうか―――

 

 アンジェは不思議に感じ、グレガーの顔を眺める。

 

 「ん?どうかした?」

 「ボクの顔に何かついてる?」

 

 「いや―――、何でもない。」

 「それよりも行くぞッ!!」

 

 周りは民衆だけじゃない、囚人や魔物達の死体が平気で転がっている。

 

 死体だらけだ。

 

 周り一面、死体死体死体、時々負傷者。

 

 食い散らかされた血肉がぐちゃぐちゃと靴底にへばり付く。

 

 泣き叫ぶ幼子もあっという間に大型の魔物が喰ってしまう。

 

 泣こうが喚こうが、状況は変わらない。理不尽に生命が消え去る。

 

 地獄絵図だ。

 

 だが、そんな中でも希望は潰えない。

 

 闘う者がいる。抗う者がいる。

 

 ホラ、ここにも―――

 

 「いやーー、やっぱりさ。」

 「全然足りないよ―――」

 「そんなんじゃ、虚無は満たされない。」

 

 

 「ヌル・・・!!」

 

 ベロニカは膝を付いていた。

 

 いつもは清潔に整っている制服も泥や血で汚れている。

 

 身体も傷だらけだ。

 

 ベロニカの両隣りにはナデシコとルミナスが意識を失って倒れている。

 

 「ハァ・・ハァ・・・この・・・化け物がッ!!」

 アルマンも傷だらけになりながら、未だ闘志を失っていない。

 

 勇猛果敢にヌルに向けて剣を構えている。

 

 「やめろ!アルマン!」

 「貴様の敵う相手じゃないッ!!」

 

 既にナデシコとルミナスがやられている。

 

 私もここまで手負いにさせられている。

 

 

 一瞬だった。一瞬で、私達三人をダウンさせた。

 

 その後アルマンが必死に喰らい付いているが正直時間の問題だろう。

 

 まるで相手にならない。

 

 「あのさ~~、そいつらボクの作品にしようと思ってたんだけど~~」

 「何勝手に弄ってくれてんのさ~~!!」

 

 ルベライトは手に持った筆をヌルに向けた。その筆には自身の血が絵具のように付いている。

 

 ヌルへペイントを開始している。

 

 ルベライトの能力『痛みこそ芸術ペインペイント

 

 自分の痛みを相手にも共有させる能力。

 

 「ん?もしかして君が―――」

 「虚無を満たしてくれるの?」

 

 ヌルはその細い腕でルベライトにそっと触れた。

 

 「ッ―――!?」

 

 ルベライトの身体が綺麗に縦に真っ二つになる。

 

 それは鋭い刃物で斬られたように、綺麗に。

 

 「無魔法:虚無の爪ヴォイドクロー!!」

 

 「何て魔法を使いやがる・・・!!」

 

 アルマンは震えた。

 

 凶悪な囚人のルベライトをいとも簡単に殺してしまうヌルの戦闘能力に。

 

 「コイツは別格だ―――」

 「普通の魔族じゃない・・・!!」

 

 退却の文字が頭に浮かんだ。

 

 しかし、ここで逃げてどうする?

 

 自分は民を守る騎士だ。

 

 ここで逃げればその魔の手は民衆へ向けられる。

 

 ダメだ!ダメだ!

 

 ここは逃げられない―――

 

 アルマンは考えを改める。

 

 じゃあ、どうする?

 

 この絶望的にヤバい状況を―――

 

 

 「まだやる?」

 

 ヌルは無邪気な声でそう尋ねた。

 

 その白髪の少年は何を見ているのだろうか。

 

 いつも満たされない、誰と闘ってもワクワクしない。

 

 勝っても負けても自分には何も沸かない。

 

 何かが分かるかもしれないと闘い続けた。

 

 そうしたら、いつの日か誰も自分に勝てなくなっていた。

 

 「ヌル・・・貴様は俺の配下になれッ!!」

 

 そう声を掛けたのは六魔将 アドラメレクだった。

 

 「アンタはヌルを満たしてくれる?」

 

 ヌルはアドラメレクに闘いを挑んだ―――

 

 結果は清々しい程の惨敗だった。

 

 今までの闘いが本当に闘いだったのかと思わされるほどの。

 

 圧倒的な敗北。

 

 全身の骨はボキボキに折られ、顔面が原型を留めることのないように殴られ、魔族の証である角を折られた。

 

 角を折られた時のショックで髪は白くなった。

 

 それでもヌルは嬉しかった。

 

 その時、生まれて初めて何だか満たされた気がした。

 

 だからヌルはアドラメレクの配下になった。

 

 力で全てを支配するアドラメレクに何かを感じた。

 

 

 「やるに決まってんだろ―――!!!」

 アルマンは怒り気味にそう答えた。

 

 闘志はまだ満ちている。

 

 しかし、策など何一つない。

 

 だけど、それはやらない理由にはならない―――

 

 だから、剣を振るう。

 

 例え勝てずとも・・・

 

 「アルマンッ!!」

 

 ベロニカが声を上げた時、アルマンは地に倒れていた。

 

 「ふ・・・やっぱりこんなものだよね。」

 

 「次は君の番だ―――ベロニカ!!」

 ベロニカは覚悟を決めた。ヌルと闘う覚悟だ。たとえ刺し違えてもここでヤツを殺すと。

 

 そんな時だった―――、空から一人の男が降ってきた。

 

 「違うだろ―――ヌル!!」

 「次は私の番だ!!」

 

 その男はヌルの頭を掴むと地面に思いっきり叩きつけた。

 

 「ッ!?」

 「リカント様―――!!」

 

 六魔将 リカント―――、地上最強の男がこの聖王国動乱に参戦した。

 

 

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