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第441話 ORIGIN


~王都 聖ミラルド 近郊~

 

 もうすぐ夜が明ける。夜が明けた後、聖王国がどう変わっているか、それを見届ける為、サンドルは近くで見届けようとした。

 

 そんな彼の元に一人の男がやってきた。

 

 知っている顔。知っている声。懐かしさすら感じる。

 

 しかし、それはサンドルにとって、災難。

 

 新魔王 サンドルは一番出会いたくない存在と遭遇していた。

 

 「久しぶりに会ったら、魔王とは―――」

 「随分と偉くなったみたいだな―――サンドルよ!!」

 

 少年のような背丈、しわがれ声、黒髪の少年。首から下は所々、包帯で覆い、その懐には刀を携えている。

 

 「テメェーは・・・生きてやがったのか―――」

 「シン!?」

 

 嫌でもサンドルの古い記憶が蘇る。

 

 かつて、魔王アリスの側近として働いていた時、このシンというアリスの息子に散々やられたことがあった。

 

 純粋無垢な顔をしながら、恐ろしい実験の数々。サンドルもその実験の被検体として何度も都合の良いように利用された。

 

 「俺様はテメェーにされたこと忘れちゃいねぇぜ!!」

 「今なら、アリスもいねぇ!」

 「あん時の恨み晴らすことだってできんだぞーー!?」

 

 「フッ・・・まぁそう怒るな。」

 「オレの幼少期、それは実験の連続だった―――」

 「オレには知識が必要だったのさ。」

 「だからお前たちの協力には感謝している。」

 

 

 チッ・・・!

 

 ヘラヘラしてやがるが、俺様にはコイツのヤバさが分かる―――

 

 500年前からコイツはアリスよりイカレてて、周りを全て道具としてしか見てねェ。

 

 しかも、才能に関しては悔しいが俺様やリカントより上。

 

 絶対に敵には回したくなかった。

 

 この俺様がだ!!

 

 「そうか―――」

 「今、分かったぜ。」

 「俺様が何故、あのガキに拘るのか―――」

 「テメェら顔が似てんだよ―――、瓜二つってくらいになーーー!!」

 

 「どういうことだァ!?」

 「アアァン!!」

 

 声を荒げるサンドル。

 

 「シンーーッ★!!」

 

 サンドルとシンがやり取りをしている中、猛スピードでやってきた更なる強者。

 

 六魔将 エレナ。

 

 シンの実姉。

 

 「やっぱり・・・シン★!!」

 「貴方なのね★!!」

 

 聖王国へ救援に向かう途中、エレナは懐かしい魔力を感じていた。

 

 微かだが、確かにその魔力が実の弟のシンのものであると―――

 

 だから、ここまで猛スピードで空を駆けて抜けてきた。

 

 「やっと会えた―――★」

 

 「姉さん―――」

 「久しぶりだね。」

 

 サキュバスクイーンの姉。

 

 真祖の父親、そして聖女の母親をその血に宿す。

 

 高級な血筋の元、生を受けたシン。

 

 

 「どうやって―――あの事故から生きていたの★!?」

 泣きそうな顔のエレナ。

 

 シンが生きていたことが心の底から嬉しいのだ。

 

 500年以上昔のことなのに今もその変わらぬ姿でいる弟。

 

 

 「あの日―――」

 「オレのこのヌバモンドでの最後の実験の日。」

 「オレは実験の事故により異世界に飛ばされた―――」

 「そこは侍が刀で成り上がる戦国時代だった。」

 「事故のショックでオレは記憶を失った。」

 「異世界に転移したオレの目の前には刀を持った侍がいた。」

 「そこは戦場だった―――」

 「オレは足元に落ちていた血まみれの刀を拾い、無我夢中で侍達を斬った。」

 「戦場で生き残るためにな。」

 「そうやって、オレは戦国の世を生き抜いた。」

 「オレは生き残る為、剣の腕を磨き、天童流剣術の原型となる剣技を編み出し、次々と敵を切り裂き、名を上げていった。」

 「気が付けば、オレはその世界で最強の名を手にしていたよ。」

 「並び立つ者がいない程、高い天の際の存在―――」

 「故に人はオレのことを『天際』と呼んだ。」

 「そして、オレは記憶が戻らないまま、戦国の世で頂点となり、天童家を創った。」

 「歴史上は、織田信長が、豊臣秀吉が、徳川家康が天下を統一したと言っているが、そうじゃない。」

 「オレが―――このオレが創った天童家が天下を統一したんだ!!」

 「まぁ、その後は色々あったさ―――」

 

 

 

 「それじゃあ―――、進ちゃんは貴方の・・・★」

 

 

 

 「そうだ―――」

 「進や真はオレの子孫だ。」

 

 

 ハッキリとそう云い放つシン。

 

 シンが天童家の起原。

 

 この男から天童家が生み出され、創り出された。

 

 それを知ったエレナは驚いた。

 

 

 「オレはこれからオレの為すべきことをやる。」

 「その為には兵が必要だ―――」

 「サンドル!魔王軍の力を貸せッ!!」

 

 「アァン!?」

 「何で俺様がテメェの言うことを聞かなきゃいけねェ―んだよ!!」

 

 そう云い返すサンドル。

 

 「オレは魔王アリスの息子―――」

 「本来なら正統な魔王候補のハズ。」

 「貴様の座っている玉座は本来オレが座るべき場所だったんだぞ。」

 「オレが今から魔王軍の前に立ち、オレが正統な魔王アリスの血を引く者と言ったらどうなるだろうな。」

 

 

 「ハッ―――」

 「そんなことを言おうが、信じる奴なんざいねぇーだろ!」

 

 

 「まぁ、全員が全員信じないだろうな―――」

 「だが、サンドル!貴様のやり方に対して不満に思っている連中はどうだろうな。」

 「オレが魔王候補として立てば、オレを担ぎ上げるヤツは必ずいる。」

 「今、そんな連中とやり合って、何も得しないことくらいバカの貴様にだって分かるだろ?」

 

 シンは頭をトントンと叩き、サンドルを挑発するような仕草を取る。

 

 ゴクリと生唾を飲むサンドル。

 

 シンの強さは現れた時から感じている。

 

 確実に自分より上の実力者であるということは分かる。

 

 それにサンドルにとってシンはトラウマでもあった。

 

 一対一で闘えば、確実に殺される。

 

 そんな不安がサンドルに過っていた。

 

 「まぁ、オレは優しいからな―――」

 「魔王の座なんかに興味なんてないのさ。」

 「ただ、兵士が欲しいだけ。」

 「オレの理想を叶えてくれる兵士が欲しいだけだ。」

 「だから手を貸せ、サンドル―――!!」

 

 

 「チッ・・・」

 「しょーがねェーな!!」

 

 渋々シンに協力することを承諾する。

 

 フッ・・・全ては筋書きシナリオ通り。

 

 シンはそう内心ほくそ笑む。

 

 そして、エレナに対しても同じように言葉を向ける。

 

 「姉さん―――」

 「姉さんはオレに協力してくれよね―――?」

 

 シンはエレナに対して笑顔で微笑みかけた。

 

 エレナに対して手を差し出す。

 

 

 長年生き別れた弟が突然、現れ協力してくれと頼み込む。

 

 エレナはシンからの申し出に対して、少しの困惑と震えを感じていた。

 

 

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