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第452話 【最終決戦】英雄 天童 進 & 天聖 スターリン-キル VS 勇者 天童 真 & 危機管理の仕事人 徳川 将司⑮


アーク内部 第伍階層 現想~

 

 白い壁、白い天井、白い床へ『徳川の現実』の映像が映し出される。

 

 所々、映像が乱れる。

 

 ぶつぶつとノイズが入って来る。

 

 あの日から、社長は私の前から消えた。

 

 「社長―――!!」

 「どこにおられるのですか!?」

 「この徳川、地獄の果てまで付き従うと誓っておりましたのに・・・」

 「貴方は・・・貴方は今、どこにおられるのでしょうか!?」

 

 暗所をフラフラと当てもなく歩く徳川の姿。

 

 そこに生気は感じられない。

 

 わずか数十秒程度の映像。

 

 短いが、そこで映像は途切れた―――

 

 

 「・・・・!?」

 

 その映像に言葉を失う徳川。

 

 ピクピクと血管が浮き出て、怒りを抑えている様子だ。

 

 「いかがだったかしら?」

 「これが徳川ちゃんの現実、そう遠くない未来。」

 

 「真ちゃんがいない世界―――」

 

 そう云うと、アドミニストレータは徳川の近くへ寄り、妖しく微笑んだ。

 

 「貴様・・・私を愚弄する気か!?」

 「社長が存在しない世界などありえないッッ!!」

 「あの御方こそ、世界を正しい方向へと導く存在ッ!!」

 「貴様の悪趣味な映像の通りになるはずが無かろうッ!!」

 

 徳川は抑えていた怒りが爆発した。

 

 「フフフ・・・どうかしらね。」

 「今のは一番・・起こる可能性が高い未来。」

 「貴方の理想が変化をした未来だったから、現実の方もそれに沿って未来にしてあげたわ。」

 

 それだけ云うと、アドミニストレータはフッと消え、観戦室の方へと戻った。

 

 怒った徳川が自分へ刃を向けることを嫌がった。

 

 

 「こんな未来ありえない・・・ありえない・・・ありえない。」

 「あってはならない―――」

 「あってはならないのだ!!」

 

 ブツブツと口を動かす徳川。

 

 まるで自己暗示をするように。

 

 

 「ずいぶんと取り乱しているようなの―――」

 「大の大人がみっともないなの―――!!」

 

 先ほどの傷も完全に塞がったキル。

 

 再び、徳川の前へ立つ。

 

 今の徳川は精神的に不安定な状態となり、流れは完全にキルの方へ向いている。

 

 キルさん!!チャンスです!!

 

 アルマも心の中でそう云った。

 

 「そうなの、よっぽどショックだったみたいなの。」

 

 まだキルの攻撃で生まれた傷口から血が流れ出ている徳川。

 

 痛みなど、既に精神が肉体を軽く凌駕している為、感じていない。

 

 キルの猛攻が始まった。

 

 そこからは一方的だった。

 

 いかに耐久力が優れている徳川とはいえ、キルの攻撃をまともに喰らい続けていては敗けるのは時間の問題。

 

 斬撃、殴打、刺突、魔法・・・あらゆる方法を駆使してダメージを与え続ける。

 

 「ッ―――!!」

 

 「徳川さんッ!!」

 

 観戦室でも第一事業本部のメンバーが驚いた様子を見せていた。

 

 あの徳川 将司がこれほどまでに一方的にやられているなど、考えられなかった。

 

 「あんなに一方的にやられている徳川さん、見てられないっすよ―――」

 

 

 「もし、今ここに鍜治原がいたら、あの徳川事業部長を見て何て言うでしょうか・・・」

 

 

 「・・・・・」

 ここまで一方的にやられている徳川の試合の様子を見ていた真。

 

 今まで黙っていたが、ついに痺れを切らす。

 

 「徳川よッ!!」

 

 「私を失望させる気かッ!!」

 

 「この私は決して消えたりなどしないッ!!」

 「貴様はこの天童 真が信用できないというのかッ!!」

 

 眉間に皺を寄せる真。徳川へ一喝。

 

 その真の言葉でハッと我に返る徳川。

 

 「私は何を・・・・?」

 

 「今更、正気に戻ってももう遅いの!!」

 「これでトドメなのッ!!」

 

 キルが徳川の心臓を目掛けて大鎌を振り下ろす。

 

 徳川の全身は傷だらけ、損傷は激しい。

 

 徳川の戦意が蘇った。

 

 徳川は眼を大きく見開き叫ぶ。

 

 「ユニークスキル:危機感理クライシスマネジメント

 

 と―――

 

 気が付いた瞬間、ソハヤの剣がキルの胸を貫いていた。

 

 キルさんーーーッ!!

 

 アルマがキルの中で叫ぶ。

 

 アルマは自分が徳川に殺されたことを思い返していた。

 

 そんな・・・!!

 

 今のは決して躱せなかったハズ!!

 

 キルは思考する。今の現象を。

 

 決して躱せるはずのないタイミングの一撃。

 

 それを反撃するという形で返してきた徳川。

 

 「私にとって、社長は絶対です―――」

 「心様がいかに神の子であろうと、神は社長です。」

 「そうだ―――」

 「私は社長がいれば、それでいい!!」

 「進様も心様も社長が存在してさえいれば、関係ないのですよッ!!」

 

 不思議と徳川の気分は高揚していた。

 

 身体はボロボロになりながらも脳内物質が大量に生成され、ある種のハイな状態となっている。

 

 

 「クッ・・・」

 「ククク・・・」

 「あははははっ―――!!」

 

 胸を貫かれ、血を垂れ流すキルは腕で傷口を抑えながら大笑いしていた。

 

 「キルが笑っているのか・・・!?」

 

 観戦室にいたモレクもキルの様子に驚愕していた。

 

 かつて人体に大量に投入された薬の影響で無表情にしかなれなかったキルが大笑いしていたからだ。

 

 表情が戻っている。

 

 生き物としての表情が戻った。

 

 恐らく、聖女アルマと融合したことがキルの身体に影響したのだろう。

 

 そのことにモレクは涙を流した。

 

 

 「・・・・・何が可笑しいのですか?」

 

 「いや、なに・・・」

 「ホンッと貴方、自分ってものがないなって思って笑っちゃったの。」

 

 

 

 「何ですと・・・」

 

 

 「貴方の理想から現実まで結局、オジさんに関することばかりなの!!」

 「貴方はオジさんがいなくなったら生きていけないの?」

 「貴方も結局、オジさんに利用されているだけなのッ!!」

 「使えなくなったら、私と同じように斬り捨てられる運命なのッ!!」

 「それなのに社長、社長と子どもみたいに口にするの。」

 「滑稽で仕方ないの―――」

 


 「私の理想は、社長の理想が実現することです!!」

 「それ以外は必要ない!!」

 「必要ないのですッ!!」

 

 

 「他人の理想を自分の理想にしているなんてとっても愚かなのッ!!」

 「自分の理想を他の誰かに委ねるなんて、自分の足で立って生きていないのと同じなのッ!!」

 「私がそれを教えてあげるのッ!!」

 

 

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